「破壊という名の甦り。何かを観て感じる為には、邪を破壊して、Divineの感覚が必要で。聖なるものって、魂の愉しさ。生きてると色々知ってしまうけど、生まれた瞬間って、何も持ってないじゃない?」
Text by Tae Omae
Live Photo by teruhisa ohara / Zuhn Choi
5月26日(金)、単独公演『The DIVINE CHILDLEN』を開催するVANIRU。“聖なる”と名付けたこのショウに向けて今どんな心境なのか?を前編/後編の2回に渡ってご紹介して行く。前編では、昨年10月に出演した『VISUAL JAPAN SUMMIT』や、11月に開催したワンマンショウを振り返ってもらいながら、新たなステージへと向かおうとしているVANIRUのフロントマンLEONEIL(レオニール)に、正面から深く切り込んでいく。
心地よさは波動。
──LEONEILさんのインタビューが世に出るのは、かなり久しぶりですね。
うん。
──昨今の活動を振り返りたいのですが、2016年10月にYOSHIKI(X JAPAN)さんによる指揮の下開催された巨大ロック・イベント「VISUAL JAPAN SUMMIT」では、幕張メッセのステージに立ちました。あの経験から得たものはかなり大きかったのではないですか?
心地よさ、かな。
──それまでのステージ体験では味わったことのない心地よさでしたか?
うん。もちろん、いつも違うんだけど。
──ご自分たちのファンとは限らない多くのオーディエンスを前に、何を感じましたか?
心地よさは波動。そこは、あまり言葉に表せないからこそ楽しいのだと思うんだけど…常に新鮮な目で見てるから。皆さんもそういう目で見てるな、と。
どれだけ“今”にくっついていられるか。そしてそれが未来に繋がる
──更にVANIRUがスケールアップしていける、という手応えもあったのでしょうか?
ヴィジョンが想像以上に膨らんだ、かな。
──出演バンド数が多く持ち時間も短い中、「VANIRUのここだけは見せよう」という作戦は練ったのですか?
いや、作戦は一切ない。やっぱりその瞬間、すべてにおいての混ざり合い。「こう歌おう」とか「こういう感じで」とかいうのはもちろんあったけど、そういうのは妄想的で。そこは妄想以上の“生(なま)”があるから。その瞬間じゃないと混ざりきれない部分がたくさんあるし、その瞬間瞬間を楽しんでいきたい、という想いが常々ある。 そうじゃなきゃ変わっていかないと思う。考えていたことって「じゃあ、それはいつ考えたの?」ということになると、過去だよね。(出したものが)すぐに過去になってしまうのは嫌だな、と。どれだけ“今”にくっついていられるか。そしてそれが未来に繋がる、というイメージをね、無意識と意識の間で、感じているから。
──鮮度が大事ということですかね?
そうだね。進み続けること。瞬間瞬間、変わり続けていきたい、と思うから。
意識すればするほど、繋がらない。何かが…。大事なものに触れられない。どこまで自然に感じられるか?というのが本当の魂の歓びに繋がるんじゃないか
──そんな10月の体験があった後、11月11日にはShibuya WWWでワンマンショウ『NEW ROMANCER -PHASE Ⅰ-』がありました。アレンジが変わった曲も多く、曲間の繋ぎなど魅せ方も新たになっていましたね。あの日に向けて、LEONEILさんはどんな気持ちで挑んでいっていたのですか?
それぞれの曲に対して「こう見せたい、ああ見せたい」というのはたぶん誰しもあることだろうとは思うんですよ。目に見えるものだけじゃなく、空気や匂いも含め、「この曲はこういうフォルムで見せたい」とかね。でも特に大事にしたのは、統合。どれだけここで統合できるか?ということ。これは表現がちょっと難しいことなんだけど…。自身の意志もそうだし、お互いの統合、というところも。どれだけ無意識でいられるか?埋め込まれている体の神経内すべてを使って、どこまで感じられるか?ということ。こちらも、そちらも。そこは無意識のうちに求めながらいた。今思い返すと、だけどね。
──気持ち良くできたショウではありましたか?
すごく気持ち良かった。意識すればするほど、繋がらない。何かが…。大事なものに触れられない。意識というものは、もう確実にあるじゃないですか。何も意識しない、なんてことはないから、難しいんだけど。New eyes(新しい目でみること)に触れることがすごく難しい、というか。そういう意味で、あの日は、無意識的に自然にいれたと思う。どこまで自然に感じられるか?というのが本当の魂の歓びに繋がるんじゃないか、と思うから。
──あのワンマンショウの時は、どうして無意識になれる瞬間が多かったり、気持ち良くできたりしたんだと思いますか?
