──わかりました。突然の質問なんですが、ソウルミュージックにおける裏声(=ファルセット)の位置づけとは?
村上えっ(笑)。そんなの、1番最初に聞いてくださいよ(笑)。
──すみません。
村上まず日本の裏声の歴史からになりますけど。
──いいですね。とても興味があります。
村上これがちょっと特殊で。そもそも女性の声色を真似る音として使っていたというのがあるんです。女性言葉の歌詞を男性が歌うってパターンで、ムードコーラスとかがそう。昔、ムード歌謡が流行っていた頃は、女性言葉の歌詞を男性が歌うことって、結構多かったんですよね。
──あぁ確かに多かった。そういうヒット曲もたくさんあった。
村上ですよね。裏声で例えば“私を抱いてください”みたいな歌詞を男が歌うわけですから、すごい世界ですよね(笑)。
──はい。個人的には、受け入れがたい世界でした。まだ小さかったっていうのもあるかもしれないですが。
安岡多感な時期は特にね(笑)。
──おかしなことになってるなぁ、みたいに思ってました。
村上そう、つまり日本人は気が付いちゃったわけです。“あれはおかしい”って(笑)。それで80年代、女性言葉の歌詞を男性が歌うってスタイルが無くなる……つまり断絶があった。
(一同爆笑)
──言われれば、確かに。いわゆるテレビでは少なくなったと思います。ニューミュージックでは多少あったかもしれないけど。
村上ところが!
──どうしました?
村上だいぶ前、ブルースの研究書みたいな本を読んでいたら、衝撃的な言葉が出て来て。“黒人におけるファルセットは、性欲の表現だ”と。ソウルじゃなくて、ブルースってところも含めて、衝撃だったんですよね。ソウルは女性に対して歌う音楽だけど、ブルースはどっちかっていうと俺様の世界が多いなと思うんです。例え、女性に対して歌ったとしても“俺の金だけむしりとって、去って行きやがったぜ”みたいな、そういう歌詞が多いじゃないですか。
──確かに。ブルースの“blue”は「孤独」って意味合いもありますし、男の孤独を感じる歌詞も結構あるかも。
村上そんな中でね、多くはないけど“ファルセットは……”って言葉を読んで、改めてブルース聴きなおしたりしたんです。そのとき、今まで日本で無かったファルセットの使い方があるんじゃないかと、すごく可能性を感じたんです。
──つまり日本の音楽シーンにおける、新しい形の裏声がある、と。
村上そう。20代前半で、めちゃめちゃニッチだけど、これは勝機があるかもしれないって思った。
(一同爆笑)
安岡ゴスペラーズがデビューした頃は、日本語の歌詞でファルセットを使う男性アーティストは、あまりいなかったし。
──そうですね。最近は、バンドでもヴォーカルのひとつのスキルとしてファルセットが当たり前になってますよね。ただ、やっぱり「SOUL POWER」で聴くファルセットとはまったく違う。
村上日本語でファルセットを使ってソウルフルに歌う……っていうところで言ったら、俺、結構、発明したと思ってるんです。
KO-ICHIROははははは(笑)。パイオニア?
村上男が男の歌詞で歌うソウルフルなファルセットって、俺が切り開いた……くらいに思うんだけどな(笑)。
安岡わかるよ、わかるわかる。情熱があって溢れて、思わず裏声になってしまった、みたいな。そういうファルセットってことでしょ。しゃべるときもそうじゃない?感情の高ぶりで思わず声が裏返っちゃうこと、あるでしょ(笑)。我々の世代って、ロックの文脈でいうと、ファルセットを使わない男っぷりがあった最後の時代なんだよね。
──あぁ、ハードロックやメタルで、どこまで裏声を使わずに高い音が出るか、みたいな。80年代後半~90年代初頭くらいですかね。その後は、デスボイスというのが出て来て、また違う男っぷりが出てきますからね。
安岡そうだよね。で、そことは違うベクトルで、ファルセットの男っぷりっていうのが、あると思うんだよ。だから「SOUL POWER」に来る人は、思わず出てきちゃった裏声を探してもらうと、面白いかもしれない。
(一同笑)
──KO-ICHIROさんはどうです?ファルセットについて思うことはないですか?
村上聞きたい、是非聞きたい(笑)。
KO-ICHIRO今年の「SOUL POWER」に、初めてw-inds.が出るんですよね。(w-inds.の)KEITAくんはソロで出てもらったことがあるんですけど、彼の裏声を生で聴いたときには、本当にすごいなとびっくりしました。やっぱりファルセットって、歌い手にとって武器だと思うんですよね。声質+、ファルセットの使い方で、聴く人を一発でノックアウト出来ますから。
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