──新体制1年目ならではのエピソードですね(笑)。そういう実践経験と並行して、フルアルバム『Apple of my eye』の楽曲制作をなさっていたのでしょうか。
mayu そうです。わたしたちはこれまでもなるべく年1くらいのスパンでアルバムを作ってきたので、ツアー同様にそのペースを変えることも思いつかなくて。あとライブをやるなかで4人としての曲も欲しいなという気持ちもありましたね。先行リリースした「G.O.D.」「PROGRESS」「Beautiful days」もその一環で作ったものです。カラーの違う3曲をコンスタントにリリースして、「BRAINWASH」と『Apple of my eye』につなげたかったんですよね。
mayu
──「バンドの現在を体現する曲」と語られていた「PROGRESS」は生々しくもドラマチックな曲だと感じました。
葉月 「PROGRESS」は4人になってから初めて書いた曲で、手探りながらも「今までのNEMOPHILAの強みのひとつであるギターリフやメロディのキャッチーさを大事にした曲を作ろう」と思っていました。今までの要素を受け継ぎつつ、mayuちゃんがシリアスな雰囲気のあるサビで明るい声色を使ってくれたり、展開が多かったり、打ち込みが入っていたりと「これからのNEMOPHILAはこんなふうになるんだぞ」という意思表示をした曲になりました。
mayu 打ち込みの部分は新しいプロデューサーのhicoさんのエッセンスなんですよね。
葉月 アレンジで印象がすごく変わった曲ですね。展開が多すぎたかなと思ったんですけど、hicoさんがうまく帳尻を合わせてくれてあの完成形になりました。
mayu ああいうサウンドアプローチは初めてだったので、声色も今までにない感じにしたかったんですよね。NEMOPHILAはサビのレンジが基本高いんですけど、わたしの声質はハイよりもミドルのほうが得意で。だから自分の得意な音域なぶんいろんな歌唱法を取り入れて繊細な表現をしたかったし、新しい引き出しの1曲になったという意味でも“PROGRESS(前進、成長)”だなと思っています。
むらたたむ 「PROGRESS」を作ってから、さらに音楽的な表現が必要になって。ただ強く速く正確に叩くだけでなく、ライブでもニュアンスが大事なので、演奏者としてひとつステップアップできる曲ができたなと感じていますね。
むらたたむ
──『Apple of my eye』の楽曲は、皆さんの感情が根底にある曲が多いですよね。音楽ジャンルで語るというよりは、直感的に「この曲は情熱的だな」「センチメンタルでロマンチックだな」と感情のニュアンスが飛び込んできますし、メインソングライターが曲ごとにすごくわかりやすい。
mayu 2024年はNEMOPHILAにとって、人間として大事な期間だったんですよね。5年間積み重ねてきたなかで4人になって、今までの実績や楽曲を愛して大切に思い続けることだけでなく、変化も必要だと思ったんです。だから今回の制作はみんなすっごい心身を削っていて……。
ハラグチサン そうだね。肉をこそいでこそいで……って感じで。
mayu とにかく自分のスタンス、感情、考えを全部曲に押し詰めていって――そういう作り方が今のNEMOPHILAにとって自然だったし、そうやって作った音楽が結果的にNEMOPHILAというバンドを体現するものになったらすごくいいなと思っていました。作った後はみんな屍みたいになっちゃうんだけど、それによって新しい感情が生まれたり、屍になってからいろんな経験をしてまた人間になっていって……そういうのがバンドなのかなって。いい思いだけじゃなく、つらいことや苦しいことを一緒にいっぱい経験していくといい作品ができるんだなと思えたんです。
むらたたむ 前は明確なゴールに向かってまっすぐ突き進む制作をしていたんですよね。そこから少しはみ出ると「違う違う、こっち戻っておいで」と精査してもらえていたから、うまくひとつの方向にまとまっていた。でも良くも悪くも今のNEMOPHILAは鎖が外れたのかもね(笑)。
mayu ほんとツアータイトル通り“野獣覚醒”かも(笑)。前のプロデューサーの秋山さんはご自身のイメージを明確に持ったうえでたくさんある引き出しから音を構築していく方だったので、ウチらの持ってきた具材にプラス秋山さんの材料も調味料も足してくれる人でした。
ヒコさんももちろん寄り添ってはくれるし、色んなアイディアをくれるけど、基本は君たちが持ってきた具材で料理しよう!って人と言う感じでした。
むらたたむ 「持ってきた材料がこれってことは、野菜炒めを作りたいってことだよね~」っていう感じね(笑)。
mayu そうそう(笑)。「PROGRESS」は「ここにお肉を入れたらもっと美味しくなるよ」って打ち込みを入れてくれた気がする。あんまり多くを語らない方だけど、無言の中に優しさを持ってくださっているのを感じます。わたしたちの持ってきた材料で最大限できることを詰め込んだアルバムになりましたね。ハラちゃんの殺人鬼っぷりも曲に出ているし(笑)。普段はこんなにみんなを和ませるクッションみたいな人なのに……。
ハラグチサン ただ笑ってるだけじゃないんだぞ!っていう(笑)。でも殺人鬼ってどうなのかな……?
