兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第181回[2025年3月前半・浦小雪 vs Sundae May Club、那覇でフラカン×2、などの5本を観ました]編

コラム | 2025.04.17 17:00

イラスト:河井克夫

基本的に音楽(でロック・バンド系が中心)、時々それ以外のフリーライターである兵庫慎司が、自分が生で(時々配信で)観た、すべてのライブの短いレポを、半月に一回のペースで書く連載の181回目=2025年3月前半編です。
沖縄でフラワーカンパニーズを2日続けて観たのがきっかけで、地元芸人のありんくりんを知ることができたのが、今回の大きな収穫でした。

3月1日(土)20:00 ハシリコミーズ(2人編成)、AIR-CON BOOM BOOM ONESAN、とだげんいちろう DJ:Donato Records @ 神田POLARIS

1年前から活動休止中の突然少年のベーシストであり、バンドの多くのレパートリーの詞曲を作ってきたとだげんいちろうは、以前から絵も描いている人で、2月28日(金)と3月1日(土)の2日間、神田POLARISで『とだげんいちろう個展「大脱走」』を開いた。
で、その2日目の方の夜の時間帯に「スペシャルパーティー」としてライブイベントを行ったのが、これ。Danato RecordsのDJ、とだげんいちろう、AIR-CON BOOM BOOM ONESAN、ハシリコミーズ、という出演順だった。
とだげん(略称)は、ギターにエフェクターをかけてばりばり響かせたりする、オルタナティヴ・フォークな感じの弾き語り。こんねき(という愛称らしいです)は、バック・トラックを使ってのひとりライブ。トリのハシリコミーズは、普段はサポートのベースとキーボードが加わった4人編成でライブをやっているが、この日はメンバーだけ=ボーカル&ギターの松本アタルとドラムのさわの2人での演奏だった。
3組とも30分強くらいのステージ。とだげん、かなりアバンギャルド、こんねきはさらにアバンギャルド、ハシリコミーズは音楽性自体はルーツ(ソウル・ミュージックとか)に根ざしたものだが、その鳴らし方がフリーキー。いずれも、次に何をやるか、次の瞬間どうなるのかが、全然読めなくて楽しかったし、とても刺激的な時間だった。

3月2日(日)18:00 浦小雪 vs Sundae May Club @ 東京キネマ倶楽部

浦小雪とSundae May Clubの対バン企画。バンドでデビューして、あとからソロでも、というのではなく、最初からソロとバンドで活動している浦小雪が、その二形態を両方やる企画である。
と思って観に行ったら、違った。最初に浦小雪がひとりで2曲歌ってから、ソロの時のバンド・メンバーが加わったので、ソロ弾き語り→ソロのバンド→Sundae May Club、と、自身のライブにおける三形態をすべてやる日なのだった。ソロのバンドでは、ピアノを弾きながら歌う曲もあり。
弾き語り2曲、ソロのバンド10曲、Sundae May Clubが本編14曲だったので、全部で26曲、出ずっぱり。で、頭から最後までずっとテンションが変わらないどころか、だんだん上がっていくという、この人のパフォーマーとしての地肩の強さがよくわかるライブだった。
あと、意識して分けているのか、自然にそうなるのかわからないが、ソロとSundae May Clubでは曲のテイストが異なることや、ソロの時は「ソロシンガーとバック・バンド」だけど、Sundae May Clubは「バンド」であることが、改めてよくわかったりもした。
あたりまえか。あたりまえだけど、あたりまえじゃなかったりする場合もあるのです、自分の経験や知識と照らし合わせると。

3月4日(火)19:00 the shes gone、This is LAST、reGretGirl @ Zepp DiverCity(TOKYO)

今年で3年目となるこの3バンドでのツアー『the shes LAST Girl』のファイナル=東京公演。DI:GA ONLINEにレポを書きました。
the shes gone×This is LAST×reGretGirl、3バンド競演の『the shes LAST Girl』東京ファイナル!大盛況でゴールテープを切る

