インタビュー/永堀アツオ
──デビュー当時から「最も影響を受けた作品」と公言していたアニメ「D.Gray-man HALLOW」のEDテーマのオファーを受けた時の心境から聞かせてください。
新シリーズが始まるというニュースを聞いた時に、密かに主題歌を歌いたいなと思っていて。だから、本当にこのお話をいただいた時は夢のような感じでびっくりしました。私が<D.Gray-man>に出会ったのは小学生の時で、それ以来、アニメも見てたし、コミックでもずっと追いかけてきて。私にとって、<D.Gray-man>の中には人生を一緒に過ごしてきた仲間たちがいるっていう感じなんですね。だから、時を経て、今、歌手として主題歌で物語を彩れる存在となれたことはすごく光栄だし、新シリーズを待ちわびていたファンの一人として、臆することなく胸を張って、みんなの思いを代弁できたらいいなと思いました。
── シングルの表題曲、しかも単独で作詞を手がけるのは今回が初となりますが、どんな思いを込めたいと考えてました?
登場キャラクターに神田とアルマの関係性、二人のことを書こうと思ったんですね。二人はアクマの魂の苗床にされているので、心の奥の奥にある声というか、本来の人格や潜在的な魂も描けたらいいなと思って。基本的には、タイトルにもなっているロータス=蓮の花の化身である神田目線で書いています。
──ロータスの後にペイン=痛みとあるように、傷つけあい、壊し、壊れていく様が描かれていますよね。
壊れるっていう言葉にはネガティブなイメージがあると思うんですけど、マイナスなものも壊して解き放つっていう意味も込めていて。二人が解放されてほしいっていう私の願望も込めてますね。
──最後に<笑顔>と書いて<こたえ>と歌ってます。
微笑みながら涙を流してるイメージですね。別れは悲しいけれども、そこにはありがとうっていう意味もあるんじゃないかなと思って。あと、二人が一番最初に出会うシーンで神田は眠ってたので、始まりに戻る感じも伝わるといいなと思って。
──サウンド的にはロックバラードになってますよね。
そうですね。メロディに和の要素も入っているので、日本はもちろん、海外の方にも気に入ってもらえると思うし、世界を飛び越えて、宇宙まで届くじゃないかと本気で思ってます。
──じゃあ、歌入れでは宇宙まで届ける意識で歌いました?
いや、思い入れが強くなりすぎると聴きづらくなっちゃうので、できるだけ歌詞を聴き取りやすくっていうことを考えてましたね。語りかける感じから徐々に熱を増していって、サビで解放してあげるイメージです。感情が入り過ぎて涙が出そうになるのを頑張ってこらえながら歌っていて。我慢しすぎたのかどうかはわからないけど、その分、MVでは感情移入しすぎて涙が溢れてしまいました。
──(笑)また、本作では表題曲に加えて、カップリングの2曲も全て作詞を手がけてます。3曲とも<こえ><声>という言葉が使われているんですが。
それは、私が歌で表現する人だからかもしれないですね。でも、3曲とも違う意味で使ってて。『Lotus Pain』の場合は、二人を花に例えてて、種を<こえ>と歌ってるんですけど、魂から出てきた伝えたいことが声であるっていう意味で書いてますね。2曲目の『marionnette』は、人形の出す声で。
──タイトル通り、歌詞も人形がモチーフとなっていて、その人形である“僕”の心情を歌ってますよね。どうして人形を主人公にしようと思いました?
人形ものの映画やアニメが好きなんですよ。心を持たない人形がある日……この曲の歌詞でいうと、“君”に出会って、人間にしかない感情やいろいろな概念を学んでいくっていう。やがて、君のことを大切な存在として認識するようになるんだけど、君はいなくなってしまう。
──せつないですよね。寿命のある人間と永遠に存在する人形の関係性が歌われていて。
人形に悲しいっていう感情が芽生えているのかどうかはわからないんですけど、“君”に教えてもらったことは今もここで忘れずに持ち続けていくからねっていう歌になってますね。
──キラキラしたシンセが入った、爽やかなミドルテンポの楽曲になっているのに。
そのアンバランスさを狙った部分がありますね。もっと詳しく言うと、実は、私はこの“君”を大好きだったおばあちゃんにたとえていて、自分が人形である“僕”になったつもりで書いたんです。以前は一緒だった人がいなくなり、一人になってしまう。そこで、切ない、悲しいって思うのは当事者の人間だけで、世の中には当たり前にまた明日が来て、明後日が来て……。そういうこの世界の理とか人間が決めた概念、生きてるいい夢とか、いろいろと不思議に思うことの答えを探して考えてしまう時期だったので、心の中に眠ってる冷静な自分を人形に例えて、あえて極端なことを書いてみた感じですね。
──ストーリーとしてはわかりやすいけど、すごく哲学的なことも考えさせられる歌詞ですよね。一転して、3曲目「tiny wings」はライブで盛り上がりそうなアップナンバーになってます。
ライブで“おい!おい!”言って欲しい曲ですね。歌詞はちょっと強がりな女の子のイメージで書かせてもらって。塞ぎ込みがちだった女の子が、微笑みながら優しく見守ってくれていた人がいたことに気づいて、自分を変えるために一歩を踏み出すっていう歌詞になっています。
──ちっぽけな翼を複数系にしたのは?
あなたと私、一緒に行こうっていう意味を込めています。
──ましろさんが呼びかける“あなた”というのは?
やっぱりファンのみなさんかなって思いますね。私も塞ぎ込みがちだし、壁を作りがちなので、この曲の主人公に共感しながら書いていました。最近はファンの方との関係性も変わってきていて。例えば、仕事の悩みを話してくれる人もいるし、私の小さな変化に気づいてくれる人もいる。ライブやイベントを通して、そういう関係を築けているので、私が思い描く大切な人はファンのみんなですね。それを、“私”と“みんな”と例えるのではなく、誰か一人と対話しているように書くことが多いし、ライブでも一人一人と向き合いたいなって常に思っています。
──10月からは恵比寿リキッドルーム他でのワンマンツアーも決まっています。
リキッドルームは絶対にやってみたかった会場なので楽しみですね。曲数も増えるので、まずは最新シングルを聴き込んできてほしいです。歌詞の世界観はちょっと切ない感じが多いんですが、今の正直な自分の気持ちだし、悲しいだけではなく、前に進んでいきたい、立ち止まりたくないっていう主人公を描いたつもりなので、みんなで共有し合えたらいいなと思います。
──新曲3曲はライブではどう楽しんでほしいですか?
そうですね。『tiny wings』はまっすぐに盛り上がって欲しいし、『marionnette』はみんなでニコニコしながら手を振りたけど、実は歌詞が切ないっていうとことを感じて欲しい。『Lotus Pain』は、壮大で深い世界観のバラードなので、一緒に楽しむだけでなく、魅せる、聴かせる1曲として、ライブではいいメリハリになるし、まだどんなツアーになるかわからないけど、私は怖がらずに体1つでぶつかっていくので、みなさんにも全力でぶつかってきてほしいなと思います。
■『Lotus Pain』トレーラー