ピノキオピー、約5年ぶりの全国ツアー「モンストロ」を開催!15年の活動、『META』以降の制作のモード、ツアーへの思いを訊いた

インタビュー | 2024.06.15 10:00

──2023年のフルアルバム『META』以降リリースされた楽曲のうち、「アポカリプスなう」「Aじゃないか」「嘘ミーム」の3曲は、客観的かつ多角的な視点で現代人を見つめる『META』の手法を用いながらも、『META』以上にピノキオピーさんの考え方が伝わってくる曲たちだと感じました。
おっしゃる通りで、『META』は違うものに成り代わって歌詞を書いてみたり、客観性が高いテーマだったので、最近はもともと自分が思っていることや面白いと思うことに立ち返ろうとしていますね。「アポカリプスなう」は「“人は欲求には抗えない”という風潮は、このままどんどん進んでいくのか……?」と思ったことがきっかけで作ったんです。最近は「欲望のまま進め」みたいな曲が多すぎる気がして。
──そうですね。悪ぶったことや自堕落なことがかっこいいという価値観は、いつの時代も一定数ある気がします。
もちろんそういう曲があってもいいんですけど、それならそれに対して「ちょっと待て! そのまま進んで大丈夫か!?」と制止する曲があっても面白いと思ったんです。ダークな雰囲気の曲に、その雰囲気と真逆のことを言い出す歌詞を乗せてみようという着想から作り始めました。不穏なムードが漂うアレンジもどんどん爽やかになって、最終的には「海へ行こうぜ」と歌い出すという……ああいうのがやりたかったんですよね。でも「アポカリプスなう」以降、何を書いたらいいかわからなくなってしまって。

──えっ、そうだったんですか。
どんどん世の中の仕組みを考える脳になってしまって、それに引きずり込まれてしまったというか。伝わりにくい複雑な曲を作ったり、逆に何も中身がないような曲ができたり、歌詞でいっぱい「鬼」と言えば面白いんじゃないかとか……本当に路頭に迷っていました。「自分が心を動かされるものってなんだったっけ?」と一つひとつ探していくように作ったのが「Aじゃないか」です。
──「Aじゃないか」はピノキオピーさんが「神っぽいな」などで提示してきた「こういう考え方もあれば、こういう考え方もあるよね」という観点を、初音ミクと鏡音リンの議論というわかりやすいフォーマットに落とし込んでいる印象がありました。
前々から「AさんとBさんの対比」をテーマに歌詞を書きたいと思っていたんですけど、なかなか書けなくて。それを詳細に書きすぎると複雑になっていくので、「Aの意見とBの意見が対立している」くらいのわかりやすさでもいいかもしれないと思って作り始めたんです。ミクひとりが歌っていると対立構造がわかりにくいかもしれないからリンとデュエットにして、いろいろ迷いに迷って、必死に泳いでようやく「なんか面白いかも」というところにまでたどり着けました。

ピノキオピー - Aじゃないか feat. 初音ミク・鏡音リン / Isn’t it “A”

──そぎ落としていく意味合いが強い制作だったんですね。
それもあって「Aじゃないか」の制作前後で、ザ・クロマニヨンズをあらためて全部聴き返したくなって、アルバムを全部買ったんです。もともとTHE BLUE HEARTSも↑THE HIGH-LOWS↓も大好きで。ザ・クロマニヨンズを聴き返すなかで、歌詞のシンプルさ、プリミティブさに感動したんですよね。面白いフレーズがひとつあれば、それが曲を引っ張ってくれて全部面白くなる。自分の根っこにあった感覚を思い出せて、今はガツンと伝わるものを制作では求めているところがありますね。
──ヒット中の最新曲「嘘ミーム」にも、おっしゃっていただいた要素が反映されている印象があります。「嘘○○」という言葉がキャッチーで、アレンジもポップだけどどこか切なげで。
スタッフさんと一緒にいるときに、ごはんを真上から撮影して「嘘みたいなごはんの写真だな。“嘘ごはん”だな」という話で盛り上がったんです。それで「嘘○○」って言葉の響きが面白いなと思って、それを曲にしていきました。僕としてはサビで書いていることに対してネガティブな気持ちはあんまりないし、世間的にも「世の中そういうものだな」という認識だと思うんです。でも実像の自分と虚像の自分がかけ離れすぎるとどうしても寂しさは感じてしまうし、見栄を張りすぎると本当の自分が虚しくなったりもする。本当も嘘も全部含めてその人だとも思うんですよね。
──そうですね。凛々しい自分であろうとしている状態は虚勢で嘘かもしれないけれど、とても美しいものだと思いますし。
本人が本当だと思っているものも、ほかの人が見たら嘘かもしれないけど、本人が本当だと思えば本当だし、でもやっぱり嘘でもあるというか。そういうものを包含した曲にしたかったんですよね。せっかく「嘘」をモチーフにした曲なので、ミュージックビデオのアートワークも『ピノキオ』と引っかけました。最初に投稿した「ハナウタ」という曲は「鼻」くらいしかピノキオと接点がなかったけど、「嘘ミーム」はピノキオの重要な要素をモチーフに曲になりましたね。この15年そういう曲を書いたことはなかったので、このタイミングでそれができて良かったです。

