インタビュー/森 朋之
ハルカトミユキが2ndフルアルバム「LOVELESS/ARTLESS」をリリースした。前作「シアノタイプ」(‘13年11月)から約2年9カ月の間、創作活動の停止、復活後の怒涛の新曲ラッシュ(1枚のe.p.『そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。』と2枚のミニアルバム『世界』『LIFE』のリリース/13カ月連続の新曲発表)という、まるでジェットコースターのような時間を過ごしてきたふたり。全て新録音源で構成された本作には、作詞・作曲、歌、サウンドメイクを含め“2016年のハルカトミユキ”が生々しく投影されている。
今回はハルカ、ミユキのふたりにインタビュー。アルバム「LOVELESS/ARTLESS」の制作をフックにしながら、この2年9カ月における音楽観、ふたりの関係性の変化、さらに昨年末から続く47都道府県ツアーのファイナル公演・日比谷野外大音楽堂ライブ(9/24・土)について聞いた。
──約2年9カ月ぶりとなるフルアルバム「LOVELESS/ARTLESS」が完成しました。前作「シアノタイプ」以降に発表された楽曲は1曲も収録されてないですね。
ハルカ(Vo/Gt) そうですね。1曲だけ(『永遠の手前』)は昔からあった曲なんだけど、他はぜんぶアルバムのために書き下ろした新曲なんです。最初は(既存曲から)何曲かアルバムに入れようって言ってたんですけど、制作しているうちに良い曲がどんどん出来たのもあるし、「タイムラグがない、いまの状態で作ったものを出したい」と思って。
──そこで新たなモチベーションが生まれた、と。アルバムの制作に入ったときは、どんなビジョンがあったんですか?
ハルカ 明確なものはなかったんです。いざフルアルバムを作ろうというときになって「どうしよう?」って考え初めて…。去年は悩む暇、考える暇がないまま走っていたんですが、自分でも「振り返るな」って言い聞かせてたし。今回の制作のなかで、改めてハルカトミユキと向き合う時間ができて。1stアルバムではどんなことを歌っていたのか?とか、そこからどういうふうに歩んできて、今現在、どんな感じでいるんだろう?ということをすごく考えたんです。それを素直な感覚で表現したいと思って出来たのが、今回のアルバムですね。大きな変化としては、ミユキが半分くらい曲を書いたということですよね。いろんなタイプの曲があるし、お互いが作る曲も違うんだけど、最終的には「これって、ハルカトミユキだよね」と思えるものになっていって。
ミユキ(Key/Cho) 自分のなかで心境の変化があって、そこから曲が書けるようになったんです。一昨年3rd EP(『そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら』)を出して、そこから曲がまったくできなくなって…。その後、80年代の音楽に興味を持ったり、ライブに対して求めていることについて考える時期があったんですよね。去年の段階では「ハルカが作ってきた曲の外側に、自分のアイデンティティとして80年代らしいアレンジを加える」という感じだったし、ライブに関しても「自分がやりたいことばかりが強くて、お客さんが求めるものに応えられてないな」と思うこともあって。でも今回のアルバムの制作では「これじゃ遠くの人には届かない。もっと素直になって、ハルカトミユキの核の部分に関わろう」と思ったんです。私が思うハルカの声の素敵な部分だったり、聴いてくれる人との距離をもっと近づけたいと思いながら作ってるうちに、どんどん曲が出来るようになって。
ハルカ ミユキが作ってきた曲って、歌詞を乗せるのに苦労することが多いんです。自分にはないメロディの動き方をするし、そもそも日本語を乗せることをまったく想定してないから。だけど、自分にはないもの(曲)をもらうことで、私の書く歌詞もどんどん広がっていったというか。自分のクリエイティブ的にも必要な刺激だったなって思いますね。
──このアルバムで初めて、ハルカトミユキというソングライターチームが機能し始めたのかも。それを象徴しているのがリードトラックの「奇跡を祈ることはもうしない」ですよね。
ハルカ ミユキがこの曲を持ってきたのは、アルバム制作の最初のほうの段階だったんです。そのときから異物感、異質感を放っていて「ヘンな曲だな。でも、すごくパワーがある曲になりそうな予感がする」と思って。完成図はまったく見えないんだけど、とにかく得体のしれない力があって、「これは絶対にカタチにしないとダメだ」っていう…。
──ハルカさんが感じた異物感って、具体的にはどんなことなんですか?
ハルカ まず、メロディがわけわからなかったんですよ(笑)。デモでは鍵盤でメロディを弾いてたんですけど「どこからがBメロ?」「こんなに低い音でサビに入って、こんなところまで上がるの?」と思って。人間の声では再現できないでしょ?という感じだったんですよね。結局、デモのメロディはそのまま活かしてるんですけどね。足したり削ったりしないで。
──ミユキさんは当然、ハルカさんが歌うことを想定して作ったんですよね…?
ミユキ はい(笑)。さっき言った”意識の変化”の後、初めて作ったのがこの曲なんですけど、「強いメロディと強い言葉がある曲にする」ということだけを意識していたんです。ハルカの声は低音もいいし、ファルセットもいい。メロディに抑揚をつけたいし、サビはリフレインではなくて、壮大な感じにしたい。そうやって作っていたら、確かに普通ではなくなってしまって。だいぶ文句言われましたけどね。
ハルカ 文句言いますよ。「歌ってみろ」と言いたい(笑)。
そうして完成した「奇跡を祈ることはもうしない」