いろんなパーソナリティーが集まってるから、何が何でも自分の思い通りにしなきゃいけないという頭がもうないんだと思います。(堀込)
──ここまでキャリアを重ねてきた上で、また新しいドアに手をかけるのは、どういう意識がはたらいていると思いますか。
堀込 多分それは、いまのKIRINJIも自分が中心になってはいるけれど、でもいろんなパーソナリティーが集まってるから、何が何でも自分の思い通りにしなきゃいけないという頭がもうないんだと思います。むしろ予想外のところに進んでいくのが面白いという感覚が、『11』以降、僕のなかに実感としてあって、だから自分の思い通りにならなくても最終的には面白いものになるという経験を積んできたということだと思います。
──新しいアルバムのタイトルは『ネオ』になりました。
堀込 新しくなったんだよというニュアンスが伝わるような言葉を探したんです。新しいと言えば“NEW”ですけど、それじゃあなあ…と思って。それに似た言葉として“NEO”があって、それはすでにあったものの新しい形を表現するときに使う言葉らしいんですよ。だったら、今回のアルバムにぴったりじゃないかと思って。
楽曲は新旧混ぜ合わせて、全体としては初めてのものを見たという印象のライブにしたいなあと思っています。(堀込)
──このアルバムを携えてツアーに出かけるわけですが、どんなツアーになりそうですか。
楠 みんなの演奏ぶりが、少しずつ変わってきてて、それはそれぞれが自分のポジションをよく理解して“ここは抜ける、ここはもっと行っていい”というのが、自在に、しかも的確に音が出てくるんですよね。だから、ますます演奏するのが面白くなってきてて、僕はそこのところをすごく楽しみにしてます。
千ヶ崎 同じようなことなんですけど、みんなが無理せず、それぞれの個性や良さや思い切りが演奏にちゃんと出てきてるように思うんです。みんな自然体で演奏して、それで噛み合って、誰かが前に出たり、誰かを前に押し出したりということが自然にできるようになってるし、それぞれ自分の技量を100%発揮できるようなアンサンブルになってきてると思うので、僕もいま演奏していてものすごく面白いですね。で、ツアーもすごく面白い演奏ができると思います。
堀込 アルバムではボーカルにエフェクトがかかっていたり、ミックスにもそれぞれカラーがありますけど、それが伝わるようなライブにしたいなと思ってるんですよね。ライブではライブの音像になってしまうわけですけど、それでも『ネオ』感というようなもの、他のアルバムとは感触が違うんだということを伝わるようにしたいな、と。具体的にどうするかはこれから考えます(笑)。それから、この間のライブで「P.D.M.」という1stアルバムに収録したインストの曲をやったんですよ。木管のアンサンブルが中心だったものをヴァイオリンとペダルスティールに置き換えてやったんですけど、ものすごくいい雰囲気だったんですね。もしかしたら、この編成でやったほうがいいんじゃないかという曲もあるだろうから、そういう曲を振り返って探してみて、新しいものと混ぜ合わせて、全体としては初めてのものを見たという印象のライブにしたいなあと思っています。