──では、過去開催で特に印象的だったアーティストや感動的だったシーンはありますか?
麻生 印象的なアーティストや感動的なシーンはたくさんあるので難しいですけど……。GOMAさん(ディジュリドゥ奏者。09年に交通事故により記憶障害を負うが11年に復活を果たした)が復帰して間もないくらいのとき(『SYNCHRONICITY’12』)に演ってもらったんですが、それはものすごかったですね。GOMAさんも「すごく良いライブができた」って言ってて。お客さんの“おかえり、待ってたよ!”っていう愛と歓喜に溢れた空気と演奏がすごく呼応して、グルーヴが目に見えるようで、うねってました。「やべー空間が曲がってるよ! ぐるんぐるんしてる」って(笑)。あれはヤバかったですね。
震災があった2011年も色んな感情とハプニングがあって忘れられないですね。『SYNCHRONICITY』はコンセプトにもあるように一過性なものにしたくなくて、あの場所があったからこそ毎日が楽しくなるとか、アクティブでいられるとか、一つの空間がその人のライフスタイルや日常に生きるものにしたいなって思ってるんです。
その年の『SYNCHRONICITY』の開催は5月15日で、初の横浜開催で規模も最大規模。ちょうど今回の『SYNCHRONICITY』と同規模くらいですね。で、同時期のフェスがバタバタと中止になる中、開催するか否かすごく悩んだんだけど、「きっと音楽が必要になる」と思って、リスクは高いけどそんな時こそ『SYNCHRONICITY』をやらなければという思いで、チャリティとして開催を決意をしたんです。でも最後の一週間まで全くチケットが売れなくて…。
自分の思ってることが間違ってたのかもしれないと思いつつ、予算をギリギリまで縮小して最小限の運営態勢で臨んだんですけど、蓋を開けてみたら最後の一週間に1000枚以上チケットが動いていて、当日券を求めるお客さんも何百人もいて長蛇の列で…。
──そんなことってあるんですね!?
麻生 僕もびっくりでした。そんな状況で受付がパンクしたり、あり得ない経験をしたり、人のエネルギーや想い、世の中の動き、色んな状況が交差した開催でした。今までで一番疲れた『SYNCHRONICITY』だったけれど、学びもたくさんあって忘れられない経験ですね。イベントってそんな人間の生(ライブ)なところに関わってるんです。
──難しいとは思いますが、総括的に『SYNCHRONICITY ’16』の見どころを聞かせてください
麻生 今までの『SYNCHRONICITY』プラス、envy、MONO、downyがスタートする『After Hours』の熱量っていうのは、見どころのひとつですね。ずっと熱くミーティングを重ねてきたので、その空気感も見て取れると思います。ミーティングって言ってもほとんど居酒屋ですけどね(笑)。また、見どころって言い方は難しいですが、envyのステージも今回しか観れないので貴重だと思います。
あと、O-nestの『New Action!』チームの新しい動きも、いまの“現場感”が伝わってきて面白いと思います。今回『New Action!』チームは僕からオファーしたんですけど、他のチームにも逆にどんどん入ってきて欲しいですね。僕はめちゃくちゃウェルカムです。
『SYNCHRONICITY』はどんどんオープンにしていきたいんです。最終的に全体を僕がオーガナイズできれば“『SYNCHRONICITY』感”は薄まらないので。そんな色んなエネルギーを集めて、時代感や勢い、熱量を伝えていきたいです。興味ある方、ぜひ連絡下さい。
──では最後に、今後の野望を聞かせてください。
麻生 さっきもチラッと触れましたが、昨年末にウェブマガジンを立ち上げました。ライブ(現場)の熱が伝わるものにしたいと思って今は仕組みを徐々に整えているところなんですが、ぜひ注目いただきたいです。で、ウェブマガジンとリアルイベント、両方とも『SYNCHRONICITY』って名前なんです。
もともとフェスを始めたくてやってるというよりも、素晴らしい音楽をたくさんの人に届けたい、音楽シーンを盛り上げたいっていうところから初めてて。その手段としては、ウェブマガジンでもフェスでもいいんです。このふたつをしっかり掛け合わせ、素晴らしい音楽やアートを今まで以上に届けていきたいです。