今はサポートベースにこみゅにけいしょんのイラミナさんと、THE LITTLE BLACKの彩さんに入っていただいてます。初めてカヨ以外のベーシストと一緒に活動しているので、いまはまだ実験段階で発見だらけという状態ですね。イラミナさんも彩さんも「FINLANDSはこういうふうにやっていきたい」というのを理解してくださっているし、出す音やクセが違うぶん、毎回違う良さを持ったFINLANDSを見せられていると思います。
FINLANDSを始める前後くらいにお古の宅録セットをもらって、遊び感覚で使っていて。それでだいぶ昔に当時のサポートドラムから「もっとあなたの頭のなかに鳴っている音を具体的に表現したものを出してくれたら再現できると思う」と言われて、そこからちゃんと打ち込みを始めるようになったんです。わたしは頭で考えていくことが好きなので、打ち込みをやっていくうちに楽しくなってきて――ソロはその成れの果てですね。FINLANDSに持っていかなかった曲をひとりで完結させてみたいという気持ちが出てきました。
バンドの音楽はメンバーの音と声だけで作られて、それ以外の音を出さないことに良さがあると思っているんです。でもソロで作る打ち込みは無限なんですよね。ピアノを入れたい、ドラムじゃないビートを入れたい……みたいに、自分の好きなようにできる。そういう欲望が湧く曲をソロに回しますね。自分の主観のみで制作を進めています。今回はピアノから曲を作ったり、ベースを弾いてみたり、今までやってこなかったことに手を出し始めてみて、より大変にはなったんですけど。できないことをやっていくうちにできてくるのは楽しいですよね。まだまだできないことだらけだなと思います。
ソロは自分が感じたものを脚色なく曲にしているところが多い気がしてますね。この7曲はずっと自分の内にこもっていたものだったので、自分以外の人に聴いてもらったり、聴いた人からどう感じたと言ってもらえて、ようやく曲に血液が巡りだしたなと思うんです。でもそれは共感してもらいたいということではなくて。
聴いてもらわなくても物理的には曲は存在しているけれど、曲というものは人の意識下で成長していると思うんです。人に聴いてもらうことや観てもらうことは、本当に大切だなと思いますね。
そう言っていただけるとうれしいですね。「どっちもソロじゃん」と言われることも多いし、わたしもそういう人を見たら、そう思うだろうなと思うんです。でも自分にとってはソロもFINLANDSも違うものだし、それを音源で証明できて良かったなと思います。でも聴いた人が「ソロもFINLANDSも同じだ」と思うならば、それはそれで構わないですね。FINLANDSは自分がスタジオに持っていったアイディアより悪くなることは絶対にないし、いいものがたくさん出てくるなかで何を選ぶかはバンドの面白いところだと思います。メンバーはみんな優しくてわたしを守ってくれるから、自分はやれることをやろうという気持ちになれるし、同時にメンバーと張り合ってる面もありますね。ソロをやらなければ、バンドの良さはここまでわからなかっただろうなと思います。
CD特典ではないライブDVDは、今回が初めてなんですよね。初めて自分たちで企てたツアーを回って、シンプルにすごく楽しくて。「こういうライブを作りたい」というチーム全体の気持ちが揃っていることがすごく肌で感じられて、そのうえでメンバー個々の色がしっかり出ていたと思うんです。それはとても文化的なことだなと思って。その空間のその時間だけは、ひとつの文化を作り上げられている――それは実際にライブを観ていただいて感じられることでもあると思うんですよね。いろんな理由でなかなかライヴに来れない人たちにもどうにか「こういう文化を我々は作り上げているんです」と見てもらいたかった。
最初はライブ会場で販売するという話だったんですけど、「それだとライブに来たくても来れない人が買えないから元も子もなくない?」って(笑)。さきほど「残すことを大事にしている」とおっしゃってくださいましたけど、我々が作ったものを取り入れてくれる人がいないと、「残す」ということにはならないんじゃないかなと思うんです。映像で観るライブは生の感覚とは違うかもしれないけど、DVDをリリースすることで我々はその空間に生まれた文化を残すことができるし、観た人はそれを取り入れてくれることができる。そういうものにしたかったので、めっちゃ安く売ります(笑)。
レーベルの社長が最初からこの値段設定にしていて。男前ですよね。でも「売れろ!」というよりは、観るきっかけを多く作りたいなって。友達同士との貸し借りでもいいから、「FINLANDSの作る空間はこういうものなんだな」というのを知ってほしいという気持ちが大きいですね。わたし自身も好きなバンドがスプリットでライブDVDを出していたりして、そういうものに憧れていて。渋谷CLUB QUATTROは自分たちにとっていちばん大きな舞台だったので、残しておきたかったんです。
シンプルにかっこいい日になったと思います。あと、あのライブのあとに燃え尽きなかったんですよね。それはあのライブをしたことで「次はこんなことをしたい」「次はどうしたらいいだろう」という気持ちが湧いたからなんです。言い方によってはやりきったと言い切れないライブかもしれないけれど、自分的にはいい日だったんだなと思います。自分たちが求める空間を作るためには、ワンマンくらいの尺が必要だと気付いたのは、『BI』ツアーでワンマンを多めに組めたからですね。そのライブをDVDとして残せるのは、FINLANDSにとってもひとつの印になるのかなと思います。
そう、そういうツアーをしたいとずっと思っていたんです。これまでずっと駆け抜けるようにCDを作り続けてきて、それに満足もしていたんですけど、それを続けていくとライブでやらなくなる曲、みなさんに聴いていただく機会が少なくなる曲も出てくるんですよね。9月からのワンマンツアーではそういう曲もきっちりできると思っています。我々演者としても、新しいものを放出するだけではなく、残してきたものを辿って今の自分に落とし込む時間は必要だし、大切なことだと思うので。
別に後悔はしてないですけど、これまでのらりくらりしてましたからね(笑)。自分たちでツアーを企画したり、ワンマンをしたり、ライブDVDを作ったり、歴史を網羅できるツアーが控えていたり……最近は「これこれ、こういうことがやりたかったんだよね!」と思うことの連続です。FINLANDSはこのタイミングでこういうふうに動いていけて良かったのかなと思っていますね。
初めてベースまで自分で演奏して作った曲なんです。『BI』ツアーを回って、カヨが脱退することになって、この曲で「FINLANDSの第1章が終わりました」というのをきちんと形にできました。『BI』ツアーから始まったFINLANDSをDVDで、第1章が終わったFINLANDSを「use」で示せた。始まっていくことにも終わることにも、きちんと敬意を持って作れた作品になりましたね。
大きな会場でワンマンを打つことは、バンドの成長がいちばんわかりやすく伝わることだと思っていて。FINLANDSを結成してからのこの6年間、キャパが大きくなることをすごく喜んでくれているお客さんたちがついていてくれて。真摯に音楽を好きでいてくれるお客さんがいるのは、我々バンドマンにとって本当にありがたいことですね。ただ、最近近視が出てきたので、LIQUIDROOMでお客さんの顔が見えるかなあ……と。
小さい頃に親から「相手の目を見て話しなさい」と教えられてきたので、人の目を見るのは大事なことだと無意識のうちに思っているんでしょうね。お客さんがこちらを見てくれているなら、こっちも出来る限りきちんと見て歌いたいんです。人と話すときにどういう表情をしているのかを見るように、お客さんがどういう顔をして聴いてくれているのかを確かめています。ステージが大きくなればなるほどそれが難しいので、自分の視力との勝負ですね……!
PRESENT
FINLANDSロゴ刺繍Tシャツ(Mサイズ)を1名様に!
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