フリーライブを各地で開催し、昨年はクラウドファンディングでフルアルバム『他人旅行』を制作。今年2月に開催した東京キネマ倶楽部でのワンマンライブもソールドアウトと、その行動力で自身の音楽を老若男女に広め続けている4人組バンドGOOD BYE APRIL。彼らが10月に3年ぶりの全国流通盤となるミニアルバム『I MISS YOU SO LONG』をリリースし、渋谷duo MUSIC EXCHANGEにてワンマンライブ「I MISS YOU」を開催する。彼らの強みであるチューリップ、大瀧詠一や小田和正などに代表されるニューミュージック/ポップスの要素を継承したサウンドメイクがより研ぎ澄まされただけでなく、フロントマンである倉品 翔のコアな部分が表れた新作。いったいこの背景にはどんな想いと出来事があるのだろうか?
──GOOD BYE APRILはその行動力から「DIYなバンド」と言われることが増えてきました。その意欲はどこから来るのでしょう?
倉品 翔(Vo,Gt,Key)きっかけは3年くらい前に「僕らの音楽はお茶の間の人たちに響くんじゃないかな?」と思ったことですね。メディア露出以外にお茶の間の人たちに届けられる場所ってないかな?と考えて、「ショッピングモールでフリーライブをする」という案が浮かんだんです。
延本文音(Ba)「届けたい人たちに自分たちから会いに行こう!」という気持ちから始めました。公園や広場という環境でのライブは、歌もののポップスをしているわたしたちの音楽性とも親和性が高くて。その結果お客さんには熱心な方やファミリーの方々も増えて、2017年に開催した渋谷マウントレーニアホールでのワンマンがソールドアウトして――自分たちの起こした行動が結果に結びついたことで、自信が湧きました。
──今年2月に開催した東京キネマ倶楽部のワンマンライブもソールドアウト。どうやら様々な工夫が盛りだくさんのライブだったようですね。
延本いっぱいわがままを聞いてもらったてんこ盛りライブでしたね(笑)。紙吹雪を降らせたり、MVで使ったマットを敷いて可愛くしたり、ゲストミュージシャンにホーンセクション、パーカッション、キーボードを入れて……何から何までフル装備!みたいな。
倉品どうしてもキネマ倶楽部のあのサブステージを使いたくて。「生のホーンセクションがあのステージで吹いたら絶対にかっこいい!」と思って、ダメもとで『他人旅行』に参加してくれたゲストミュージシャンにお声掛けをしたんです。そしたらみんな快くOKしてくれて。
延本アルバムにゲストボーカルで参加してくれたコレちゃん(コレサワ)も、ただ観に来るだけの予定が、コレちゃんから「わたしもライブで歌ってもいい?」と言ってくれて、ライブに出てくれたんです。
倉品電飾も自分たちで調達したよね?
延本そうそう!『他人旅行』のレコ発ということもあって、「豪華客船」や「昭和のTV」みたいなイメージにしたかったので、照明さんと一緒に電飾を秋葉原まで買いに行って、舞台監督さんも交えて装置を作って(笑)。みんな「GOOD BYE APRILのことが好きだから」って気持ちで動いてくださって、舞台監督さんの家にある船の模型を借りてアンプの上に置いたり、やりたい放題!
倉品自分たちの活動のなかで生まれた縁をフル動員した、DIYの結晶みたいなライブでした。
──その映像が、3年ぶりの全国流通盤である今作『I MISS YOU SO LONG』の初回限定盤の特典なんですよね。ヒストリーを聞いていると、このタイミングでこの作品が全国リリースされるのは、感慨もひとしおです。
倉品本当にそうですね。「次はどんな動きを見せていこう?」と思っていたところに、「全国流通しようよ」と言ってくださった方がたまたま現れて。
延本その声を掛けてくださったレーベルの方も、『他人旅行』のツアー中にたまたま対バンさんについてきていた方だったんですよ。あのアルバムを作っていなかったら出会ってなかったと思う。……「もうほんと無理だ」と思った時に必ず救いの手があるんです。
倉品その方が「『I MISS YOU SO LONG』と一緒に『他人旅行』も試聴機に入ってくれたらいいね」と言ってくださって、『他人旅行』も同時タイミングで全国リリースできることにもなって……どんどん話がとんとん拍子で進んでいったんです。
──話を聞けば聞くほど驚きです。ご自分たちで動くようになってから、バンドにどんどんいい縁が巡っているんですね。では今作で倉品さんの持つセンチメンタルなムードが基盤になったのにはどんな理由があるのでしょう?
