ツアーのコンセプトはすべての大人が子どもになり、子どもは大人になると言う状態を作れたら
——一青さん自身の歌うということについても聞かせてください。一人目が生まれた後は、かなり肉体トレーニング的なこともやって回復に努めたという話をされていましたが。
そうなんですけど、しっかり腹筋が出産前の状態に戻る前に次の子を出産したので、筋肉は伸びてる状態のままなんですよね。なので、以前は筋トレだけで復活させようとしてたんですけど、今はピラティスもあわせてやってます。
——一人目が生まれた後のお話では、出産前の状態に戻そうとするのではなく、出産を経た体で出せるベストの歌を目指すほうがいいかもしれないという話もされていて、だから、出産前を第1期とすれば、今は第2期の歌を聴かせようとされているのかなと思ったんですが。
最早、原型がどうだったのか思い出せないくらい体が変化して、声も一番パワーがあって伸びてた時代と比べるとおそらく全然違うと思うんです。ただ、出産を経て声の低音成分が増えたんですよ。そういう変化を楽しんでいる感じですね。多分、時間をかけてゆっくりトレーニングしていけば、高い音域を出すのに必要な頭蓋骨を上のほうへ引っ張る感じの筋肉も戻ってくると思うので、焦ってはいなくて、最近は“今の状態で楽しいと思える曲を歌おう”と考えてますね。それに歌自体についても、自分の今の環境が小難しいことを考える状況ではないので、非常に明るくてわかりやすい音楽を好むようになっていて、ツアーのセットリストも明るい選曲になってますね。カバー曲もたくさん入ってるんですよ。
——選曲も、直感的に決めていったんですか。
選曲もそうだし、内容的にもそうです。コンセプトは、私が飼い犬に手を咬まれて「もう犬に噛まれたくない」と泣きべそをかいていたら、息子に「じゃあ、僕と手を繋いで逃げればいいんじゃない?」と言われたんです。「大人はみんな、子どもになったらいいんだよ。逃げよう」って。そこで私は“なんて素敵なことを言うんだ”と思って、それでツアーのコンセプトはすべての大人が子どもになり、子どもは大人になるという状態を作れたらいいなと思ったんですよね。なので、子どもが魔法の剣を持ったり変身したりとかしてスーパーヒーローになる、あの感じを再現できたらいいなと思ったんです。鬱々としている世の中を、魔法をかけてキラキラさせるみたいな。
——とすると、地道な準備を重ねた一青さんが、ステージに立つと…。
誰よりも子どもになる、と言うか、大人は全員、元々は子どもだったわけだから、そこに還るということなのか。とにかく子どもを見ていると、天使の生まれ変わりみたいな存在だなと思うから、私もそのようなものになり、見ている人たちにもそういう気持ちになってもらおうということですね。わかりやすく言ってしまえば、童心に帰ってください、ということになるのかもしれないですが。で、来てくれた子供たちは、本当は私たちよりもずっと大人なのかもしれないということになるんだと思います。
——そういうコンセプトのステージに立つ時、一青さんはどこかで切り替えて臨むことになるんですか。それとも、普段の子供さんたちとのコミュニケーションと地続きな感じなんですか。
いま思いましたけど、子どもと一緒にいるときはけっこう芝居がかってますね(笑)。「怪獣と戦おうよ」と言われた時に、大人の感覚で「はい、はい」とおざなりな感じでやってると向こうは乗ってこないから、こっちも本気でやるんです。すると、結果お互いにエンジョイできるんですよね。それと同じような感覚で、今回のツアーは臨むことになると思います。「星の王子さま」みたいな少年のイメージですね。
——普段の子供たちとのやり取りと地続きな感じで臨むとすると、“お客さんの前に出ていくぞ”みたいな気負いは無くなるんでしょうか。
というか、ステージの前後に授乳してますから、そういう意味でも地続きですよね(笑)。それに、バックステージに子どもがいれば、ずっと本気で遊んでますからね。
——一人目が生まれた後のコンサートを経験して、思っていた以上にON/OFFをちゃんと切り替えられる自分を発見したと話されていましたが。
でも、今はもう切り替えられないくらい、ずっとわらわらしてるからなあ(笑)。
——ON/OFFの切り替えと言うより、子どもさんたちとの時間がより普通になってきたと言うか、比重が大きくなったということでしょうか。
そうですね。と言うか、子どもに泣かれたりすると私も本気で泣いて、「そんなふうにみんなが泣くんだったら、ママだって泣きたいんだよ!エエーン!」となったりすると、子どもたちがスクッと大人になって「まま、泣かないで」と言ってたりしますからね(笑)。
——まさに大人と子どもが入れ替わるんですね。
逆転します。オモチャを投げたりしてると、「ママも投げたいんだよ!」と投げたりするんですけど、そうすると黙々と2歳の長女が拾って回ってたりするんですよね(笑)。
——誰でも普段の生活があって、そこからスイッチを切り替えてアーティストとしてステージに立つという成り立ちになっていると思うんですが、今の一青さんはライブをやったりするアーティスティックな部分も飲み込むくらい普段の生活が大きくなってるんでしょうね。
前は、夢をきちんと見せてあげられるといいなと思ってやっていたのが、実は子どもが生きている世界そのものが夢の世界というかディズニーランドみたいな状態で、大人だから冷めた目で見たり、理屈で割り切ったり、時間で区切っていったりするんだけれども、子どもと混ざってしまうと、意外と子育てというのは乗り切っていけるし、子育てだけでなく日常自体も楽しくやっていける感じがしてるんです。だから、わざわざ肩肘張って「さあ、今からショーをご覧ください!」というのではなく、この子たちができてるんだから、そのままステージにのせられたらいいですよねって思って。すごく思うんですけど、子どもたちが選ぶ音楽や踊っている姿を見ていると、楽しいものをすごく正直に選んでいますよね。それと同じように、勉強になるからって本を読んだりするんじゃなくて、楽しいと思うものだけを、その衝動に忠実に取り込んでいって、それを自分なりに表現していけば、多分お客さんも楽しんでもらえるんじゃないかなあって。だから、私が誰よりも楽しいという状態になれたらいいなと思います。
PRESENT
直筆サイン入りツアーポスターを3名様に!
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