──そしてツアータイトルにもなっている『WASABI』。今作が記念すべき1stミニアルバムであり、初の全国流通盤ですね。
サンテナ
自分たちの作った作品が全国のお店に置かれるって初めてなので、嬉しいですね。ついに…みたいな感じです。
──前作の『NIGIRI』は数量限定ですぐに完売したので、リスナーにとっても待望の1枚だと思います。
ファームハウス
前作は限定っていうのにつけこんで、転売するヤツらがいたんですよ。今回はCDが欲しい人の元へ、適正な価格で届くので嬉しいです。
──曲についても触れますが、1曲目の「KUNG FU」から最高だなって。笑えるし、シャレが効いてるし、カッコイイ。
ファームハウス
アハハハ、ありがとうございます。
──歌詞の<中国3000年の歴史にカンフー>とか<パンダ 坊主サッカーボール>って、外国人が「ニンジャ、サムライ」って言ってるのと同じじゃないですか。中国のパブリックイメージがすごい。
ファームハウス
自分たちの中にある、内なるカンフーを歌詞と音に置き換えました。みんな持ってると思うんですよ“自分のカンフー”を。
──持ってたかなぁ……。
ファームハウス
絶対にありますよ!
サンテナ
実は、この曲をレコーディングする前に中国へ修行しに行ったんですね。
──どういうことですか?
サンテナ
中国の広東省に、ちょっと、まあ……すいません。
──すいません?
サンテナ
申し訳ないっす、行ってないです。
──今のやり取りは何なんですか(笑)。
サンテナ
でも、それぐらいのバイブスで自分は頭の中で中国のシミュレーショントレーニングを3日間くらいしました。まあ「KUNG FU」って曲を作るからには、そういうことしないと申し訳ないっていうか。馬鹿にしてるようでリスペクトを込めているから、そういう意味では自分にできる最大限のカンフーを曲に散りばめた感じっす。
ファームハウス
精神的には中国に行ってた、ってことだよね。
サンテナ
そうそう!
──何とでも言えますけどね。
サンテナ
作詞はもちろん、歌う時も頭で万里の長城を思い浮かべながらRECしました。やっぱりイメージが大事っすね。今は何となしに歌ってる人が多いと思うんですよね。重みがないっていうか、愛がない。例えばマンゴージュースの曲を歌うにしても、マンゴージュースを飲んだこともない人が平気で歌っちゃう時代になってる気がするんですよ。
──サンテナさんも中国に行ってないけど、カンフーのことを歌ってるじゃないですか。
サンテナ
フフフ、鋭いっすねぇ!とにかく、テーマに対する愛や背景が欠けてる気がするんですよ。自分はそういうのを無感情な音楽だと思ってて、自分たちはカンフーもそうですし、アヒルボート、ゲートボーラー、軽自動車もそうですけど、全て曲にすることは愛とリスペクトを込めてる。そこに関してはこれからもこだわっていきたいです。決して「イエ〜!カンフぅ〜!」みたいな軽いノリじゃないっすね。
ファームハウス
よくそんな嘘が出てくるな!
サンテナ
嘘じゃねぇから!修行に行ったのは嘘だけど。
エビデンス
やっぱりカンフーに矢印を向けて「カンフー!」って気合いで書きましたね。
サンテナ
そんじょそこらの「カンフーよくねぇ?」って言うやつらと違うよね。
──ファームハウスさんは5年前、インドへ行った時の歌を作ってますよね。
ファームハウス
えっ!よく知ってますね。
──あの曲はインドの孤児や苦しい生活を送る人たちに目を向けた、シリアスな内容でした。そんな真面目な曲を作れる人たちが突き抜けてアホっぽいアプローチをしたことに、僕は1周して好感を持てました。
ファームハウス
そういう風に受け取っていただけて嬉しいっすね。あの時は全然受け入れられなかったんです。だからこそ、こっちに振り切りました。
──個人的には「アヒルボート」も大好きで。1テーマで縦横無尽にリリックを書けるのはSUSHIBOYSのすごいところだなって。
ファームハウス
これは自分たちの隣町にあるアヒルボートがテーマなんです。湖という社会の枠で寂しそうに浮かんでいる様が、今の挑戦できない日本人と重なって。だからアヒルボートで海へ行こうっていう、サクセスストーリーを書きました。川を経て、海まで向かっていく話です。
サンテナ
ファームハウスくんが話したように深い意味が込められているんですよね。まあ曲調はポップになっているので、いろんな聴き方ができると思います。
──ちなみに、今作は「KUNG FU」、「アヒルボート」、「旅に出よう」など現在地からどこかへ向かう曲が多いですよね。
