音源も映像も、当日披露された18曲をすべて収録。Dr.kyOn率いる強力なメンバーのプレイと共に、堂珍嘉邦のボーカル・パフォーマンスを、たっぷりと、存分に、楽しめる。このDI:GA ONLINEでは、1年前にそのライブの模様をレポしているので、未読の方はそちらもぜひ。https://www.diskgarage.com/digaonline/liverepo/170627
その作品を自身のレーベルUZUから11月17日(金)にリリースし、11月18日(土)・19日(日)日本橋三井ホール、12月15日(金)・16日(土)有楽町I’M A SHOW(アイマショウ)と、都内で4本のライブが控えている堂珍嘉邦に、作品のことと、その4本のライブのことについて訊いた。
舞台をやると、いい影響しかない
堂珍 有観客のライブが5年ぶりだったんで。もっと早くできたかもしれないんですけど、世の中の状況をいろいろ考えて、慎重に慎重を重ねて、あのタイミングになって。それまで、配信だけで一方通行でライブをやっていたのが、ちゃんと目の前のお客さんがいて、その熱を感じて、っていうところで、とってもありがたかったのは憶えています。
作って、削ぎ落として、また新しいものを取り入れて進んでいくソロの10年間の中での区切り、っていうのもあったし。自分の中では、一回区切りはつけた、そういう位置付けのライブでした。だから、ここからまた少しずつ、変わっていくと思うんですけど。
堂珍 いつもなんですけど、自分の作品はあんまり観たくなくて。恥ずかしくなっちゃうので。でも観たら……ちょうど今、舞台もやっているので(ミュージカル『アナスタシア』9月12日~10月7日 東京公演、10月19日~31日 大阪公演)。やっぱり発声のしかたが違うので、「あ、前はこんな感じで歌ってたのね」と。この経験を踏まえて、今このライブをやった方がいいかも、と思っています(笑)。
歌の抑揚だったり、太い声だったり……いろんなものが、今だったら、もう少し違った感じでできそうだな、なんて思いながら。舞台をやると、毎回そうなんですけど、いい影響しかないので。太い声で歌うっていうことは、ポップスの世界ではあんまりなかったし。でも、声楽っていう意味では……その人の中から出てくる感情とかエネルギーを、ちゃんと歌の中で表現する、っていう、すごくまっとうで、すごくスタンダードで、すごく本質的なところなので。そういうのが勉強になります、舞台をやるたびに。
堂珍 そうですね、仁王立ちして歌う時も……舞台をやっていなかった時は、ライブで、何も考えずに、ただリズムに乗って、右に行ったり左に行ったり、一歩動いてみたりしていたんですけど。でも、舞台を経験すると、「今動いた方が伝わりやすいかな」とか、そういうことは考えちゃうかもですね。あとは、1曲に対してのアプローチも、どこがピークで、どこで抑えてとか、冷静に曲を分析することもできるようになったし。あえてそういう分析を、全然しない時もあるんですけど。
一生かけて、最終的に納得いくライブができたらいいかな
堂珍 いや、あんまり考えてなかったです(笑)。自分の曲でできたら、それがいちばんいいかな、と思ってたんですけど。でも、ライブで、いろんなメンバーと、いろんな曲をやっていって、自分にとってもっといいものは何かを選んでいく中で……自分のソロの曲で、ライブではやらない曲も増えましたし、逆に「このカバーは必要だな」っていう曲も増えました。そのライブのコンセプトを考えた時に、他人の曲の方がいい、という時もあるので。基本的にカバー曲は、自分が聴いて育っている曲の中から選んでいるので、思い入れが込められる曲だけなんですけど。
堂珍 (笑)。
堂珍 ohanaは、ケミ(CHEMISTRY)のギターをやってくれていた石井(マサユキ)さんが、(永積)崇さんのバックでよく弾いていた頃に……ハナレグミ、好きで、ケミのソロコーナーでカバーしたこともあって。で、ハナレグミを観に行きたいと思って、そしたら3人組でライブがあるって知って、「え、クラムボンの人がいるの? ポラリスの人も? で、ギターが石井さん? あ、行く行く」って、観に行って。そのライブでいちばん憶えてた曲が、「HEAVENLY」だったんです。CDを買って聴いても、やっぱりいい曲だし。
