──なるほどね。あと、今作を聴いて思ったのは「やっぱり、Kj、ラップ上手えな」っていうことで。「Jump」とかね。
Kj ああ、けっこう日本語でラップラップしてるヴァースがあるのはひさしぶりだもんね。
──この曲はサウンド的にもEDM的なシンセを取り入れてたりして、新しい感覚を得たんじゃないかなと思うんですけど。
Kj 俺はちょっとふざけて作ったんだけどね(笑)。それでBOTSくんも乗っかってきて、最初はもうちょっとトラック然とした感じだったんだけど。サクとKenKenがだいぶ生にして。「なんだこれ、おもしろいサウンドになったな」と思って。
──このバランスのサウンドはなかなかないですよね。
桜井 ないですよね。今作はシンセを多用していて。俺も最初にトラックを何曲か聴いたときにEDMの影響を受けて作ってるのかなと思ったくらいで。でも、ああいうフォーマットとは全然違う方向性で作ってるからそれが面白くて。ああいう楽曲の作り方って、サビの頂点を作ってから平歌を作るみたいな印象を受けるものが多いけど、Dragon Ashはそういうふうにシンセを使ってなくて。一つの効用を得るための音色として使ってるから。それでこういう面白いサウンドになるんだよね。「Jump」ってなんかハッピーな曲ですよね。
Kj 「Jump」と「A Hundred Emotions」は最後に録ったんだけど、「あともう1回のレコーディングでタイムアウトだぞ」ってなって、その時点であまりに日本語の曲が少ないと思ったのね。それで急に日本語でリリックを作り出したんだけど。「Mix It Up」とか「Ode to Joy」もラップの曲ではあるんだけど―—。
桜井 「Jump」なんかはもっとちゃんとヴァース感があるラップだよね。
Kj そうそう。
──たとえばラッパ我リヤと17年ぶりにコラボレーションした「My Way feat. Kj(Dragon Ash)」でもラップしてほしかったという声もけっこうあったと思うんですけど。
Kj そうなの?
──あるでしょ。
Kj それは俺が我リヤに「ラップして」って言われなかったからやらなかっただけで。
──「やって」って言われたらやってたんだ。
Kj うん。それはオファーされて客演してるんだから向こうが望む通りにやるだけで。俺はミュージシャンとして自信があるから。曲がヒップホップだろうが、ロックだろうが、レゲエだろうが、ミュージシャンとして真剣勝負をやるだけで。
──若いラッパーから客演でラップしてほしいというオファーがあったら考える余地ってあるんですか?
Kj どうなんだろう?やらないと思う(笑)。「トラックを作ってほしい」と言われたらやると思うけど。マイクを持つことに対してそんなに喜びを感じるほうではないからね。曲を作ったり、演奏して踊り狂ってるのが好きなわけだから。「プロレスラーは強いんです」じゃないけどさ。
──中邑真輔の名言ね(笑)。
Kj そうそう(笑)。やっぱり「バンドマンってカッコいいんだよ」っていうことを全ジャンルの人にアピールしたいと思ってるから。「こんなに音楽的に高いところにいるんだよ」っていうことを、調子に乗ってると思われるくらい他ジャンルの人たちにアピールしたい。もちろん、他ジャンルの音楽も大好きだよ?楽器を弾けないのがコンプレックスだからそのジャンルを選んだって言う人ってよくいると思うけど、単純に今日から始めたって5年後にはだいぶ弾けるようになるわけじゃん?10年後にはさらに上手くなってる。だから俺は「やらないだけでしょ」って思うんだよね。俺は全部の楽器を演奏するからさ。「楽器はやらないんだよね」って言う人に全面的に負けたくないんだよね。
──いい話。
Kj すげえ練習してるしね。それがミュージシャンだと思うし。