それはたぶん、あの空間と己のリズム、脈のリズム、互いの底のバイブレーションが同じ。同じ震えがあったというか、脈打ったというか。打楽器と歌が合わさって音のリズムが生まれるように、その空間のリズムが生まれた瞬間があったんだよね。言ってしまえばそれは波動なのかもしれないけど、それってこちら側だけじゃ100%は完成されなくて。あの空間ではそういう場面があった。脈リズムが同じになった瞬間が。生命は、生まれた瞬間、ユニークなわけで。ひとりひとりのユニークさ、その感性の混ざり合い、皆と。
──相互作用ですよね。
そう。そこで感性の統合ができるのか?って。難しいことだけど、瞬間があるんだよね。
──そういう時はハッ!と気付くものなんですか?
うん、気付く。心、魂の感覚。
──新しい目、第六感的な?
そうだね。
作戦というか、物語だね。破壊。生まれ変わり。抱かれるほうもちゃんと意志を持って抱かれなければならない。瞬間の、沈黙のコミュニケーションがある
──セットリストも「ISOLΛTION‐The Vortex‐」(メジャーデビュー曲のリミックス)での幕開けに意表を突かれました。1曲の中でめくるめく激動があり、瞬間瞬間に生まれ変わり、蠢き続けるような曲です。あの始まり方はLEONEILさんの作戦ですか?
作戦というか、物語だね。
──「あぁ、破壊から始まるんだな」と思いました。ご自身としてはどんな物語を紡ごうと考えていたのですか?
生まれ変わりは大事だなって。でも、こちらの意図なんてなんでもいいんですよ。そこで何か生まれ変わるものがあったのか?ということであって。
──受け手側が?
そう。どこからが生まれ変わりなのか?と。
──それはどういう意味でしょうか…?
どんな状況になった時に生まれ変わるのか?って。
──禅問答のようになってきましたが…。人が肉体としての一生を終えて、輪廻転生するという生まれ変わりもあれば、瞬間瞬間生まれ変わっている、という考え方もありますよね?生まれ変わりというのは、幅広い解釈を含む言葉だと思います。
うん、幅広いですよ。
──LEONEILさんとしては、あの日は「生まれ変わろう」という意志が根底に強くあった、ということなんですか?
うん…「生まれ変わろう」って、普段はあまり考えないと思うんですよね。何かが起きた時に、「あ、変えなきゃいけない?」と思う。そのちょっとしたこと、その瞬間にもう、生まれ変わってる。でも、「じゃあどうやって生まれ変わるのか?」と言ったら、さっき言った“破壊”というのも一つ、たしかにあると思うんだよね。破壊しなければ生まれ変わることはできない。それが最初にあったかな。
──破壊には痛みも伴いますよね。
痛みがなければ、生きてる心地しないよね。
──ショウの冒頭で力強く破壊を提示して以降、妖艶だったり幻想的だったり、いろいろな夢を見せていく、美しいセットリストでした。このショウが始まりと終わりとで、自分自身が変化、脱皮したような感覚はありましたか?
そうだね。解放の部分はやっぱり、あったね。解き放たれた、ということと、(聴き手を)解き放たねばならない、というのもあったし。いろんなことが一気に飛び出してくるから、だから気付くんだよね、「あ、変わったな」って。
──痛みを上回る快感、喜びはありましたか?
もちろん。それがなかったら、苦しいよね。苦しさのパワーに行ってしまうのは良くないと思う。
──痛みに寄り添いながらも、そこには留まらない、という?
痛みを失くすことなんて絶対できなくて、それは抱いてあげればいいと思うんだよね。抱かれるほうもちゃんと意志を持って抱かれなければならない、とは思うんだけど。瞬間の、沈黙のコミュニケーションがある、とても気持ちいいところ。
パワーを求めすぎると、争いが始まる。求めてるのはそこじゃないんだよね。
──ステージでパフォーマンスされる時のLEONEILさんはどんどん逞しくなっていっているように思うのですが、強くなっているという実感はありますか?
強さを求めてない。パワーは求めない。パワーを求めすぎるとね、争いが始まるから。求めてるのはそういう感じじゃなくて、ちょっと違うかな…。熱だと思う、情熱というか照りというか。だから、「強くなった」というより、「照りが大きくなった」という感じのほうが強いと思う。
──私が感じた強さは、より凛として、より確信をもって表現している、というニュアンスだったんですが…。
そうだね、確信がある意味革新されている、という感じはあるかもしれない。怯えが全くなくなったのかもね。「こんなに心が革新的でいいのか?」という怯えが。そう言われてみると。
──ステージに立つ時は、怯えや不安は誰しもありますよね。
そう。だから、そこにどれだけ楽しさを覚えるのか?って。それは、繰り返し、溜めていくものだったりするから。だから、より楽しくなってきてるのかも。例えば「ISOLΛTION」とか、書いた曲自体が、その曲たちを生み出した時よりもっと深く、(自分の)潜在意識を持って行ってくれる、というか。そこはやっぱり、(曲が)生きてる、と感じる。
──そしてワンマンが終わった後、年末年始はリラックスして過ごせましたか?
いつもリラックスしてます。(笑)。
後編へ続く
インタビュー後編は4月28日(金)UP予定
◎ Cosmic Night ~Band Ver.~【Music video】
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