延本これまでずっと4人で屈託なく意見を言い合って作品を作り続けてきたので、また同じ方法で制作するのも面白くないよね、と話していたんです。『他人旅行』はわたしのやりたいイメージがたくさん広がっていったのでわたしの作詞が多いんですけど、今回はらっしー(倉品)の制作意欲がめちゃくちゃ燃え滾っていたので、じゃあ今回はらっしー主導で作っていこうと。
倉品僕らはこの9年ずっと「前回と同じことをしたくない」と思っていて、作品を作るたびにその反動が生まれるんですよね。みんなの意見を聞きながらかたちにしていくのが好きだったので、自分のコアの部分を剥き出しにするのは、じつはあんまりやってきたことがなくて。だからフロントマンとしてもこういうことに挑戦するタイミングかなと思いました。「自分にしかできないことはなんだろう?」というのをふるいにかけていった結果残ったのが、センチメンタル、ノスタルジック、弾き語りの状態で聴いてもいい曲という3つなのはずっと思っていたことでもあったので、ここにフォーカスするしかないなということで、この作風になりましたね。
──倉品さんは「あくまで主役は楽曲。いい曲ならば自分は主人公である必要はない」というスタンスだったけれど、今作には明らかに倉品さんが楽曲の主人公である曲が多いです。
倉品いままで「あ、いいメロディ書けそう!」という気持ちだけで曲を作ってきた。でも最近やっと「今の自分しか感じていないことを歌にする」ということに価値を感じてきたし、そういうなかで自分はどういう曲を作るんだろう? ……と聴いてみたくなったんですよね。「まぼろし」みたいな、あからさまに夢を追っている自分が主人公で、聴いてくれる人たちを連れていく……という曲を作りたいと思ったこと、本当にいままでなくて。
──それはなぜなのでしょう? 怖がりさんなのか、シャイボーイさんなのか。
倉品人に負担を掛けるくらいなら自分が犠牲になったほうがマシ、と思っちゃうんです。そう思うようになったのは……保育園時代の出来事がきっかけで。小さい子あるあるだとは思うんですけど、母親に「バカ」とか汚い言葉を言っちゃっていた時期があって。そのあと何年かして母親を亡くした時、その時のことをすっごく後悔したんです。人を傷つけたのにもかかわらず、謝れないままなんて耐えられなかった。子どもながらに引きずって、思い出すたびに泣いちゃってたんですよね。それが根付いているのもあって、「人に負担をかけないようにする」「強要しない」という自分の仕組みができあがってしまっていて。
──そんな倉品さんが「まぼろし」のような曲を作るなんて、とても勇気が必要でしたよね。でもそんな勇気が出たのは、きっとここ数年の活動が影響しているのだろうなと。
倉品こんなに自分の話をすることもほとんどなかったし、「yell」みたいな応援歌を作ることも初めてでした。でも自分なりに強要しないぎりぎりのラインでメッセージを書いています。自分もみなさんからのエールがないと強く生きられない人間だから、自分と似た強く生きられない人たちへの、同じ高さの目線の応援歌。上から「がんばれよ」みたいな歌は歌いたくないし歌えない。それが自分にしかできないバランスなのかなって。
──音楽性は老若男女に届くポップスでありつつ、その背景にそういう反骨心もあるのがGOOD BYE APRILだなと(笑)。
倉品あははは!いちばん好きなバンドがOASISなので、そういうところに惹かれちゃってるところはありますね(笑)。この時代にニューミュージック的な音楽性の音楽を作って、バンドを続けていて――辞めようと思えば辞められるタイミングはいっぱいあったんです。資質がフロントマン向きじゃないから何度も諦めようとしたし、最初の5年くらいは「なんでバンドやりたいって言っちゃったんだろう!?」とも思ってた。でも自分がやりたいと思って始めたバンドだし、できることをやりきるまでは辞めるという選択肢は自分からは取れない。そういう想いはずっと持っていますね。
──今作で倉品さんが歌っているメッセージは、それこそざっくり言えばロックバンドが歌っている逆境や夢だとも思うんです。でもGOOD BYE APRILの作る洗練された音色のポップス、無理のないグッドメロディにその歌詞が乗ると、日常を一つひとつ丁寧に生きていれば、その延長線上に素敵な未来が待っていてくれているような気持ちになれました。
