きこえるきこえる、みんなの心の声が!(大槻)
──で、それがいったん終わって、このたび6年ぶりにまたやろうというのは?
大槻これね、コロナ禍前の2019年に、クラブチッタ川崎を1日、筋少が持っていて。「筋肉少女帯人間椅子、できないかなあ?」っていう話は、ちょっと振ったんだよね?
和嶋ああ、そうそう。いただきました。
大槻そしたらコロナ禍で、ダメになっちゃって。評判がよかったので、またやりたいっていう話をしていたの。
和嶋だから、音源を出してライブをやって終わり、っていうよりは、定期的にやっていこう、っていう感じだったんだけど。
大槻それで、今回の6月11日のLINE CUBE SHIBUYAっていうのは、筋少が持っていたのではなかったんですよ。某ミュージシャンがこの日を押さえていたんだけど、それが流れて、「筋肉少女帯、どうかな?」って話が来て。LINE CUBE SHIBUYA、大きいハコだし、何かお祭り的なことはできないか……(手をポンと打って)あ、筋少椅子! と思って。でもこの6年の間に、人間椅子はYouTubeなんかで、世界で知られるようになって。すばらしいですよ。ヨーロッパ・ツアー、やったよね?
和嶋はい。あのツアーの後に、コロナ禍になって。ギリギリ行けてよかった。でも、コロナ禍で2年以上、バンドも大変だったけど、やっと最近、本来の活動に戻って来た感じはあるね。
大槻そうね。お客さんはまだ、声出しちゃいけないんだけど。
和嶋そうだね。ちょっと前にツアーをやった感じだと、つい声が出ちゃった、ぐらいはフワッと許される雰囲気はあるけど。ただ、こっちから積極的にあおるのはダメ。歌わせたりとか。
大槻ボーカルなんかさ、マイクをお客さんに向けて歌ってもらうのって、ぶっちゃけ、休めるじゃないですか。あれができなくなって、どうしよう、と思ったので、マイクをお客さんに向けて、パッと戻して、「きこえるきこえる、みんなの心の声が!」って言うの。
和嶋 (笑)。新しいスタイルですね。マネしたくなるわ。全然お客さんが歌わなくても──。
大槻「きこえるきこえる、心の声が!」(笑)。
6月11日は、我々がまさに怪獣になろうとしている瞬間に立ち会える(和嶋)
──そういえば、だいぶ前から大槻さん、筋少のような音楽スタイルは年齢的にどんどんきつくなる、とおっしゃっていましたが。5月12日のクラブチッタを観たら、大槻さんが座っている時間、あきらかに増えましたよね。
(その時のライブレポはこちら「筋肉少女帯、35周年カウントダウン・シリーズ・ライブ、スタート! 1本目の5・12クラブチッタをレポ!」)
大槻僕はもう、自信を持って座ることにしたんですよ。お客さんも座ってもらう時間を増やして。それにはまず、出演者が座ったら、お客さんも座れるだろう、という心遣いもあって。
和嶋座るって、イスを持って来て座るの?
大槻そう、わりとゆったりめの曲とかでは、座って歌う。そういうのも自然にできるようになってきた。
内田今からやっておけばね、長期的展望で。
大槻この6年の間に、新しいお客様もいるけれど、その分、歳を重ねたお客様もいるので。気遣いも必要だなと思いますよね。
和嶋それはある。演奏時間があんまり長いのは、お客さんもきついだろうな、と思ったり。特に今、ライブでお客さん、自分の位置から動けないじゃないですか。あれね、動くと疲れないんですけど──。
大槻そうそう!
和嶋じっとしてるのがいちばん疲れる。
大槻前川清ってすごいよね。直立不動で歌うのって、すごい大変なことだよ?
和嶋(笑)そう、すごい。普通、五木ひろしになるんだよ。動いてるほうがラクだから。
大槻あと、筋少椅子だと、歌う人がたくさんいるので。僕は客観的にライブが観れて、すごい楽しいんですよ。
和嶋私もそうです。
大槻僕ね、一緒にやってすごい思ったのが、人間椅子はもちろんすばらしいハードロック・バンドである以上に、歌力のバンドで。ハーモニーがすごくいいのよね。筋少は、各自の歌声がハーモニックじゃないというか、みんな声質が違うから。
内田誰も合わせようとしてない。人間椅子はトリオだから、3人で構築していくバンドなので──。
和嶋まあね、音数が少ないので、声も出さないと、スカスカになるから。
内田で、筋少椅子になると、いきなりギターが3人、ベースがふたり、っていう。
和嶋そうそう。それも楽しみなんだよね。
大槻ほんとに、筋肉少女帯人間椅子が、またできるっていうことが、純粋に楽しみですよね。6年経って、みなさんがどういうふうになっているのか。変化があるのか、何もないのか。
和嶋お客さんが?
大槻メンバーも、お客さんも。
和嶋同窓会の感じなんだよね、俺としては。
大槻そうだね。まさにそうだわ。
内田もうみんな、アラシスに──。
和嶋そうだね、50より60の方が近いもんね。
内田アラシスのバンドの力を見よ! という。
大槻ほんとにね、我々の中高生時代だったら、ミッキー・カーチスさんぐらい?(笑)。
内田それ以上でしょう。いないんじゃない? 僕らが子供の頃、この歳のバンドマンは。
大槻何かの機会で来る若い人は、ちょっとそういう、オーパーツみたいな(笑)。三葉虫を踏んだ足跡の化石みたいな、すごいものが観れる。
和嶋普段観れないものが観れますね。
大槻みうらじゅんさんが「ロック・ミュージシャンは、歳をとると顔が怪獣っぽくなっていく」っていう話をしてたじゃない? 僕も近年、いろんな同世代のミュージシャンと一緒にやって、ステージで見ると、みんな怪獣化してる。
和嶋怪獣化してる! それはわかります。
大槻楽屋とか、怪獣の集まりみたいな。
和嶋あと性別も、わかんなくなっていく。
大槻はははは! そう、わかんない!
和嶋この人は男なのか、女なのか。だから我々は、性別も超えてる(笑)。
大槻そうだね、ほんと。
和嶋若い頃、海外の先輩ミュージシャンを見ると、怪獣っぽい感じしたけど。ふと気がついたら、我々もだいぶ近くなってる。
大槻なってるんですよ。だからちょうど過渡期ですよね、人間から怪獣へなっていく。
和嶋同年代の音楽やってる人でもさ、一般人みたいな外見の人もいるじゃないですか。私、個人的には、「まだまだだな」と思うもんね(笑)。
大槻うん、出て来た瞬間に、「うわ、なんだ!?」っていう。お爺さんかお婆さんかもわからない。
和嶋そうなってこそ本物でしょう。それを目の当たりにできるわけですよ、6月11日に来ると (笑)。我々がまさに怪獣になろうとしている瞬間に立ち会える。
大槻うん、すばらしいと思う!