そうです。「今度会える時までに自分磨きをしていてね」ということですね。「GOOD GIRL」はちょうど、去年やるはずだったオリンピックの時期に書いていたんですよ。だから“金メダルを超えよう”という歌詞が出てくる。コロナとかオリンピックとか、時事ネタを入れて書いて、グッズを買ってくれた人のためにデモテープの形で配ったのが、9月ぐらいでしたかね。その頃作った曲で、アルバムから漏れた曲もあるんですけど、「GOOD GIRL」は、コロナを忘れないためにも、1曲ぐらいはコロナのことをはっきり歌った歌詞があってもいいんじゃないか?ということで、入れました。
これも俺一人では書けなかった歌詞で、野口圭と、ラップにTEEDA(BACK-ON)くんが参加してくれてます。レフティが紹介してくれたんですけど、TEEDAくんとは変な縁があって、俺が18歳で家を飛び出して一人暮らしをしたのが、足立区の佐野というところで、TEEDAくんがミュージシャンの仲間と一緒に暮らしていたのも、足立区佐野なんですよ。年齢は9個下で、「SURFACEっていうかっこいい地元の先輩がいる」って、いつか仕事をしたいと思ってくれていたらしいんですけど、レフティのオンラインサロンで初めてコラボして、「このラップ誰? かっこいいね」ということになった。「I and I」が2回目のコラボですね。まだ生では会ったことがないんですよ、データのやりとりだけで。
「I and I」は、アルバムの最後に作った曲です。ジャケットのデザインの、四角でくくられた「and」をパッと見た時に、「I and I」というふうに見えて、野口に「『I and I』という歌詞を書きたいんだけど」って振った曲。調べてもらったら、「I and I」はレゲエのスラングで、「私たちはみんな同じ」というような意味があると聞いて、「これはいいわ」ということになって、書いていったんですけど。野口が「パッと見てわかりやすい歌詞にはしたくない」と言って、“マッシュルームorバンブー?”というのは、〇〇〇〇〇と××××××のことなんですけど。
どっちが好きか?とか、よく論争になるじゃないですか。それが面白くて、僕が2番で“レッドorグリーン”と書いたのは、□□□□□と△△△△△なんです。しょーもないですよね(笑)。
そういうものも入れつつ、“9条”“ 原発”“ カジノ”とか、シリアスな問題も入れて、なかなか攻めてる歌詞になったと思うし、それがアルバムのど真ん中の6曲目にある。「I and I」が真ん中にあるのが、自分でも面白いなと思います。このアルバムの中心がこれですね。
去年、SURFACEの『PASS THE BEAT』というアルバムを作っている時に、マネージャーから言われた一言があるんです。「コロナ禍でみんな疲れてるから、応援歌が欲しい」「応援歌といえば椎名慶治だ」と。「1曲チャレンジしてもらっていいですか?」と言われて、作って聴かせたら、「いい曲だから、椎名ソロとしてデジタルリリースしましょう」と。それが「KI?DO?AI?RAKU?」で、思っていたよりもいい形で話題になってくれて、オリコンミュージックストアというところだけで配信したら、デイリー、ウィークリー、マンスリーチャートで1位、年間チャートで10位になった。「みんなが求めてくれていたんだな」と思って、アルバムにも収録することになった時に、アルバムバージョンとしてももう少しロックで元気なサウンドにしたんですけど、最初に思っていた「SURFACEとの線引き」という意味で言うと、SURFACEに近い曲だから、最後に入れたんです。ほかの曲とは混ざらない、異質な曲なので。それがエンドロールのような役割になって、いい流れが作れたと思います。
SURFACEがいる世界線の中での初めてのアルバムなので、本当の意味でのソロのファーストはこれなんじゃないか?と思います。今までは、ソロをやりながらも、ファンの人たちに「SURFACEを見せてあげなきゃ」という思いがどこかにあって、SURFACEっぽい曲を必ず入れていたんですよ。それを入れないでいいという意味で、本当に椎名慶治の個人名義のアルバムができたなと思います。短いアルバムなので、俺のことを知らない人も「人生の40分間だけ俺にくれないか」と思いますね。嫌だったら二度と聴かないでいいから、とにかく聴いてほしい。
あと一つ、コロナのせいで気づかされたことがあって。自分が思っているよりも、自分は音楽が好きだったんだということを、コロナのせいで気づかされました。ある時期から、音楽が好き嫌いではなくて、「やるしかないからやる」という感じになっていた気がするんですよ。だからといって手抜きはしないし、本気でやってきましたけど、コロナになってから「人前でギャーギャー歌いたい。ギャーギャー返してほしい」と思うようになった。「そう思うってことは、お前、音楽が好きじゃん? ライブが好きじゃん?」と思いましたね。ライブが嫌いとか言ってたくせに。それをコロナのせいで気づかされるのは、ちょっとムカつくんですけど、そういうものもこの1年半で味わいました。だから、(コロナが)これで終わってほしいですね。「もう気づいたんで、いいですか?」って。
お客さんはソーシャルディスタンスを取って、マスクをしたまま見てもらうので、今までのライブとは違うんでしょうけど、「来てよかった」と言われるような、魔法をかけられるライブにしたいと思います。レフティも参加してくれて、今回のアルバムをどこまで再現できるか?にチャレンジするので、楽しいライブになればいいと思っています。
オリジナルの『RABBIT MAN』はすべて売り切れて、今は手に入りにくいので、「だったらリマスターにしましょう」「『ON』と『PASS THE BEAT』で世話になったジョン・デイビス(ロンドン、メトロポリススタジオの世界的エンジニア)に、バッキバキの音にしてもらいましょう」と言ったら、本当にバッキバキになった(笑)。リマスターという言葉は聴いたことあるけど、具体的に何ですか?と言われても、わからない人たちがいっぱいいると思うんですよ。そういう人たちに「リマスターとはこういうものです」とわかってもらえる作品になっていると思います。僕が説明するよりも、聴き比べた時に「こういうことが起きるんだ」って、音から発見してもらえればうれしいですね。『and』とは全然違うサウンドなので、楽しんでもらえればと思います。
PRESENT
直筆サイン色紙を1名様に!
※転載禁止
受付は終了しました