──“TOUR 2024「Ace」”も、『Ace』と同様にバラードやミドルナンバーを一切演奏しないセットリストになりました。
全バンド人生含めて、こんなにスラップがしんどいのは初めてで、過去一キツいセットリストでした(笑)。yuriも初日と2日目は「このセットリスト無理!」って(笑)。
──確かにあれだけ激しい曲だけでセットリストが組まれると、まず負担が掛かるのはリズム隊ですよね。
ゲネプロの段階では「ちょっと無理なんじゃない?」「休むところ必要かな」という話も出たんですけど、「いや、1回実際にこれでやってみよう」ということで初日を迎えて。本当にキツかったけど、ライブの方向性を変えようとは思いませんでしたね。だからそれぞれがちゃんと個人練習して、本番に向けて備えていきました。ツアーを回りながら新曲を試してみたり、アレンジや尺を変えてみたり、いろんなトライをしましたね。
──ツアーファイナルのEX THEATER ROPPONGIで「S・w・e・e・t」「SPEED」「乱心glow」という未発表の新曲3曲を聴けたことにも驚きました。
セミファイナルの札幌とEX THEATERで新曲をやりましたね。15周年に向けて久しぶりにTOMOちゃんのメインボーカル曲を作ろうということでできたのが「S・w・e・e・t」で、前々からフルのインスト曲が欲しいねと話していて、はなが作ってくれたのが「SPEED」です。「乱心glow」は『Ace』の制作タイミングではなが原型を作っていて、もっとアッパーな曲が欲しいねというところからツアー中に完成させました。久しぶりにアンジーとはなのがっつりツインボーカルの曲ができましたね。ガチャピンはライブ映像のリリースが多いので、新曲を入れて変化をつけられたらなと思っていて。
──vいまおっしゃっていただいたこと然り、Gacharic Spinはお客さんに楽しんでもらうための細かい工夫が多岐にわたり凝らされていますよね。ライブでは「カチカチ山」でアンジーさんとオレオさんが、クラップを何回叩いたらいいかを振り付けに混ぜて伝えたり。
※この曲は「僕だけのシンデレラ」です。カチカチ山は、クラップはしないです。
※この曲は「僕だけのシンデレラ」です。カチカチ山は、クラップはしないです。
ライブで手を挙げるのも恥ずかしい人たちもいると思うので、そういう人たちにも楽しんでもらえるものにしたいんです。Gacharic Spinは活動歴が長いだけでなく、編成も変わっているので、いろんな時期で知ってくれたファンの方がいるんですよね。だからもしかしたら今のGacharic Spinは、その人がいちばん好む体制ではないかもしれない。でもそういうの関係なく、今のガチャピンもかっこいいな、ライブ楽しいな、メンバーが好きだなと思ってもらえる活動がしたいんです。
──そういう意味では、アンジーさんがパンキッシュにリメイクしたセーラー服を着てパフォーマンスした「MindSet」と「レプリカ」のセクションは象徴的でしたね。アンジーさんのメインシンガーとしての存在感に息を呑みました。
アンジーがラジオや舞台で頑張っているのもあって、最近Gacharic Spinのことを知ってくれた方も多いから、アンジーが制服を着てライブをしているのを観たことがない人もいらっしゃるなと思って。同時に「MindSet」でGacharic Spinを知ってくれた人もいらっしゃるので、今回アンジーに制服のパフォーマンスを持ちかけました。彼女は経験をしっかり吸収してそれを表現できるし、バンドのアイコンを担ってくれている。だからアンジーを輝かせる制作はしていきたいんです。
──今のGacharic Spinのスタイルは、お互いがお互いを引き立てる関係性があってこそ実現できるのでしょうね。
6人とも押すべきところと引くべきところの判断がしっかりできるかな。でもそれはメンバーそれぞれをリスペクトしているからこそですね。「今は自分じゃなくてあの子のことを目立たせたい」という気持ちがそうさせていると思います。
──EX THEATERのラストでは涙ぐむメンバーさんも多かったので、“TOUR 2024「Ace」”は皆さんにとってもとても思い入れのあるツアーになったのだろうなと。
