インタビュー/東條祥恵
無料配布CDが間に合わなかったときは、即解散———!?。cali≠gariのボーカリスト、石井秀仁のソロユニット、GOATBEDが2017年ラストワンマンライブ<Last mad feast of December 2017>を12月10日、東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて1日2公演を開催。当日、恒例の来場者全員に配布する5曲入りミニアルバム『Less than Ⅴ』(昼の部)と『Less than VI』(夜の部)の制作が間に合わなかったら、即解散するとライブでとんでもない発表をしてしまった石井に、さっそく話を聞いた。さらに、“奇才”といわれる石井のクリエーターとしての姿を探ったその先に、見えてきたものとは‥‥。
──まずは2017年のGOATBEDの活動を総括から始めたいと思います。
今年はライブをたくさんやりましたね。リリースもしてないですから、活動的には外に広げる感じではなく、いまいる人に面白い企画で楽しんでもらう活動だったんじゃないかなと思います。
──その中でも印象に残っているのは?
5月にスタジオライブを毎週やってたんですけど。1日2回(公演)を毎週だから、1カ月で8本やったんですよ。
──下高井戸G-ROKSスタジオという、これがまたマニアックな場所でね(微笑)。こちらは公演会場というよりも練習室、音楽教室として使われているスタジオですよね?
ええ。昔から“普通”なところではやりたくなくて(微笑)。だけど、本数が多くなるとなかなかそうもいかなくて。本来あんまりいいことはないですよ。スタジオでのライブなんて。照明とか音のことを考えると。だから、当日はスタッフが照明係までやったりしてたんですけど。そういうのも逆に面白いかなと思って。スタジオだから、ステージもないんですよ(微笑)。
──ライブハウスだと普通に揃っているものが、ことごとくない訳ですよね?
ええ。でも、ライブハウスはどんなに場所を変えてもライブハウスとしての条件はどこも同じだから、変わり映えしない。だからこそ、やる環境を変える。そうすると、見え方も変わるから。
──スタジオライブの前は、ヤマハホールでやられたんでしたっけ?
ええ。そことの落差をつける意味でもスタジオでライブをやるというのはいいかなと。
──なるほどね。先にやったヤマハホール自体も、テクノをやってるような方々が利用する場所ではないですよね?
そうですね。打ち込みスタイルの人は絶対やらない場所ですね(微笑)。
──よくそんなところでOK出ましたよね?
そこはスタッフさんに頑張って頂きました(微笑)。ヤマハホールは音もいいし、壁が湾曲してて。そこに映像を映したらそれがすごくよくて面白かったですよ。
──ヤマハホールにしろスタジオにしろ、これまでやったことがないような会場でライブをやることに対して、石井さんは怖くはないんですか?
やってみたらお客さんとの距離感とか「ここすげーやりにくいな」というのはありますけど、それ以外では別に。GOATBEDはバンドと違って完全に自分次第ですから。
──ヤマハホールは一応銀座ですし、そうなると場所的に石井さんの衣装も控え目になったりするんですか?
そんなことないです(微笑)。会場によってというのは特別考えてないですよ。衣装はGOATBEDにおいてはなんとも思ってないんですね。真っ黒だったり、普通にTシャツ姿でってこともあるし。やっぱ、いつ見ても新鮮な感じがいいじゃないですか? セットリストを毎回全部変えることはできないから。そこでね、演る環境も毎回同じで、演ってる人間も毎回同じってなったら飽きてくると思うんです。演ってる方も飽きるんで。
──それで、スタジオのライブではカバー曲を披露する日も作ったり。
あとは生楽器。ドラムを入れたり。去年やった世田谷パブリックシアターぐらいからドラムはちょこちょこ入れてるんですけど。女性のドラマーが2人いて、その方々が素晴らしくて。元々サポートドラマーを入れたいなと思っていて、淡々と叩いてくれる女性ドラマーを探してたんですよ。
──最初から女性限定で?
ええ。男の人だと見た目的に難しくなってきたりしますけど、性別が違えば見た目はどんなでもカッコいいかなと思って。そうしたら、たまたま身近にカッコいい女性ドラマーが2人いまして。ツインドラムでいまはやってます。最初は企画ものっぽい感じで始めたんですけど、やってみたらそれが自分の理想に近くて。今年は8月に東京、大阪でやった<2×2on2>以外は全て一緒にやりました。
──そこに公演によってはドラム以外にピアノの伴奏者が加わったり。
女性コーラスが加わったり。
──石井さんの考えでは、GOATBEDは女性アーティストをフィーチャリングする姿が美しいというイメージなんですか?
同性だとどういう見た目でどんな楽器を持ってどんな髪型でとか、いろんなことが気になっちゃうんですよ。でも、性別が違えば、その全てを超越してくれるんで。女性をフィーチャリングすることに対して、お客さんたちがウェルカムではないシーンであるということは分かってるんですけど。俺はそういうんじゃないでってことで(微笑)。
──うはははっ(笑)。さすが石井さん!!
昔からずっと女の人とは演ってみたいなと思ってたんですよ。自分が好きだったバンド、例えばシューゲイザー系のバンドはベースが女性だったりするじゃないですか? でも、なかなか巡り合わなかったんですよ。それがこのタイミングで理想的な感じの人に2人も巡り合いまして。お客さんの受けもよかったと思ってるんです。リサーチした訳じゃないけど、自分が「いい」と思ったものは、必ずお客さんもいいと思ってると信じてるんで。自分が微妙だなと思ったら、絶対にお客さんもそう思うだろうからすぐ止めるんですよ。俺は。
──それは石井さんの鉄則?
そうですね。微妙だと思ったらその1回で止めます。