もともとは、ここ数年、プラネタリウムでライブをやるようになって(『Live in the DARK』という企画ライブ)、ああいう真っ暗な密室に合うだろうな、と思って。いつかはやりたい曲の候補、たくさんあるんですけど、その中の1曲でした。
もちろん、好きな曲だから、っていうだけじゃ無理なんですけどね。シンプルに気持ちに入ってくる歌詞じゃないと歌えないし、自分の声に変換した時に、この曲は合うだろうな、っていう勝算がないとやらないので。すっごい難しい曲も……あ、でも、「LILAC WINE」とか、すごい難しいけど。
堂珍 でも、ジェフ・バックリィが触ってたカバー曲は、どうしても自分で一回やってみたい、というのがあって(レナード・コーエンの曲をジェフ・バックリィがカバーしている)。ジェフ・バックリィ自体が、東京に出て来て好きになったアーティストのひとりなので。ジェフ・バックリィの映画、4~5年遅れて、日本でも上映されたんですよ(伝記映画『グッバイ・アンド・ハロー 父からの贈りもの』2014年10月公開)。そのトークイベントに登壇させてもらうというお仕事があったんですけど。その時に初めて、誕生日が一緒だってことを知って、ちょっとうれしかった記憶があります。
で、映画は、父(ティム・バックリィ)と子の話だったりとか、家庭を捨てて音楽をとるということとか……クイーンの映画もそうなんですけど(伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』2018年11月公開)……ありえない話に見えるかもしれないけど、すっごいリアリティがあって、自分の中で。好きですね。
堂珍 そうですね。だから、一生かけて、最終的に納得いくライブができたらいいかな、とは思っているので。そこに行き当たるまでは、定期的にやるんでしょうね、この曲は。
堂珍 広島のド田舎にいた頃、『ミュージックステーション』にSpiral Lifeが一回だけ出たんですよ。その時に「MAYBE TRUE」をやったんです。それで、いいな、と思ってアルバムを聴いたら、全然違う始まり方で──。
堂珍 それで最初は「あれ?」ってなって。でも「CHEEKY」とか、「STEP TO FAR」とか、たぶんSpiral Lifeの中でもバラード的な曲が、聴いていてすごいひっかかって。でも、ケミの方ではなかなかカバーできないですからね。ひとりでカバーってなると、最初の方に出てきやすい。やっぱり、10代の時にすごい好きだった、というのは大きいです。
11月と12月で、あきらかにカラーリングの違うワンマンを二回やる
堂珍 まあ、ライブ発信で新しいものを発表してみたいな、っていうのと──。
堂珍 ええ。で、11月と12月にやるんですけど、12月の方は、弦(ストリングス)がふたり入るんですよ。クリスマスライブっていうので、ちょっとコンセプチュアルなことを考えていて、ただのフルバンドではない形でやろうと。やっぱり弦の使い方が、ポピュラーなコンサートとかになると、ちょっと王道すぎて、ソロでやるなら変えたいなと。引き算方式で、世界観を大きくしないで、もっとシンプルな形にしてみたいので、それをやろうと。
で、11月の日本橋三井ホールの方は、昨年のフルバンドにサックスが入ります。だから、11月と12月で、あきらかにカラーリングの違うワンマンを二回やる、っていうのがポイントではあります。
堂珍 あのね、最大の飽き性なんですよ(笑)。なるべく同じことはしたくないので。同じ曲をやったとしても、それぞれのライブで全然違う感じになると思います。いかに新鮮にライブをできるか、っていうところが大事なので。メンバーも、同じことを繰り返す人たちではないし(笑) 。ちょっとでも鮮度がなくなって、演奏がだれそうになったら、すぐ変えますから。僕もそうだし。だから、1曲ずつ0から始める感じですね。