──ライブ以外の活動についても聞かせてください。昨年11月にソロアルバム「SCENE」「SCENE II」のRemix ver.がリリースされました。ミックスをやり直したバージョンを作ったのはどうしてですか?
特に『SCENE II』がそうなんですが、ちょうどビッグ・スネア・サウンドが流行った時期に制作したアルバムなんですね。ボーカルがかき消えるほどの音量でスネアが鳴っているんですが、それが心残りだったんです。80年代の終わりから90年代のはじめは、そういう音が流行っていたし、世間もそれを受け入れていて。当時はそれで良かったのですが、時代の流れとともに古く感じてきて、“音楽的ではない”“もっと歌や歌詞を大切するべきだった”と思うようになったんです。しかも『SCENE II』はダブルミリオンを記録してますからね。名刺代わりとも言えるアルバムのサウンドに後悔があるというのは、僕にとって大きな苦しみで…。今回、ミックスダウンをやり直させてもらえたのは、精神的に呪縛から解き放たれたというか、本当にありがたかったです。
──「SCENE」「SCENE II」は、ソロアーティストとしての原点。この2作に改めて向き合うことで、楽曲の魅力を再認識したのでは?
それを判断するのは僕ではなくて、お客さんでしょうね。聴いてくださる方の思い入れもあるでしょうし、人それぞれなので。僕はね、常にそうなんです。アーティストとして主張はしますが、どう評価するかはお客さんの自由だし、そのことに対して何かを言う権利はないので。“こう評価してほしい”と思うのであれば、そうなるような活動をすればいいだけの話ですから。
──歌い方も時期によって変化していると思いますが、そのあたりはどう考えていますか?
まず、既にCDとして世に出ているものがありますよね。それが何年か経つと、“あれ? いまと歌い方が違うな”ということはあります。ライブにおいては、CDと同じように歌うのもサービスになるだろうし、そのときのスタイルで歌うのもひとつの見せ方。すべてに言えることですが、大事なのはバランスですよね。
──2017年には「Too many people」「Black&White」という2枚のアルバムをリリース。現在も新曲を制作中ということで、創作ペースはかなり上がっているようですね。
人生にバイオリズムがあるように、活動にもバイオリズムがあるんですよ。いまはモノ作りに合っている時期なので、それを活かしてどんどん作りたいと思っています。どうせまた、曲作りに時間がかかる時期が来ますから。
──制作のペースを維持するためには、いろいろなインプットも必要だと思うのですが、ASKAさんの場合はどうなんですか?
インプットみたいなことは、知らないうちにやってるんじゃないですかね。僕はもともと“○○風の曲を作る”ということが一切ないし、“○○っぽいね”と言われるのがイヤなんですよ。鍵盤に向かって、そのときに押さえたポジションをもとにして、リズムを変化させたり、コードワークを組み立てて、それが曲になっていく。作ってる最中に頭のなかに他のアーティストの曲が浮かぶことはあるんだけど、完成してみると、その曲とはぜんぜん違っていることが多いですね。“こうすればASKAらしくなる”ということもまったくわからないんです。それは多分、僕の音楽に影響を受けていると言ってくれてる方のほうがわかってるんじゃないですか。
──なるほど。そういえばASKAさん以前から「自分にはルーツがない」と仰ってますよね。
そうなんです。ただ、デイヴィッド・フォスターだけは別ですね。彼の音楽によって、自分がやってきたことを根こそぎ変えられるのほどの影響を受けたので。デイヴィッド・フォスターの音楽はアカデミックなものから、ポップス、ロック、映画のサントラまで多岐に渡っていて、すべてが素晴らしい。彼のメロディ、コード進行、サウンドの響き方にはずっと憧れています。
──昨年末にご本人と会う機会があったそうですね。
ええ。“いつか会えるだろう”とは思っていたんですが、自分のブログに彼のことを書いたすぐ後に、会えることが決まって。CDを渡すだけで十分だと思っていたんですが、その場で“いま歌ってみて”と言われて、ピアノを弾いて即興で歌ったんですよ。
──それもASKAさんの運の強さなのかも。
縁ですよね。僕の人生は波乱万丈ですが、“あのときにあの人に会ったおかげで、上手くいった”とか“あの時期にこんなことが起きて、状況が変わった”みたいなことの連続なんですよ。そういう人生を受け入れて、楽しんでいきたいですね。
PRESENT
「Made in ASKA」ポスターを5名様に!
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