ステージに立ったときに、オーディエンスと同時に経験しながら生まれる歌
──では、具体的に……鈴木正人(LITTLE CREATURES)さん、未央ストリングスと一緒にやろうと思ったきっかけを。
永積内容はここからなんですけど、この企画でと思ったときに、正人さんや未央さんがバッと思いついて。
──直感ですよね。
永積それしかない(笑)。まあ、未央さんは自分のレコーディングでもお世話になっていますけど、星野源ちゃんとかやっていたり、現代的な音の感覚もすごくわかっているしね。僕の場合、アイデアがギリギリになって出てくることも多いし、関係ない無駄な話をする時間があったりしてこそライブが活き活きしてくるものだから、同じ気持ちでアレンジしてくれる、フレキシブルなことを一緒に楽しんでやってくれる信頼関係というのが大事で。正人さんも未央さんも迷いなくでしたね。
──スカパラさんとは、もうおなじみというか。
永積そうですね。この数年何度も客演で呼んでいただいていて。スカパラって、2005年に「追憶のライラック」で初めてやらせてもらって以来、モチベーションが全く変わらないんですよ。それって単純に感動するし奇跡的なことだと思っていて。去年は「RISING SUN ROCK FESTIVAL」でスカパラのライブをソデで観ましたが、その時のライブは音の届き方が違った。スカパラってメキシコでもライブをするようになっていて集客もすごいんですよね。メキシコってタフな国なので、そこでどう受け止められているのかって話をワクワクして聞いたりしていたんですけど、世界を見ている人たちってこういう音になるんだなって。スカパラの背中越しに客席のほうを見ていて、朝が明けてくる景色を観ていたら、その視線は、日本のオーディエンスだけじゃなくて海の向こう側まで見ていて、感動でしたね。そういう人たちとやれるというのはこの上ない経験ですよ。一緒に音を出して、旅をしているような感覚になれる。それは未央さんのストリングスとやる経験も同じで。その地に行ってみないと気づけない響きが絶対にあって。練習して練習して気づきました、どうでしょう?ということではなく、そのステージに立ったときに、オーディエンスと同時に経験しながら生まれる歌なんだろうなと。「今、この瞬間にたどり着く」歌というか。
──まさに「THE MOMENT」ですね。そこで何を得るのか。
永積そう。だから、一緒にやる人たちとも仕事みたいな感じではできないし、その瞬間のオーディエンスの空気とか、会場の音の響きとか、メンバーのエネルギーでどんどん変わっていくべきもので、その日のその会場で鳴った瞬間に、自分も何かがわかるんだろうなって思うんです。なんか、しゃべっていたらワクワクしてきちゃったな(笑)。
──そういう永積さん自身が楽しんでいることが、伝播していくという。
永積ああ、ついつい昔のミュージシャンの話になっちゃうんですけど、僕はサミー・デイヴィスJr.をすごくリスペクトしていて。彼の60周年を記念したショーの映像があるんですよ。そのショーって、もちろんたくさんのオーディエンスに向けたものなんだけど、タップダンサーのグレゴリー・ハインズと一緒に「どれだけ好きか」ってだけで踊っているシーンがあって。その感じとかすごく好きで。
──大好きがダダ漏れているというか。
永積そうそう。ビルボードで観たジミー・クリフとかも、400人くらいの箱なのに「ええー!!スタジアムの感じで歌ってるけど、大丈夫?」みたいな。そういうのを観ると泣きそうになるっていうかさ。いい意味での勘違いをしながら音楽をやれたらいいなって思っているんですよね。間を読んでないっていうか。あふれているような。自分がそうなれるとは思っていないけど、そういう人を観るのがすごく好きだし、そうなっていいんだって思えるというか。
──いやいや、永積さんもそういう感じ出ていますから。先日も自分が感動したからって、米・西海岸の旅先で録ったトイレの流水音をラジオ(永積がパーソナリティを務めるインターFM「レディオ デ チャカチー」)で流していましたけど(笑)。
永積ああ、猫が踏みつけられる鳴き声のような音がするっていう。
──感動したから、とにかく「聴いてよ!!」があふれていて。でも「トイレの音ラジオで流してますよ」って突っ込みたくなる(笑)。あの番組はそういう好きのマインドで全てが進んでいてあふれているから。
永積あはは、そうか…、確かにそうかもしれないですね(笑)。
今回のライブは自分の“I Tunes”っていう感じかな(笑)
──リスペクトの話が出ましたが、「THE MOMENT」ではお好きな曲のカバーなども盛り込まれると?
永積もちろん今まで自分で作った曲も演りつつ、自分が影響を受けたような曲のカバーもやってみようかなと思っています。そこをいい感じに混ぜていけたら楽しそうだなって。そういう時に思い出すのは、SUPER BUTTER DOGを休止してハナレグミを始めた最初のライブで。その時、自分が小さいころに影響を受けていた歌をカバーしたなって。そこに自分の曲も混ぜてやったんですよね。
──ルーツを見つめ直すようなところもあるんでしょうか?
永積見つめ直すというより、自分としては今までレコード会社がリリースしてきたアーカイブの中にものすごくいい曲がたくさんあって、新しいものが出てくるのと同じように昔の曲も表に出てくればいいなと思っているんですよ。「僕はこういう音楽を変わらずすばらしいと思うんですけど、どう思う?」みたいなことかな。決して「懐かしいよね!」ということではなく。
──サブスクやYouTubeみたいなもので、アーカイブと今の音楽を並列にとらえるって今っぽいですよね。時代は関係なく楽しむことが当たり前の状況なので。
永積だから、今回のライブは自分の“I Tunes”っていう感じかな(笑)。でも、そういう感覚は随分前からあって。僕らくらいの世代は、変に「これ古いよね、新しいよね」みたいな時間軸があるけど、今の若い世代の子たちは、昔も今も、もっと並列にとらえている。そういう音源として気軽に時代関係なく聴ける中で、肉体として聴くことも大事だよって思うから、自分が日々考えている「歌ってこういうことだと思うんだけどな」っていう感覚をぶつけられたらと思っています。毎日、どういう曲をやろうかなって絶賛考え中なんですけどね!
PRESENT
どっかーん Tシャツ [ホワイト]を3名様に!
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