永遠のピエロ、終わらないニューロティカ【横山シンスケのライブオアダイ】連載:第8回

コラム | 2017.12.13 15:00

ここでコラムを書くようになってから、元々好きだというのもあるが、昔の色んなロック雑誌とかを参考資料的な意味も含めて、古本屋やネットで購入する事が増えた。
 
それで昔のロック雑誌を今読んでみて、毎回つくづく思う事は、当時から今現在も活躍するロックアーティスト達も、そしてそれを見ていた僕らも、そのお互いが、当時はこんなにも長く続かないだろうと、みんな思っていたという事だ。

今も活躍するストーンズや、ビートルズのポールも、初期のインタビューで「長く続くものではない」というような発言をしている。そして日本の今も活躍するロックアーティスト達も、若い時のインタビューですでに「あと何年か続けられたら嬉しい」という感じの発言をしてる事が多い。
でもその発言はどれも、そのアーティストの自信の無さや、ネガティブな気持ちから出てきてるものではなく、やはり当時、ロックミュージシャンなんて仕事はそんなに長く続けられる訳ないだろうと、誰もが当たり前に思っていたという事なのだと思う。 実際に昔は、ロックのスキャンダラスな部分に飲み込まれて、死んでしまったアーティストも沢山いるし、死ぬ事はなくても、ビジネスとしてロックを続けていく事が困難となり、やめていったアーティストがほとんどだ。 でも、そのロックのワイルドサイドとビジネスの両方のストレスから逃れ、30年以上たった今も元気にロックし続けるアーティストが今こんなにも沢山いるというのは、当時はあまり誰も想像できてなかったような気がする。

要するにロックは死ななかったのだ。

時代の流れの中で、その昔「老いぼれる前に死にたい」と歌われた、危険で生き急いだロックの一部は、ある意味、本当に死んでしまったのだろう。
でも、「この街に生き はいつくばって 俺は生きる」と、生き続けるために歌われたロックは、はいつくばって生き延び、今も生き続けているのだ。

ニューロティカ

ニューロティカは、その活動そのものが、メッセージとなってしまっているバンドだ。そのメッセージとは「好きな事を続ける事が人生で一番大切だ」という事だ。

ロティカは1984年に結成され、現在まで33年間、全く止まらずに活動を続ける驚異的なパンクバンドだ。
ロティカはデビュー当時、80年代後半から90年代前半にかけての、あの空前のバンドブームのド真ん中にいた。
激しいパンクバンドなのにボーカルのあっちゃんがピエロメイクなので、最初からロックシーンから浮いていて、ヴィジュアル系にも正統派ロックにもどこにも属せない、特殊でイロモノ的な扱いを受けていた。

ちょっと話を脱線するが、前記したように最近買ってきた1990年のバンドブーム真っ只中のロック雑誌の読者によるバンド人気投票結果があまりにも興味深かったので、お見せしたい。

参照:ON STAGE (1990年11月号)

いかに当時のバンドブームが混沌としていて、更にその中でロティカがあまりにも特殊な位置にいたという事を象徴するランキングだが、なんにせよロティカはそんなバンドブームの渦中で圧倒的に支持されていたという事がわかる。
 
そしてバンドブームも終わり、幾多あったバンド達は解散したり、自然とシーンから姿を消していった。そして、ロティカもそんな他のバンド達と同じように、人気は低迷していき、メジャーとの契約も切れ、メンバーも脱退していった。
 
でも、ロティカだけは終わらなかった。あっちゃんは新メンバーを入れ、ロティカを止めずに活動を続けた。
そしたら今度はそこに、あのメロコア、スカコア、そして青春パンクなどの波がやってきたのだ。
POTSHOTや175R、そしてデビュー当時からロティカの大ファンだった氣志團など、沢山の人気の若手バンド達がロティカに対しての絶大なリスペクトを公言し、それを知った若いロックファン達がロティカのライブに沢山集まり始め、何とロティカは再ブレイクしてしまったのだ。
ブームにいたロックファン達は離れても、ロティカを見て憧れて、バンドを始めたバンドマン達の愛がロティカの人気をまた復活させたのだった。
 