ファームハウス
言われてみればそうですね。別に意識はしてなかったんですけど、それは普段の自分たちの気持ちが出ちゃってる。考えたというよりは自然に作ったらそうなりました。
サンテナ
内にこもるよりも、外へ出て行くのが昔から好きでしたね。
ファームハウス
初めての全国流通盤だったので、優秀な名刺が作りたくて。そのために飛び出して行く曲がないとインパクトがつけられない、と思ったのかもしれないです。
──そもそもSUSHIBOYSって名前も“世界に通じるネーミング”がテーマなんですよね。
ファームハウス
そうです。だからこそ、曲もそういう方向なんでしょうね。
──最後の「ママチャリ remix」は以前、EPでもリリースした曲のアレンジバージョンですね。改めて収録したのはなぜでしょう。
ファームハウス
「KUNG FU」、「アヒルボート」、「ゲートボーラー」って名前だけ見たら、ふざけている曲なのかなって思われがちなんですけど。その偏見を飛び越えて楽しませるのは音楽のスキルだと思うんですよね。だからこそ「ママチャリ remix」でSUSHIBOYSのスキルを見せつけるつもりで入れました。
──なるほど。
ファームハウス
あとは音色もありますかね。トラップものが好きなので。
──ところで、曲のテーマはどうやって見つけてくるんですか?
ファームハウス
日常の中から生まれてくることが多くて。
サンテナ
普段、目にするものを掘り下げるんだよね。
ファームハウス
そうそう。なんでアヒルボートがあそこにあるのか……って考えたらリリックが生まれてくる。
エビデンス
自分たちは理屈っぽいというか、ネチネチしてるんですよ。
サンテナ
(ファームハウスに向かって)特にこいつは昔からネチネチした奴だったんで、俺がすることに対しても理由を求めてくるんですよ。
──理由ですか?
サンテナ
運転中の話なんですけど、いつもは右に曲がる道を左に曲がったら「え?なんで今日はこっちから行ったんだよ?理由を言え」って。こっちとしては、たまには道順変えたい日ぐらいあるよ!って思うんですけど、いちいち詰めてくる(笑)。そういう物の見方はこいつから学びましたね。
──理由を求めるようになったきっかけなんですか?
ファームハウス
“死”なんですよ。人って死へ向かって進んでるわけで。生きてる間にたくさん曲を作っても、死んだら無駄じゃないですか。死ぬのになんで生きているのか、その死生観が考えるようになったきっかけですね。
サンテナ
自分は元々、考えて行動するタイプじゃなくて。ファームハウスと出会ってから変わりましたね。例えば、この店はなんでこの照明、この椅子を選んだのだろうって考えることでリリックに繋がったと思います。
──サンテナさんの<33歳自宅警備員の僕>っていうフレーズは深いですよね。
サンテナ
あの言葉の意味って、湖に閉じこもってるアヒルボートと一緒なんですよ。
──どういうことですか?
サンテナ
今の時代ってフリーター、ニート、引きこもりが多くなってると思うんです。俺は東南アジアへ行くのが好きなんですけど、向こうの人たちは日々生きるのに必死で、ニートとか引きこもりをしたら死んじゃうんですよ。だからこそ<33歳自宅警備員の僕>っていうのは、そのままじゃダメだって思いを込めたんですよね。外へ飛び出さなきゃ何も変わらないぞ、って。
──そのテーマを歌にすると重い曲になりがちじゃないですか。そこを明るく演出できるのはSUSHIBOYSらしさなのかなって。
サンテナ
自分自身、説教くさいことが好きじゃなかったので。そのおかげで明るい雰囲気になるんだと思います。
ファームハウス
それをやっている人は他にいるしね。俺らの役割じゃないかなって。
──改めて『WASABI』はどんな1枚になっているのでしょう。
ファームハウス
自分としては、どんな聴き方をしても良いと思ってます。落ち込んでいる時は元気が出るし、楽しみたい時はより盛り上がる。
エビデンス
俺は初めて会う友達とか、久々に会う友達といる時にコレさえかけておけば問題ねぇよ、っていう。
ファームハウス
会話のきっかけになるよね。幅広く楽しめると思います。子供が聴いても楽しめるし、HIPHOPを聴いたことがない人にも馴染む。誰にでも気に入ってもらえる作品になったと自負してます。
PRESENT
サイン入り色紙+ステッカーを3名様に!
※転載禁止
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