mayu 怒りの矛先が音楽だから大丈夫(笑)。こういう怒りを抱えて生きている人は、結構たくさんいると思うんですよね。「BRAINWASH」はおおもとのデモを作ったハラちゃんに歌詞のテーマを相談したら、にこやかに「ヘイトソングで」と言われたのでこの歌詞になったんです(笑)。
ハラグチサン
──NEMOPHILAがここまで怒りをあらわにした曲を作るのは初めてですよね。
ハラグチサン 「なんで怒りを封じているんだろう?」という素朴な疑問が湧いたんですよね。ヘビーな音楽をやるきっかけの根源はそこに繋がるのもあるし、怒りはパワーが強いと思うんです。聴いていてエナジーを感じられる曲にしたかったし、音ももはやチューニングが合っていなくてもいい、とりあえず泥を投げつけるような音を出したかった。綺麗じゃないものを作りたかったんです。「みんなこういう感情を胸の奥に抱えているでしょ?」って。
mayu “ポジティブ”や“笑顔”を大事にしてきたので、これまで怒りを表現するときは若干マイルドにさせていたんです。でも今回はストレートに爆発させました(笑)。
むらたたむ 歌詞カードでは「☆」で気持ち程度に和らげて(笑)。
mayu 大人になるとモラルや理性がついてくるけど、大人になっても嫌なことは嫌ですし、心から笑えるのは悲しいことやはらわた煮えくりかえるような怒りを経験するからだと思うんです。怒りは人間として持つべき必要不可欠な感情だし、創作活動はそれを公共の場で表明できる唯一のツールでもあるので、『Apple of my eye』ですごくいいエッセンスになりましたね。おまけにめっちゃ早く書けました。
──mayuさんの怒りも、mayuさんに詞にしてもらうのをずっと待ちわびてたのかもしれませんね(笑)。2025年2月9日から恵比寿LIQUIDROOMを皮切りにリリースツアーがスタートしますが、どの曲がいちばんスリリングになりそうでしょうか?
葉月 これはもう満場一致じゃない? せーので言う? せーの!
むらたたむ 今からやりたくてしょうがないです(笑)。
mayu 超楽しみ(笑)。ロックバンドを観ていると「かっこよすぎて笑っちゃう」みたいな瞬間があるじゃないですか。「BRAINWASH」でそこに行き着きたいし、エネルギーを感じて皆さんにも笑ってほしいですね。「Just Do It!」も、たむさん自らこのアレンジを組んでいるので、ほんと自分を高めるスパルタな曲だなあとも思うし。
むらたたむ でもこの曲、mayuちゃんの作詞と同じでレコーディングめちゃめちゃ早く終わったんだよね(笑)。
──皆さんが以前よりも音楽に対してご自身を解放していることがよくわかるお話でした。リリースツアーは2024年の経験を経てパワーアップしたNEMOPHILAをお見せできそうですね。
mayu 今回のアルバムはいっぱい悩んだり、いろんな時間があったことのアンサーなので、これからアルバム曲を自分たちに落とし込んで、ステージに立ったときにリミッターが解除される気がするんです。そのステージを皆さんにいいと思ってもらえたら、わたしたちの2024年がいいものだったんだなと感じられるんじゃかなと思う。そういうライブができたらなと思いますし、皆さんの反応がすごく楽しみです。
ハラグチサン この1年試行錯誤してきて、道に迷ったりジャングルに入り込んじゃった瞬間もあったけれど、アルバムが完成したことでそこから抜け出して、バンドとしてまとまった感覚があるんです。だから始まりを感じていますね。これからは上がっていくイメージ。宇宙に行く第一歩だと思っています。
むらたたむ このインタビューの時点ではスタジオで実際に音合わせをしていないんです。そこでなるほどと思うことも毎回いっぱいあるので、リハでどんな発見があるのかがまず楽しみなんですよね。
葉月 今までNEMOPHILAは自分たちじゃない何かが中心にあるような感覚だったんですけど、4人になってからメンバーそれぞれの意思がライブにも制作にも反映されるようになって、すごくいいものになってきたなと思います。自分のことでいっぱいいっぱいで、どうしたらいいのか明確にわからないまま走り続けていた時期を経てまとまった気がするし、ライブを想定して作った曲が多いのでほんとにライブが楽しみです。
葉月
葉月 ありがたいことに最近島根県に認知してもらって、2024年は山陰中央新報に取り上げていただいたり、島根のフェスに出させていただいて、初めてバンドで島根に来ることができました。でもそのときは全然のんびりできなかったので、今回のツアーファイナルではメンバーのみんなにも島根の美味しいものを食べて英気を養ってもらいたいですね。
mayu はづきんの地元でファイナルを迎えられるのもうれしいですし、アルバムとツアーで2025年をスタートさせてどんな1年になるかすごく楽しみなんです。来年はさらに本気を出していくので、命懸けなわたしたちを楽しみにしていてください!
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