延本特に「yell」はらっしーに伝えたいことがあったうえで、それをちゃんと歌詞という表現にまで結び付けられていると思うんです。だからすごくらっしーらしいし、すごくいいじゃん!って感じ。初めて聴いた人や、ソングライターの人格を知らない人にも「この曲を作っているのはこういうことを思っている人だよね」というのがわかるのが音楽だと思うんです。誰かの真似をして書いたものでもないし、聴いてくれる人に伝わる歌詞になったんじゃないかな。
倉品バンドの歩みが曲のバックグラウンドになってこそ、曲の意味もより浮き立つ……ということも今までやってこなかったことなので。
──だいたい1年目、2年目にやることなんですけどね(笑)。
倉品そうですよね、「連れて行くよ約束する」って9年目のバンドが言うことか!? と自分でも思います(笑)。
延本今回のアルバムを作り終えたとき、「最初に作った自主制作の5曲入りデモ音源に空気感が似てるよね」とメンバーで話してたんです。その頃はわたしもこのバンドで歌詞を書くつもりがなかったので、全部らっしーの歌詞で作った音源で。バンドが1周回った感じがしてるんです。
──たしかに。『I MISS YOU SO LONG』というタイトルも、GOOD BYE APRILという意味合いと通ずるので、セルフタイトル作みたいな印象があって。でもそれをセルフタイトルにしないところが、「自分たちの根幹を見つめ直したうえで次の場所に行く」という作品性を表している印象がありました。
倉品ああ、そう感じてもらえるのはすごくうれしいです。ふるいにかけた3つの自分の根幹に共通するニュアンスが「I MISS YOU」という言葉だと思っていたので、いつか使いたいとずっとあたためていたんです。自分の心と歌詞を書くという行為が少しずつリンクしてきたら、メロディと自分の心もリンクし始めてきて――そういう実感があったから「LANDMARK」が出来たんだとも思います。バンドを続けていくなかで自分がバンドのなかで素直になってきて、自分の性質を掴めてきたから、作るものにも自分の血が通い始めたのかな、という気がしていますね。
──10月26日にduo MUSIC EXCHANGE(渋谷)で開催されるワンマンライブ「I MISS YOU」にも期待が高まります。恒例となっているオリジナルチケットは、今回ハート型。すごく可愛いんですけど、会場の入口で半分にもぎられちゃうのがせつないです(笑)。
延本もぎったらハートが半分になるというアイディアをずっと使いたかったんです! 今作のさみしさとも通ずるし……と思って今回やってみたんですけど、お客さんから「もぎられたくない!」というご意見をいただきまして。そのときに「あ、こんなにチケットの半券って大事にしてもらえてるんだ……!」とあらためて痛感しました。
倉品僕らがそこまで半券をとっておくタイプじゃないから、「そんな人間でも残したいと思えるチケットを作りたいね」という発想からオリジナルチケット作りを始めてるしね。いまの時代、なにかを作るなら、誰でも作れるものではなく、その人たちにしか作れないものを作ることが大事だと思うし。そういうものが生活を豊かにすると思う。
延本グッズにしても音源にしても、自分が「欲しい!」と思うものを全力で作るのがテーマだからね。だからライブが終わったあとに欠けたハートを見て、「あの時楽しかったな……でもあの日は戻らないな。またライブ行きたいな」みたいに、「I MISS YOU」な気持ちになっていただけたらうれしいですし、今後はもぎられることで完成するチケットも考えたいですね!
──ははは。当日はGOOD BYE APRILにとってまた大事なワンマンになりそうですね。
延本『I MISS YOU SO LONG』はシンプルだけど繊細な世界観なぶん、演奏にものすごく気を使ったので、レコーディングが大変だったんです。今度のワンマンはサポートもキーボードの清野(雄翔)さんのみのシンプル編成なので、けっこうストイックな空間になるかも。もともとじっくり聴いて楽しんでほしい音楽ではあるので。
倉品自分たちのスタイルは変えないけれど、会場のムードはライヴハウス寄り――というところも9年目の原点回帰があるかなと思います。これまで飾り付けるようなライブをしてきたけれど、今度のワンマンはアルバム同様に極限までふるいにかけて、自分たちの力で自分たちの濃くて美味しい部分を提示できる1日になったらなと思います。今回のアルバムで、また自分たちが自由になれた感覚があるんです。これからもだれかの人生に長く携われるものを作っていきたいですね。
PRESENT
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