インタビュー/宮本英夫
情熱の風に吹かれ、応援歌を口ずさみながら、ズッコケ男道を走り続けてきた20年に祝福を。2017年に結成20周年を迎えたTHEイナズマ戦隊は、支えてくれたファンへの感謝の思いを直接伝えるべく、47都道府県を巡る大ツアー「JAPAN TOUR 2017-2018」を敢行中。絶好調のライブの勢いそのままに、新たなアイディアをたっぷりと詰め込んだ通算12作目のフルアルバム『PUMP IT UP!』も完成した。そして結成21年目を迎える2018年、4人が目指すのは5月26日に行われる東京・日比谷野外大音楽堂での初ワンマン。夢がかなう終着点として、そして憧れの向こうにある日本武道館への通過点として、どんな思いで4人は野音のステージに立つのか?2017年冬、東京、年はアラフォーだが中身は永遠の青春バンドの本音を聞いてみた。
──初の全県ツアー真っ最中。ここまでどんな調子ですか。
今回はワンマンだけじゃなく対バンもあって、若い人から先輩まで幅広い方々と対バンさせていただいて、得るものが多いツアーになってます。20年やってて1年間に300日以上メンバーと一緒にいると、どうしても刺激が少なくなるけど、今回のツアーはすごく刺激があって、そこから生まれる話もあっていいツアーになってます。
対バンも、アイドルネッサンス、SCOOBIE DO、ひめキュンフルーツ缶やチャラン・ポ・ランタンもいて、本当にいろんなジャンルのミュージシャンとやらせてもらって。
昔一緒によくやってて、しばらく会わなくてまたここで出会うということもあったね。
デビュー当時によく一緒にやっていた同期のジャパハリネットとか。紆余曲折あってまたここで一緒にできるなんて、本当にありがたいなと。
この間、地元バンドの二十歳の子らとライブをやらせてもらって、それも衝撃だった。だってバンドと同い年だから。
そんな子と出会う年になるまでやってると思ってなかったんだけど、やってたね。
ライブハウスでお世話になった人にも久しぶりに会えて、“あの頃はこうだったね”みたいな話ができるのも良かった。何よりお客さんが盛り上がってくれて、全箇所回ったらもう一回また来たくなるなという気持ちがよくわかりました。全県ツアーは大変だけど、鶴とか、すぐに二周目に行ったじゃないですか?やってみたらその気持ちがわかったし、待っててくれた人の前で「また来ます!」って言いたくなるんですよ。
「その時まで僕がこのバンドにいれたらまた来ます!」って言ったほうがええな(笑)。
このツアーで流行り出したのが、久保さんがサポートメンバーという体で。めちゃくちゃハマってます。
「今日もスケジュール空いてたから来てくれました」って。
「いやいや、メンバーだから!」っていう、このやりとりをずーっとね。
それに飽きられるとつらいわ~。楽しんでやってくれるぶんにはこっちも乗るけど、飽きられると、本当にごめんなさいみたいになるから。
でも今回のツアーは、本当にお客さんが喜んでくれていて。たとえば、山形に行くのは初めてだったんですけど、「来てくれて本当にうれしいです」って言われたんですよ。今までは仙台まで来てくれてたんですけど、自分の県に来てくれるのが本当にうれしいと言ってくれて。
大変なこともあるけど、感じることは多いよね。日本にはこんなに素晴らしい場所があったんだとか、こんなに素晴らしい人がおるんやとか。昔はロックバンドはお客さんと触れ合わないほうがかっこいいとか思ってたけど、今はそうじゃなくて、イナ戦は行けば会えるロックバンドやから。気軽にしゃべれるロックバンドだから、それが人と人とのつながりを生んで、「またこの町に来よう」と思わせてくれる、という感じがしますね。
ただ、先輩のフラカンでもSCOOBIE DOでも、ずーっとライブやってるけど、その中で制作もしっかりやってるからね。そう考えると俺らもまだまだやれることがあるなと。
──その、ツアー中に作っていたニューアルバム。今回も素晴らしい内容で。
──イナ戦王道ロックもありつつ、ディスコとかUKロックバラードとか、新しい要素も入ってきて、フレッシュに聴きました。今回のアルバムにはどんなテーマが?
