──踊れるダンスナンバーが続く中、8曲目の「休日の過ごし方」からカラーが変わりますよね。
サビから4つ打ちになるところでダッキングという処理を行ったんです。あれが上ものにうっすらかかっていることで、ニューミュージックっぽい曲だったのが随分印象が変わって、僕自身も勉強になりましたね。
──「隣で寝てる人」は1音目から脳内に満月が浮かび上がるような、引き込まれる音でした。
メロウな曲ですよね。ただ生演奏でやってもつまらないから、「ここでトラップっぽいものが入ると良いかな」とか「ジャズっぽい曲だから、ドラムはスネアを打たないようなリムと幻想的に聴こえるようなシンバルかな」とか。打ち込みのハイハットが先にあって、その後にドラムでどうアプローチしようか?っていう作り方をしていったんです。うまい具合に生音とドラムが絡み合って良かったです。
──ちなみに今作が50代になって1発目のアルバム作品となります。去年は「もうすぐ50歳になるけど、あと何枚アルバムを作れるんだろうと考え始めた」と言ってましたよね。
ああ、そうですね。
──僕は30代なんですけど……人生の後輩としては、そういう終わりを考えるようになってくるのかと思って。
多分、数字のデカさにビックリするんじゃないですか。40代のときはあんまり考えなかったけど、50歳って聞くとビビりますよね。
──あぁ、そういうものですか。
ある先輩ミュージシャンが、突然高いギターを買って「あと何年ギタリストを出来るか分からないから、今のうちに好きなギターを買っておこうと思って」と言ってたんです。結構前の話だから、当時の僕は「へぇ、そういうもんなんだ」と思っていたら自分もそういう年齢になって。
──年齢との向き合い方が変わったと。
2年に1枚アルバムを出したとしても、60代までに5枚しか出せないですからね。それって少なくないですか?
──うーん……どうなんですかね。
だから、とりあえず出来不出来を気にしないで数を出さないとダメだなと思って。それこそ曽我部(恵一)くんってすごい数の作品を出していて。インスタグラムを見てると「またレコーディングしてる……」みたいな。曽我部くんがどういう気持ちで作っているのかは知らないけど、ああいうペースは見習いたいと思いますね。
──50代になった今、新たに歌いたいことはありますか。
今、考えているのは自分が痴呆していくのを歌にしたら面白いかも、という気はしているんです。
──痴呆していく歌ですか。
『ジョーカー』という映画で、アーサーが黒人女性と付き合っているわけじゃないけど、付き合っているつもりになって妄想するじゃないですか。ああいう風に付き合っている状態と付き合ってない現実が、交互に歌詞の中に出てくると不思議でヤバイ人の歌になって面白いかなと思うんですよ。……いや、どうかな?そういうのを歌にして良いのかと考えたら、それで傷つく人がいるかもしれないけど。
──過激なものほど人を惹きつけるけど、その分リスクも大きい。そういう配慮は昔からあったんですか。
いや、昔は全然ない(笑)。だけど、近年は今まで可視化されなかったものが見えてくるじゃないですか?例えば同性愛をからかうような歌は絶対に無理なわけで。物を作っている人間は「これによって誰かが傷つくかもしれない」というのを常に意識しなきゃいけませんよね。歌の題材は山ほどあるけど、ポップミュージックとして魅力的なのかは別の話で、そこが難しいんですよ。
──もっとお聞きしたいんですけど、残念ながらお時間が……。最後はツアーのお話も聞かせていただければと思います。
ライブとなればメンバーがいて、サポートもいて、いろんな意志が同時に1曲の中で表現されるわけです。キーボーディストと同期も入るので、アルバムの印象は損なわずに熱い雰囲気の演奏になるかと思います。それに今回は札幌、仙台、広島としばらく行ってなかった土地でもライブをさせていただくので、是非とも足を運んでいただけたらと思います。
PRESENT
直筆サイン入りポスターを3名様に!
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