3月7日(金)19:00 フラワーカンパニーズ、Shaolong To The Sky @ 沖縄Output

『正しい哺乳類ツアー』の番外編。沖縄県那覇市国際通りそばのOutputで、地元のバンド、Shaolong To The Skyとの2マン。
先攻のShaolong To The Skyとフラカンは、20年くらい前に対バンして以来の旧友とのこと。シンプルでストレートでちょいラウドなギター・サウンドにのせて、歌詞のひとことひとことを聴き手に突き刺すように歌っていくバンドである。
ボーカル&ギターの當山貴史は、中盤のMCで、9月20日のフラカンの日本武道館にエールを贈ってから「俺もいろいろあったけど、来月借金が終わるぜ!」と言って、拍手喝采を浴びていた。なんで借金があったのか、いくらあったのか、どれくらいかかって完済したのか、等の詳細は何も知りませんが、素直に「そうか、よかった」という気持ちになりました。
なお、當山貴史の通称は「たましい(TAMASYと書く)」であることを、この日知った。フラカンがそう呼んでいたし、あとで那覇在住の友人にきいたら「有名人だよ、たましいくん」だそうです。
フラカンは、まだツアーが続いているので、セットリストは書かない方がいい気がするし、でも、ツアーをやりながら度々セットリストを変えているから、書いていい気もする。じゃあ、えーと、そうね、本編13曲アンコール1曲のうち、『正しい哺乳類』からの曲は6曲でした、くらいの書き方にしておきます。その新しい曲たちもどれも好反応だったのは、シンプルに、ライブ・パフォーマンスがいいからだと思う。さすが。
なおフラカン、この翌日にも、Outputのステージに立った。

3月8日(土)12:00 『Output LAUGH PROJECT アベンジャーズSPECIAL 2025』 @沖縄Output/桜坂劇場ホールA/ホールB

沖縄Outputは、普段からお笑いのライブにも力を入れており、『LAUGH PROJECT』と銘打ったシリーズ・イベントを行っている。その拡大版がこの日。
那覇市には以前、国際通りによしもと沖縄花月があったが、一度海の近くのとまりんアネックスビルに移転になり(知らずに前を通って「あ、ここになったのか」と驚いた記憶あり)、その後、閉鎖になってしまった。調べたら、オープンが2015年3月、移転が2017年8月、閉鎖が2022年4月でした。
という状況を受けて、地元の芸人たちのために、お笑いのイベントを始めたのかもしれない。店長の上江洲さんがお笑い好きなのかもしれない。その両方かもしれない。
この日と翌日の2デイズで、桜坂劇場のホールAとB、Outputの3会場で開催、何十組も出演。音楽のゲストもありで、この日はフラカン、翌日は澤部渡(スカート)とクリトリック・リスがステージに上がった。
フラカン、Outputで芸人たちと立ちトークしたあとにライブをやって、そのあともまた立ちトーク。出番後はともかく、出番前というのはなかなかやりにくかろうに、難なくこなしていて、タフだなあ、と改めて思う。
このイベント、ヤーレンズ、エバース、オダウエダ、きつね、令和ロマン松井ケムリ(当初はコンビで出るはずだった)等々、よく東京から連れて来れたなあと感心するくらいの豪華なラインナップ。で、どれもいちいちおもしろくて爆笑した(特にヤーレンズ)。
沖縄の芸人も何組も出ていた。どの組もすばらしかったが、特にありんくりんというコンビにやられた。「エイサー練習」というご当地ネタのコントで、もうゲラゲラ笑ったが、前述の那覇在住の友人曰く「沖縄の人しかわからないところだらけのネタ」だそうです。じゃあもっとおもしろかったのね、あなたは。なんか悔しい。沖縄ではテレビにも出まくっている売れっ子だそうです。
おもしろすぎて、Outputと桜坂劇場A、二回観たし(みんな1日2ステージだったのです)、この日以来、ありんくりんのYouTubeを漁りまくっている。「地元の先輩まさとしにーに」というシリーズが特にすごい、笑えないくらいリアルで。動画の下に「※本動画は架空のキャラであり、特定の人物を模倣しているものではありません」と但し書きが入っているのも頷けるほどです。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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