結成20周年を迎えて「みなさん、20年やらせてもらってありがとう」という気持ちを元に、ツアーで見る人たちの顔を思い浮かべて書いていったのが今回のアルバムですね。ただ楽曲は「とにかくやっちゃおう」という感じです。いつも同じだと飽きちゃうから。20年やってきたから、いろんな仕掛けや挑戦をやってみても、言葉がしっかりしていれば成立するだろうなと思ったので。
すごくいいアルバムができたなあと思うんです。新しい試みとしては、プロデューサーの名村(武)さんから「歌謡曲テイストに挑戦してみたら?」という言葉をもらって作ったのが、4曲目「すすきのエレジー」なんですけど。今までのイナズマ戦隊にはなかったところに一歩足を踏み出して、その中に丈弥の書くイナズマ戦隊節がしっかり土台にある、いいアルバムになったと思います。
名村さんのプロデュースも回数を重ねてきて、より最初からみっちり組んでやろうということで、デモを作り込まない状態で聴いてもらって、その中から選曲して、というやり方をしてます。レコーディングが途中まで進んだところでもう一度全体を見て、それこそ歌謡曲テイストのものをやってみようとか、「野音のための歌がほしい」という提案がレコード会社からあったりとか、それでさらに曲を作るという、みんなで話し合いながらちゃんと作っていけたのが良かったなと思いますね。それこそディスコ・チューンとか、普段の僕らからは出てこないものが出てると思うし、そういうものにチャレンジできて良かったなと思いますね。いつもよりも…。
長い!長いわ。眠たくなったわ。LINEもむちゃくちゃ長いんですよ。
…だから、チャレンジできたことが本当に良かったと思います。
僕がプロデューサーと話したことは、ギターを重ねすぎないようにしようということ。どうしても重ねてしまいがちなんですけど、重れば重ねるほど音がゴチャってなったり遠くなったりするんで、もっと4人の顔が出るように、ギターも骨太な感じで行こうと。4人の骨太サウンドでなるべく成立させるように。手ごたえはあります。
今回、久しぶりのメジャーでのアルバムなんですけど、メジャーの洗礼を受けまして。ディレクターが入って来て、歌詞に難癖つけるという。
──あははは。難癖て。
いや、言い方は悪いですけど、今までは難癖やと思ってたんですよ。「おまえは歌詞に口を出してくるけど、この歌詞を責任持って未来まで持って行くのは俺らやぞ」と思ってやってきたんですよ。だけど今回は「せっかく言ってくれるなら一回話聞いてみようか」と思ったら、世界が広がったんですよ。言われてることは確かにそうやなって。何書いたって結局上中丈弥の言葉になるんやから、「だったらこの角度から物事を見たら面白いんじゃない?」というアドバイスやったんやけど、それを難癖やと取ってたんですね、昔は。でも実はそれはアドバイスやったと受け取ることができて、ようやく少し大人になれたから。歌詞の世界もちょっと広がったと思います。
──ちなみに、ここに6年前に僕がやらせもらった丈弥さんのインタビュー原稿があるんですけどね。「レコード会社は二言目には“グレーゾーンを狙え”と言ってくる」ってぼやいてる(笑)。
そうそう(笑)。でも今回はね、そんなとこ狙わんでいいって言ってくれた。「そんなとこ狙わんでいいから、今いる人を大事にしろ」って。レコード会社もやっぱり、そこを狙っても、今の人が離れたら意味ないことがわかったのか、おまえたちにはそれが合ってると思ったのか、どっちかわかんないですけど(笑)。そんなとこ狙わんでいいから、より濃いものを歌いましょうと言われて、納得して前に進むことができたので。歌詞について「もう一回考えてみて」と言われることもけっこうあったんですけど、それはより濃いところへ、イナズマ戦隊エキスたっぷりなところへ向かわせようとしてたんで、「なるほどね」と思いましたね。