──「物云わぬ物怪」は亡き人に捧げた内容で、1曲目「倒木」もそれに通じる歌詞ですよね。アルバムの最後と最初が繋がっているように感じたのですが。
猪狩仰る通りで、「物云わぬ物怪」を最後に置くことを想定して、1曲目に「倒木」を作ろうと決めたんですよ。前作のミニアルバム『YUGE』から僕は物怪づいていて…。
──そう言えば、「遊戯」でも鳥の声を入れてましたよね?
猪狩はい。「倒木」の後ろで鳴っている音もその曲と同じで地続きなんですよ。で、死生観はずっと意識していて、「倒木」では亡き人を描いているけど、前向きな歌なんです。それは作品全体で意識していて、アルバムの入口と出口では特にそれを考えました。
──「物云わぬ物怪」の「エンドロールの その少し前までに 続きを教えて」の歌詞はすごく刺さりました。というのも、今年自分の親友が亡くなったもので、死ぬ前に兆候があったなら教えて欲しかったなと。だから、猪狩さんも似たような経験をされたのかなと。
猪狩一緒ですね。誰かが死ぬことって、その直後に味わう感情もあるけど、時間が経つごとにその人の存在を大きく感じますからね。
──ええ。「倒木」に続く「日進月歩」は個々の楽器が主張していて、ギター、ベース、ドラムの音がよりクリアに聴こえます。
猪狩極端に楽器の数が少ないんですよ、オーバーダビングもしてないから、一個一個の音の存在感が大きいと思います。制作前から隙間みたいなものは意識しました。
──シンプルですけど、余韻が残る。その意味では「まぼろし」もそういうサウンドですね。
猪狩自分の音がはっきり聴こえるからこそ、一人ひとりの演奏に責任感や説得力がつくと思うので、隙間はいいこと尽くしじゃないかと(笑)。「まぼろし」もそうだし、「メリーゴーランド」は3人の音しか入ってないから。それは作品全体にも言えることですけどね。何年か前に弾き語りを始めたので、それで音数の少なさに対する恐怖心が消えたかもしれない。
小西今作は制作期間が長かったので、1曲1曲に目標を立ててやれたんですよ。「日進月歩」だったらデモの段階でそこまでギターが入ってなくて、これ以上入れる気持ちはないんだろうなと。だったら、サビで抜ける感じとか、ドラムとの兼ね合いを考えて、どう広げようかなと。「まぼろし」だったら、レッチリっぽくサビではメリハリを付けたりして、隙間がある分、いろいろ選択肢は増えますからね。自分も隙間をうまく利用してやろうと。ドラムとの兼ね合いはシビアになるけど、合えば気持ちいいですからね。
手持ちの札で勝負する。今はそういうモードなんです
──歌詞、サウンド面においても今はやりたいことが明確に見えているんですかね?
猪狩迷いはあるけど…自分たちができること、できないことを踏まえつつ、手持ちの札で勝負する。20周年のタイミングですけど、今はそういうモードなんですよ。曲が呼ぶアレンジにするべきというのもわかるけど、ストリングスが入った豪華なアレンジだったり、そういう曲は今回は選ばなかったかもしれない。今作に関してはこの音像、このアレンジが一番かっこいいtacicaだろうという自信のもとに作りました。
──「ミカラデタサビ」はベースの主張が激しく、オルタナ/グランジっぽいニュアンスを感じますし、UKのロック・デュオであるROYAL BLOODの音像も頭に浮かびました。
小西デモの段階でこのリフが入っていたけど、自分なりにアップデートしつつ、音像に関しては曲に寄せたサウンドですね。歪ませてやろうと思ったから。
──「泥の模様の服を着て歩きなさいな」とか、歌詞もエッジがあります(笑)。
猪狩ちょっと皮肉った歌詞が得意なんですよ(笑)。歌詞と同時にメロディが出てきて、それはベース・リフに呼ばれた感じです。まさにバンドで鳴らすべき曲という顕著な例かもしれない。最初はギターいらないかなと思ったけど、本当に必要なところだけを弾きました。
──そして、8曲目「ネバーランド」以降はさらにシンプルな楽曲が続きますよね。
猪狩曲順も奇を衒うというより、それぞれの持ち場に自然と並んだ感覚ですね。僕が好きなアルバムの流れというか…例えば新しいヘッドホン買いました、DTMの環境を新しくしたとか、リファレンスが必要なときに最初に聴くのはジャック・ホワイトの『BLUNDERBUSS』なんですよ。いろんな音が入っていて、ゴリゴリのエレキもあれば、アコースティック主体の曲もあるけど、アルバム通して聴くと統一感があるんですよ。当時のインタビュー記事を読むと、「ラウド戦争から一度降ります」みたいなことを言っていて、あの作品は音作りにも影響を受けましたね。
──なるほど。「夢中」もシンプルではありつつ、ベースがメロディアスに動いて曲に表情を付けてます。
小西この曲のサビは普通だと面白くないから、何か面白いことをやろうと思って出てきたフレーズですね。ベースで和音っぽいことをやってもジャマにならないかなと。いろんなフレーズが入っていたら、絶対にやっちゃいけないフレーズなんですよ。3人という音数だからこそ、うまくハマッたのかなと。
4月5日に向けて熱量を上げていくツアーにできたらいい
──そして、今作のレコ発ツアーが11月から来年3月まで続きます。どんな気持ちで挑もうと思っていますか?
猪狩年明けの4月5日が結成記念日で、そこが正式な20周年になるんですよ。どうしてもそこに意識は向くので、レコ発だから今作の曲を踏まえつつ、過去曲も織り交ぜて、4月5日に向けて熱量を上げていくツアーにできたらいいなと。
小西猪狩が言ったように来年4月に対する意識はあるけど、今回いいアルバムができたので、それをお客さんに届けつつ、昔から知ってくれている人、今作から知ってくれた人もひっくるめて、みんなで4月5日に辿り着けたらいいのかなと。
──わかりました。ちなみにツアー初日は東京キネマ倶楽部(11月9日)ですよね。この10年くらいは毎年この会場でやられていますけど、そこに対する思いがあれば教えてもらえますか?
猪狩キネマへの憧れは個人的にはすごくあって、EGO-WRAPPIN'のホームなんですよ。上京してすぐ「Midnight Dejavu」(EGO-WRAPPIN'の恒例イベント)をキネマに観に行き、会場を含めてすごく感動したんです。それが東京に来て良かったことの一つですね。それからあの会場に対する憧れが芽生えて、無意識にキネマでしょ!って、ここ何年かはそうなってます。既にあの会場の雰囲気に魅了されているんでしょうね。
──ファンの方もtacicaとキネマの親和性を感じている?
猪狩ああ、ワンマンをやらせてもらうことも多いので、自分的にはもっと頑張らないと見合わないと思っているけど。お客さんから「tacicaと言えばキネマでしょ!」と言ってもらえたら、嬉しいですね。
小西雰囲気のいいハコがあると聞いていて、今の時代っぽくない内装だし、面白そうだなと。実際に出てみたら、自分たちもやりやすいし、お客さん目線でも観やすいステージだなと。2回席もあるし、いいハコだなと思ってます。ここ最近は利用する機会も多いので、お客さんと一緒にいいライヴを作り上げられたらいいなと。
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