ピノキオピー - 嘘ミーム feat. 初音ミク / Fake meme

──今回のツアーの「モンストロ」というタイトルも、『ピノキオ』に出てくるクジラの名前ですよね。15周年というアニバーサリーイヤーもあり、ピノキオピーさん史上最大規模のツアーです。
本当にありがたいです。5年ぶりの全国ツアーが開催できるなんて、おまけにこんな大きな会場でやらせてもらえるなんて思わなくて。コロナ禍に入った2020年に独立をして、ライブのことまでなかなか手が回らなかったんです。でもそんな僕に声を掛けてくれた人のおかげで「パラレルエッグ」というライブが開催できて、それがいまこんなに大規模なツアーにつながっているのは本当にありがたいですし、とてもうれしいです。去年の「MIMIC」もあんな規模で開催できるとは思っていなかったですし、みんな本当にうれしそうな顔をしてくれたことも感動的で。
──お話をうかがうたびに、ピノキオピーさんはライブに対してとても真摯に向き合っていらっしゃるなと感じます。
昔から好きなアーティストのライブDVDを観るのが好きで、ふんわりと「僕もこんなことができたらいいな」と夢を抱いていたんですよね。そこから数年かけて、ライブDVDで観ていたようなアーティストの方と同じぐらいの規模でライブができるなんて、本当に感慨深いです。去年の「MIMIC」で、僕は意外と自分のライブでは緊張せずに楽しんでできるタイプだということが判明して。
──あら、そうなんですか。前回「初めて立ったステージ」のお話を聞いた際、人前に立つのが怖かったというお話をなさっていたので、今もてっきり緊張はなさっているのかと思っていました。
お客さんは敵ではないし受け入れてくれるから、楽しいでしかないんです。フェスは確かに緊張するんですけど、フェス全体の雰囲気がいいと楽しいですし、そのおかげでお客さんの表情を冷静に見られるようになりました。僕のライブが刺さってないであろう人もいるけど、何人かに届いているならそれでもいいやと思えるようになりましたね。場数は大事ですね(笑)。でも曲を投稿するときだけは何度やっても同じように緊張するんですよね……。
──(笑)。ツアーは新旧織り交ぜた楽しいセットリストにすると、SNSでもおっしゃっていましたね。
そうですね、「MIMIC」とは全然違うライブになると思います。みんなの楽しい思い出になってほしい気持ちがとにかくあって、「祭りだヘイカモン」という曲もライブはお祭りだと思っているから作ったものなんです。僕はあんまりかっこつけられないタイプですし(笑)、みんなと楽しみたい気持ちはどんどん大きくなっていて。「楽しい」ばっかりで恐縮ですけど、とにかく楽しめる場所にしたいですね。5年越しに全国各地の皆さんとお会いできるのもすごく楽しみで。

──Zepp4ヶ所と豊洲PITなので、たくさんの人と会えますね。初日は札幌です。
とうとう初音ミクの故郷の札幌でもライブができます。僕のライブで歌っているのは基本ミクなので(笑)、ミクファンの方にもたくさん来ていただきたいですね。名古屋は前にライブをしたときにすごく元気で、また行けるのがうれしいですし、大阪や福岡もこんな大きな会場でライブをすることはなかったので、でっかくなって帰ってきたぞ!という姿もお見せしたいです。豊洲PITもニコニコ動画のライブイベントで初めて立った会場なので、それをワンマンで埋められることもうれしいんです。
──今年は全国で、ピノキオピーさんの音楽を愛する皆さんと一緒に素敵な夏の思い出が作れそうですね。
僕も5年ぶりのツアーなので各都市新鮮な気持ちで回れると思いますし、皆さんがいい思い出を作れるよう全力を尽くしたいですね。応援してくださる皆さんには本当に、とにかくありがとうという気持ちでいっぱいなんです。

PRESENT

直筆サイン色紙を1名様に

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