──山下さんは米フェスのテーマソング「輝き」を書き下ろしています。お作りになった曲が花火とともに流れたり、会場全員での演奏・合唱曲にもなりました。
「輝き」は年ごとに違う小学校の子たちに歌ってもらったものをレコーディングして、受け継いでもらうようにしていて。ステージで出演者さん全員と歌って演奏をして、そのあとに「輝き」の音源に合わせて花火が打ち上がる――僕が作った曲に合わせて花火を作ってもらうのは初経験でした。「輝き」を作るうえで花火の職員の方に取材に行って、そのときに音楽に合わせて花火を作る方法など、いろんなものを見させてもらったんです。音楽に合わせて打ち上げる最先端の技術があるんですよね。
──コンピュータを使うことで、リズムやメロディに合わせて打ち上げられるそうですね。
花火という昔ながらのものを、最先端の技術でエンタテインメントにすることも自分にとって新鮮な事実でしたし、それを自分の曲で、あんなに間近で見られるというのは、すごく面白かったです。今年は長岡花火でも「輝き」を流してくださったらしくて。今年の米フェスでは去年とは違う「輝き」の花火が観られると思います。受け継いでもらえることも含めて、本当にありがたいですね。地元に馴染んでくれたらいいなと思います。
──今年の米フェスはいきものがかりが3年ぶりのフェス出演ということで、こちらもビッグトピックになっています。山下さんにとって放牧中の個人活動はどんなことが有意義でしたか?
活動休止前の10年間は、とにかく3人で動いていたんですよね。だからこそ個人で活動をしてみて3人の良さもわかったし、ひとりでできることも見えて。プライベートも普段よりゆっくりできたぶん自分の好きなことに時間も充てられたので、休止期間は必要な時間だったなと思います。フルスロットルではなく、ナチュラルに、ニュートラルに動けたのがいい方向にはたらいた2年間でしたね。あと、休止中にいろんな人から「再開しないの?」や「再開してよ」と言われたりして……当たり前だけど、活動してたらそんなこと言われないじゃないですか。
──たしかにそうですね。
そのときに「この人はいきものがかりのことをこういうふうに思っているのか」や「こんな気持ちで待っててくれてるんだな」と感じたりもして。休止中にもかかわらずファンクラブのみなさんは離れないで待っていてくれるのもありがたかったです。再会を発表したときのファンのみなさんの熱が、春のファンクラブツアーでより体感できた。ずっとやり続けているとわからないものが見えました。休みは大事ですね(笑)。
──(笑)。いきものがかりはずっとJ-POPシーンの第一線を突っ走っていたので。
続けていれば続けているほど、どこか止まる、冷静になる時間は必要だな……と思いました。活動再開後も個々の動きができているので、休止前よりも一つひとつの枝が太くなった実感もありますね。
──初回に山下さん単身で関与しているフェスに、今年はバンドで出演するというのもドラマチックです。
ありがたいですね。いきものがかりにとっては3年ぶりのフェスですし、こけら落としという大役を務めさせていただいた会場がある長岡に帰ってこれる。恩返しになったらいいなと思いますね。フェスは「名前は知っているけれどちゃんとお目にかかれなかった」と思っている出演者とも出会える場所でもあるし、米フェスのHOUSE BANDのみなさんも僕らがいつもライブでお世話になっている方々なので僕らも安心感があるし、そんな方々と一緒に長岡を盛り上げられるのは楽しみです。
──HOUSE BANDも米フェスの醍醐味のひとつですしね。錚々たる出演者さんのバックバンドを凄腕のプレイヤーさんが務めるという。
音楽好きにしたら、あのバンドの音を生で聴けるだけで儲けものですよね(笑)。本間昭光さんと島田昌典さんという強力なおふたりがキュレーターを務めるだけでなく、おふたりをオンステージで観られることなんてHOUSE BAND以外ないと思う。楽器隊を観ていると実は楽しいよ、というのもこのフェスの旨味ですね。
──米フェスはいろんなものが味わえる、欲張りで贅沢なフェスだなとあらためて思いました。
そうですね。音楽フェスではあるけれど、音楽に特化しているわけではなく、花火もあれば地元の美味しいもの、いろんな企画イベントを立てているフェスです。去年はラジオブースもありましたし、地元の専門学校の子たちがフェイスペインティングやヘアセットをしたりもしていたし……。あと、いきなり会場に牛がいたりするフェスなかなかないだろうなあ(笑)。
──あははは、たしかに。
僕ら出演者はみなさんが楽しめるように力を尽くすいっぽうで、それをBGMとして楽しむかメインディッシュとして楽しむか……という選択はお客さんの自由ですし。キャンプサイトがあるのもこのフェスの目玉のひとつなので、「キャンプついでに音楽聴いてみるか」というテンションも面白いですよね。いろんな楽しみ方ができるので、ぜひ自分にフィットする楽しみ方をみつけてほしいです。でも花火は絶対に観たほうがいい!あんなにたっぷり観られるのは長岡だからこそですね。
──間違いないですね。今後も続くフェスとのことですので、年ごとに楽しみ方を変えてみるのも面白そうです。
「去年は音楽ばっかりだったから、今年は食ブースを中心に覗いてみようかな」とかでも全然いいと思います。どんな楽しみ方をしたのか、来てくださった方も教えてほしいですね。出演者もふらっといろんなところを回っているので、会場にいる全員が同じ視線でフェスを作っているような感覚もあるんです。だからみんなで楽しい空間を作り上げたいし、お祭りや縁日に来るような気軽な気持ちで来てもらえたら。おじいちゃんおばあちゃんがお孫さんを連れて来られるフェスになったらいいなと思いますし、みなさんそれぞれが自由に楽しめることが、このフェスの幸せでもありますね。