──今回の3曲、全然違いますね。2曲目「~序章~」はミドル・バラード、「2019-NI MARU ICHI KYU-」は力強いロック。
杉田「~序章~」はまたちょっと違う、ラブソング的なものですけど、「2019-NI MARU ICHI KYU-」と「Don’t Forget」は、JAYWALKの精神を歌っている曲と言ってもいいのかな?と思いますね。本当に、音楽を続けるか、やめるか、みたいな瀬戸際ばっかりなんで。
杉田でも、そういったことって、みんな思うと思うんですよ。日々の生活が苦しかったり、明日が不安だったり…そこで悲壮感を漂わせたらダメだと思うんですけど、それを光康くんの歌詞はうまく明るく表現してくれる。それがお客さんのワクワク感や期待感に繋がればいいかなと思うんですけどね。
穏やかな国でも戦場でも、同じように悩んで泣いたりする。そういうものが面白い。しかもそこに音楽が必ずある (知久)
──特に「2019-NI MARU ICHI KYU-」は、平成から令和への改元を歌詞に織り込んだ、いろいろあるけど前向いて行こうよという曲です。
知久今年元号が変わるのはわかってたし、おそらく10年もしたら、2019年という年は節目の年として記憶に残りますからね。今はどっちかというと、令和が始まった年ということになってますけど、平成が終わった年として。この後どういうふうになっていくのかわからないけど、いつか人生を振り返った時に、一つの目印になる年ですから、僕らもそれをいい道しるべにしたいなと思ってるんですけどね。そういうことを考える時に、世界を見たら、たとえばシリアとか、大変なところは山ほどあるわけです。その中で日本という国は、良くも悪く世界一穏やかな、お気楽なところかもしれない。でもお気楽な国であっても、病気はある、事故は起きる、寿命はある。国がお気楽でも、人の人生がお気楽というわけじゃない。たとえば失恋とか、穏やかな国でも戦場でも、同じように悩んで泣いたりするわけですよね。そういうものが面白いなと思うんですよ。しかもそこに音楽というものが必ずある。僕らはそういう音楽を提供する…と言うほど偉そうなものではないけれど、音楽というものを人々と一緒に楽しんで、それを生業としているんですね。ただね、たとえば20年、もう30年になるかな、レコード業界というものがまだ元気だった頃と比べると、今は音楽というものにお金を払うことを、若い人はしないでしょう?
知久光康(Vo&Gt)
──安くサブスクで聴くか、タダでYouTubeで見ようとか、そういう感じでしょうね。
知久それはもうしょうがない。子供の頃に街に時計屋さんがあって、壊れた時計を直してたけど、もうなくなっちゃったし、カメラ屋さんはみんな量販店になっちゃった。そういう時代の変化は必ずあるわけで、面白い経験と言えばそうなんですよね。
杉田でも、音楽は絶対に人の心の中に残っているわけだね。
知久そうそう。音楽、歌、リズムとかそういうものは、ずっと何千年もあるわけです。…この年になってくると、そういう原理的なことまで考えますね(笑)。今の流行りがどうだとか、そういうんじゃないんですよ。音楽というものは、全く知らない人が、まるで知り合いのように一緒に喜んでくれるものだから、そういう媒体になってくれる音楽というものは、とてもいいものだと思いますね。
杉田それを共有するのがライブという場所ですね。だからいろんなところでライブをやりたいと思っているし、ツアーも去年より本数が多いんですよ。会場はライブハウスが主ですけど、九州も大分、熊本とか、久しぶりに回るところもあるので、ぜひたくさんの人に来てもらいたいなと思ってますね。
杉田裕(Vo&Key)
アルバムは冬のライブには間に合わせたいですね(杉田)
──実は、アルバムのタイトルはもう決まってるんですね。『HEAVEN’s GATE』という。
知久中身がそんなに出来てないのに、あんまり構えたタイトルもつけられないので、『HEAVEN’s GATE』だったら、GATE(門)だから、方向とか入口とか道とか、いろいろ考えられるじゃないですか。
──直訳すると「天国の門」。これは幸せなイメージなのか何なのか。
杉田死後の世界とか、思われるかもしれない(笑)。でもそういうことではないんです。
知久いや、そう思われてもいいと思うよ。考え方次第だけど、大きく見たら、地球の人口がいっぱいになってきて、民主主義は果たしてちゃんと機能してるのか?とか、いろんな限界が見えて来てる。『HEAVEN’s GATE』というのは、地球に迫っている何かというか、そういう終末観が世界中に漂ってるじゃないですか。
知久とはいえ文明は進歩して、生活は便利になってる。それでも閉塞感が世界中にあるわけで、それはみなさんと同じように僕らも感じているわけです。しかも歴史上の誰だって、不老不死はいないわけで、みんな同じなんですよね。そういうことも含めて、人類全般に『HEAVEN’s GATE』が見えてきている、ということは言えると思うんですね。その門の向こうに素晴らしい世界が待っているといいけれど、その限界に迫ってきているということは、現代に生きる人に共通の意識だと思うんですね。若い人も。
──深いテーマを持つ作品になりそうです。今のところ、アルバムの完成はいつぐらいに?
──気長に待ちますので、いい作品を作ってください。そして来年はいよいよ、結成40周年ですか。
杉田40年やってる人とか、職人さんとかの話を聞くと、熟練した素晴らしい人たちだと思っちゃうけど、僕らまだまだ未熟ですから。これからだと思います。
──そう言えるのがかっこいいです。アルバム、楽しみにしています。
インタビューを終えて1時間後、ステージに立った4人は、まさに「若返っていくような」エネルギッシュなパフォーマンスを見せてくれた。田切純一の力強い推進力みなぎるドラムを中心に、序盤から激しくロックな曲で一気に盛り上げ、食事を楽しんでいた観客も思わず立ち上がって踊りだす。キーボードの杉田、ギターの知久、ベースの中内助六が交互にメイン・ボーカルを取り、田切も加わり四声の見事なハーモニーを聴かせるスタイルは、心地良くも迫力満点で、若いロック・バンドには真似できない希少なもの。MCの軽妙なやりとりも実に楽しい。そしてブルース、カントリー、ファンク、ポップスなどが溶け込んだサウンドの中で、新曲「Don’t Forget~陽は沈み また必ず昇る~」の若々しくロックな存在感は抜群で、観客は全員立ち上がって体を揺らしながら手拍子を送るのに忙しい。代表曲「何も言えなくて…夏 2018」も、杉田のボーカルで生まれ変わったようにフレッシュに聴こえる。もうすぐ40年選手の底力を軽やかに見せつける、圧巻のパフォーマンス。ツアーはまだ始まったばかり、8月4日のファイナルへ向けてさらに調子を上げていくだろう、今のTHE JAYWALKをぜひ体感してほしい。
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