それから現在まで33年間、ロティカは一度も止まる事なく、ずっとアグレッシブにバンド活動を続けている。
ロティカの、歌や演奏の2倍速の猛スピードで刻まれる、あのロティカ独特の超カッコいいビートは今もバリバリだし、みんな一緒に歌いたくなるあっちゃんの元気が出る歌詞とポップな歌声も何も変わらない。いま大人気のWANIMAなどの、日本語で歌われる、明るく楽しいポップなパンクバンドというスタイルも、元祖はやはりロティカなので、最近の更に若いロックファン達からも今また注目が集まっている。
ロティカ自体は何も変わらずにバンド活動を続けてるだけなのに、そこに集まるロックファン達が自然とアップロードされていってるのだ。
ロティカが33年間ブレずに続けてきた活動が何一つ間違いではなかったという事が今こうやって実証されているのだ。こうやって書いてても、ホントに何て凄いバンドなんだと、つくづく思う。

■ニューロティカ / ガンギメナイト feat.ノリピー

僕は最近、「ロティカだけはこのまま永遠に終わらないのではないか?」と、本気で思う時がある。

ほかの今も活動を続けるベテランのロックバンドやロックアーティスト達は、当たり前だがみんな一人一人の人間なので、いつかは終わるだろうという気配がどこかにある。
でも不思議な事に、ロティカだけはその「いつかは終わる」という気配をいつまで経っても感じさせない。
理由を真面目に考えてみたのだが、それはやはり、あっちゃんのあのピエロの道化師メイクに答えが隠れてると思った。

ピエロは人を笑わせたり楽しませるのが仕事だ。
悲しみや寂しさも表現するが、それを通じて、生きている事の素晴らしさや、楽しく生きる事の大切さを人に教えるのが道化のピエロの仕事だ。
だからピエロはそこにお客さんが集まった時、その楽しさを集まったみんなに伝え続けなければならない。疲れたりイヤになったりして、途中で終わらすわけにはいかない。楽しませ続けるしかないのだ。

1990年

2002年

2014年

2017年 八王子ポカポカフェスタ

あっちゃんはピエロメイクを始めた時に、きっとどこかで本能的にその覚悟を決めたんだと思う。そうじゃないと33年間もこんな事を続けられないし、それを今も日本中で待ちわびる新旧の沢山のファンもいない。
道化のピエロに、終わりなど永遠にないのだ。

ニューロティカは今、クリスマス全国ワンマンツアーの真っ最中だ。
そして、12月23日土曜夜の渋谷の道玄坂という最高のシチュエーションの中で、記念すべき今年最後で最高のライブを行なう。 でもロティカは33年間ず~っとライブばっかやり続けてるので(今年もスゴイ本数やってるんで驚いた)、その後は年始の1月2日から、もうライブ三昧である。

永遠のピエロのいる、ロックンロールサーカスは終わらないのだ。

Fuckin’Xmasワンマンライブ

12月23日(土・祝) duo MUSIC EXCHANGE[渋谷]
※中学生以下、保護者同伴で入場無料(保護者は有料)
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横山シンスケ

渋谷のイベントライブハウス「東京カルチャーカルチャー」店長・チーフプロデューサー。その前10年くらい新宿ロフトプラスワンのプロデューサーや店長。外部企画、ライター、司会もやってます。僕は元ロフトの人間なので、ロフト代表バンドのロティカの記事を書けたのは本当に嬉しかったです。まあ書けない話もこの何倍も知ってますが(笑)。
横山シンスケ ツイッター:https://twitter.com/shinsuke4586
東京カルチャーカルチャー:http://tcc.nifty.com/