その頃はまったくなかったです。「神っぽいな」は『ラヴ』を作っている最中にできた曲なんですけど、『ラヴ』のテーマには合わなかったので収録せず、あのタイミングで公開したんですよね。でも「神っぽいな」は、『ラヴ』があったからこそできた曲だと思っていて。
もともと『ラヴ』がいろんなかたちの愛を表現してみようという趣旨のアルバムだったので、自分ではない視点に立って曲を書いていたんですよね。そのなかで他の視点に立って何かをすることは興味深いなと改めて思ったんです。あと、2020年や2021年あたりは攻撃的な感じのVOCALOID曲がちょっと流行っていたので、僕がああいったものをやってみたらどうなるかなという興味もありました。でもただ攻撃的なものにするのは違うかなと思ったので、“攻撃をすると攻撃をされる”というサイクルそのものを曲にしたのが「神っぽいな」ですね。
自分の客観的な視点だけでなく、自分以外の視点も入れていく制作でしたね。“こういう人っているよなあ。この人はどんな思考を持ってるんだろう?”と想像で書いて、“でもその考え方って、結局こういうことにもなるよね?”みたいに他の考え方をぶつけてみて……そういうふうに作っていくことが多かったです。
最近よくこういう人見掛けるなーというのもありますし、あとはすごいエネルギーだな、ものすごく強い感情だなと思うものに引っ張られることが多いですね。一体これはなんなんだ?と気になったものを分析するというか。
どちらもです。自分とは相容れないなと思う考え方に対して、その人と重なる場所はどこだろうと共通点を探していくと、“こういう部分は割と自分と近いけど、ここは自分の考え方と全然違うし、あんまりいいとは思わないな”と感じる部分が出てくるんです。でも自分の言い分も、こういう見方をすると良くないことだよなあ……というところまで考える。その繰り返しが曲になっていくんです。
小学校の時に読んだ藤子・F・不二雄さんのSF短編集ですね。宇宙人から見た地球人を描いていて、なかでも地球でいうウシと人類の立場が逆転した星の話の『ミノタウロスの皿』を読んだときに“当たり前だと思っていることにもおかしなことがたくさんあるんだな。こういうひねった視点で物事を見るのは面白いな”と思うようになって。それが創作の原点になっているんです。
そうですね。自分がやってきたことを過度に推し進めた結果のアルバムだなとは思っています。