やっぱりEX THEATERをソールドアウトできたことは「自分たちのやってきたことがかたちになったな」と久しぶりに思えた瞬間でもあって。Gacharic Spinはいつももう一息でソールドアウトできないからそれが悔しかったし、どうしたらもっと届くんだろう?と試行錯誤もして。そういうなかで今回ソールドアウトできたので、7月のTOKYO DOME CITY HALLに向けて弾みがついたし、階段を上れた感覚があったんです。それがオレオの「バンドを続けていてよかった」という言葉になったんだと思います。
──女性は妊娠や出産があるぶん、何かひとつのことを続けるのは難しい局面が出てくると思います。だからyuriさんが産休に入ったこと、ちゃんとバンドに帰ってきてくれたこと、バンドがその間も歩みを止めなかったこと、すべてがGacharic Spinにとってプラスになったんだろうなとも思いました。
15年以上のバンド人生で、妊娠や出産をきっかけに活動がストップしたガールズバンドをたくさん見てきて。もちろんそれもひとつの選択だと思うんです。でもGacharic Spinは、yuriのひとりの女性としての幸せも、バンドとしての活動もどちらも諦めたくなかったんですよね。わたしたちもyuriが帰って来られる環境を作ってきたし、yuriも身体のバランスを保つのも難しいなかで育児もドラムの練習もすごく頑張っていて。みんなで全力を出して乗り越えてきたから今があると思うんですよね。
──本当にそうですね。
今のメンバーと出会って、コロナ禍があって、セルフプロデュースになって、yuriの産休があって……この5年いろんなことがあったんです。そんな変化や経験のなかで一つひとつじっくり考えて、わたし自身視野が広がったなと感じるんですよね。昔は「バンドはこうあるべき」ともっと凝り固まってたし、トゲトゲしてたなあって(笑)。今はいい距離感でちゃんとバンドをやれていると思います。
──“TOUR 2024「Ace」”を経て、さらに大きくなったGacharic SpinがTOKYO DOME CITY HALL公演“LIVE 2024「 Let It Beat 」”でどんなステージを見せるのか、期待が高まります。
追加公演という名目ではあるんですけど、「 Let It Beat 」というタイトルを掲げているので、ツアーとは違うものにしたいですね。EX THEATERはバンドらしさを出したシンプルなステージだったので、TOKYO DOME CITY HALLは派手なセットを考えていて。あと、EX THEATERを経て「もっとここをこうしたいな」というイメージが湧いてきたので、もうひとひねりしようかなと思っています。当日はもうとにかくみんなで楽しみたいですね。
──その前に、5月18日には日比谷野外大音楽堂で開催される「NAONのYAON」への出演も決定しています。ツアーで得た経験を活かしたステージになりそうでしょうか。
ワンマンとはまた違うガチャピンをお届けできると思います。ライブイベントは自分たちを知ってもらえるきっかけになるので、アピールしたい!と戦闘モードになるんですよね(笑)。特にアンジーはフロントマンなのもあってか、対バンがたくさんいると年相応のギラギラ感も相まってかなり攻め攻めになるんです。イベントならではのアンジーにも注目してほしいですね。
──15周年のアニバーサリーイヤー、休む間もなさそうですね。
制作して、レコーディングして、ライブして……。「今自分はどこで何を弾いてるんだろう?」と思うことがあります(笑)。TOKYO DOME CITY HALLは面白い仕掛けができたらいいなと思っていますし、12月にはGacharic SpinのサイドプロジェクトのDOLL$BOXXとのツーマンZeppライブもあるので、この15年間でGacharic Spinと出会ってくれた人は、何かしら今のGacharic Spinを観てもらいたい、曲を聴いてもらいたくて。
──確かに、少しGacharic Spinから離れているファンの方々にも、今の脂の乗っている状態を観てもらいたいです。
この15年間で出会ってくれた人もいれば、離れていった人もいて。そのなかで迎える15周年は、自分たちの集大成とも言える1年なんです。だからこれまで出会ってくれた人にアンジーとyuriがいるGacharic Spinを観てもらいたいし、「今ガチャピンこんな感じなんだな」と知ってもらいたい。その人たちなりの関わり方で、一緒に過ごせたらうれしいです。