(笑)。わかんないですけどね。ただ、確かに、今おっしゃったみたいに、コロナがなければ、今頃はもっと大きいところでライブやってるんですよ、プラン上は。そのとおりに行ったかどうかは、わかんないですけどね。
で、コロナで、それが丸々1年間、後ろ倒しになって、1年前のことを今からやるっていう感覚なんですけど。ただ、この1年間って、もうね、とんでもない変化があったんですよ、僕に。
もう、とんっでもない! これは!!
絶対、ここ1年、空いてた方がよかっただろう、って確信を持って言えるぐらい、気づきがあったんです、曲作りに関して。
これ、言葉にするのがすごい難しいんですけど……新曲の「ポニーテイル」を聴いてもらったら、わかるようなことかもしれないんですけど──。
自分の中の、使う脳味噌を変えたんですよ、完全に。これねえ、マジで言葉にはしづらいんですけど……曲に表れてるとしか言いようがないんですけど……単純に、頭ん中で想像する曲の終着点が、もう変わってるんですよ。この1年、ずっと退屈な思いをさせられたことによって、何か切り替わったんでしょうね、線路が……まあ、難しい、これは。楽曲を聴いてくれとしか、言いようがない。
びっくりしますよね? 僕もびっくりした。でも、これを素直に書けるようになったりとか、歌えるようになったっていうこと、としか言いようがないかな、この1年の変化は。
だから、自分のどこを歌うか、自分の中のどの自分を曲にするかが、変わったんですよ……これは難しい。無理無理、言葉で説明ができない。
いや、なんつうのかなあ……この、心の扉の、前と後ろ、ぐらいのレベルで違う……いや、違う扉、もはや。今まで開いてなかった扉を、思いっきり開けた感じです。
曲を作ってる中で、今までずっと扉を開けっ放しで、音楽的シナプスをフル稼働させて曲を作る、みたいなことをやってきて。それが楽しかったんですけど、この1年間で、それをやる意欲が、ちょっとなくなっていって。
っていう時に、「あれ? 隣にも扉あるぜ」って気づいたんですよね。それを開けようと思ったら、意外とドアが重かった。で、その扉に、何回か開けようとした痕跡がある、でも開けられてない。それを思い切って開けきった、みたいな感じ? ……これ、いちばんわかりやすい!
めっちゃ好き、僕、この曲。なんて言うのかな、だいぶ時間を戻して……小学生の頃って、SMAPとか聴いてたわけですよ。モーニング娘。とか。その曲をいいって思う感覚で、自分の曲をいいと思えてるんですよ、今。
そのあと音楽的過渡期を迎えていく中で、いろいろ知っていった音楽的素養とか、音楽史とか──。
そういうものを踏まえた上で、それに刺激された脳味噌で作った曲を、いいと思う感覚と、もう違うんですよ。それがいいことなのかどうかはわかんないけど、ただ、僕にとって新鮮っていう。楽しみですね、だから。
めちゃくちゃめずらしい。ラブソング自体、人生で3曲目ぐらいじゃないですか? しかも、愛を歌った時とか、恋を歌った時、必ず僕、別れてるんですよ、曲の中で。
だけど、今回は別れてない。それで言ったら初めてです。前向きに恋とか愛情を歌えてる、っていうのは。それも、そのドアが開いたから、やれるようになったことです。
だから、ある意味、タガが外れたんですよ。外れた結果、ここにいるんですよ。丸くなろう、落ち着こう、ってここに着地したんじゃなくて、はじけきった末にここに着地した、という感覚はありますね。おもしろいっすよ。
どうなんですかね?
そうですね。あ、でも、意外と、アルバムの中の曲で、こういう曲って実はあるんですよ、僕。表に出す曲がこういう曲じゃなかった、というだけで。
今回、それをリード・シングルとして表に打ち出す……だから、変化というよりは、前を向いた感じというか。ビッケブランカを音楽的に見た時に、斜めを向いて笑ってたような奴が、ようやく正面を向いた感じ……ようこんなにいろいろ、喩えを思いつくわ。
ビッケブランカが正面を向いた感じ。照れるぐらい正面を向いたというか、自分で自分に対峙する時に。だからよく顔が見える。