兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第167回[2024年8月前半・佐野元春、カネコアヤノ、ホルモンvs生田斗真などの7本を観ました]編

コラム | 2024.08.29 18:00

イラスト:河井克夫

音楽などのフリーライター兵庫慎司が、半月に一回、自分が観たすべてのライブのレポを書く連載の167回目=2024年8月前半編です。前回で行ったフジロックは、雨が降ったりして、暑さに苦しむことはほぼなかったですが、今回のROCK IN JAPAN FESTIVALは、2日とも暑かった!自分が倒れて救護スタッフのお世話になったりしないよう、とにかく最新の注意を払って行動しました。

8月1日(木)19:00 佐野元春 & THE COYOTE BAND @ KT Zepp YOKOHAMA

福岡・大阪・名古屋・札幌・横浜・東京×2、と全国のZeppを回る……あ、仙台はZeppがないので(昔はあったんですが。仙台駅に隣接していて便利でした)SENDAI GIGSですが、それも含めて8公演を回ったツアー「2024年初夏、Zepp Tourで逢いましょう」の追加公演=9本目のファイナルが、この日。
6月5日に配信リリースされた「Youngbloods(New Recording 2024)」を、生で聴けるのを楽しみにしていたが、それだけではなかった。「君をさがしている」「Youngbloods」「ジュジュ」「誰かが君のドアを叩いている」「欲望」「インディビジュアリスト」と、なんと1曲目から6曲目までが全部ニューアレンジによる演奏。
「Youngbloods」だけじゃなかったのか!ダブ化した「インディビジュアリスト」なんて、特におそろしくかっこいい。そうか、「Youngbloods」以外の5曲も、もうレコーディングしてあるんだな、待ってればそのうち出るんだな、と決めつけたくなった。
で、7曲目から本編ラストの19曲目までは、THE COYOTE BANDになってから発表してきた曲が並ぶ。「愛が分母」や「クロエ」や「エンタテイメント!」のような、最近の曲が特にうれしい。
アンコールは「Vanity Factory」を歌ってから、「悲しきRADIO」「ダウンタウン・ボーイ」「アンジェリーナ」と、バック・トゥ・ザ・80’sな選曲。本編を観ている時はいつも「もうアンコールで昔の曲やらなくてもいいですよ、今が最高だから」と思う。でも、アンコールで赤いストラトキャスターを持って、このあたりの曲をやられると、結局、狂喜してしまう。と、いつも書いている気がする。

8月3日(土)18:00 カネコアヤノ @ 日比谷野外大音楽堂

この日が日比谷野音で、9月14日に大阪城音楽堂、という東阪の野音ライブの東京編。大阪がまだ終わっていないので、セトリには触らない方がいいですね。同じセトリでやるかどうか知らないけども。とりあえず、なので、この日もっとも記憶に残ったことについて書きます。
ラストの曲を終え、メンバー3人を紹介してから、カネコアヤノは言った。
「私からお知らせがあるんですけど。このメンバーで、バンドになりました!」
4人が去って流れた終演のアナウンスでも、「この4人でバンドになりました」ということが告げられた。で、家に帰ってから公式サイトを見たら、「大切なお知らせ」として、以下のような文章がアップされていた。
「この度、サポートメンバーとして活動していた、林宏敏(Guitar)、takuyaiizuka(Bass)、Hikari Sakashita(Drums)が正式メンバーとしてバンドに加入することとなりました。それに合わせて、今後バンドでの活動名義は『kanekoayano』となります。ソロ活動名義は『カネコアヤノ』での表記となります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
すんごい納得した。ライブを観るたびに、「これ、ソロアーティストとバックメンバーじゃなくて、4人のバンドだよなあ」と思うことが多かったので。それこそ今のこのメンバーになる前、ドラムがBobでベースが本村拓磨だった頃も、そう感じていた。ということは、今のメンバーも前のメンバーも、それぞれとてもいいプレーヤーだが、それが理由で僕が「バンドだなあと思った」のではなくて、カネコアヤノ自身が、そのようにこの集団を組織しているから、ということなのだと思う。
名義はソロだけど、ライブを観ると「バンドだなあ」と思わせる人もいれば、逆に、名義はバンドだけどソロとバックにしか見えない人たちもいる。で、必ずしも、前者は良くて後者はダメ、というわけでもない。
ないが、カネコアヤノの場合、バンドとして組織することが、いろんな意味で、いろんな点で、自分たちにとっても、聴き手にとっても、よかったのだと思う。なので、その実態に合うように、「kanekoayano」というバンドにしたのだろう。
なお、今年10月から12月までかけて、「カネコアヤノ」として10本の弾き語りツアーを行うことも、この日、発表された。

8月4日(日)15:30 マキシマム ザ ホルモンvs生田斗真 @ ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024の2日目 @ 千葉市蘇我スポーツ公園

生田斗真(とヤン・イクチュン)主演の映画『告白 コンフェッション』の主題歌をマキシマム ザ ホルモンが担当、「殺意vs殺意」を書き下ろし、その曲に生田斗真が参加したバージョンもリリース。そのMVも作られた。
ということなどが発表された際の、ホルモンの公式YouTubeチャンネルで、今年のROCK IN JAPAN FESTIVALのホルモンの出演時にのみ、生田斗真が参加することが、アナウンスされた。なので、これは観なければ!となったのだった。
で。生田斗真、旧ジャニーズにおいては数少ない「歌わないし踊らない」「グループに所属していない」「専業の俳優」じゃないですか。Jr.の頃は先輩のバックで踊ったり、グループの一員だったりしたこともあったけど、もう大昔じゃないですか。演劇の舞台での経験は豊富にある人だけど、何万人もの前で、しかもホルモンと一緒に歌う、ってどうなん?大丈夫?と、正直思っていたのだが。
大変失礼しました。生田斗真、この人数(4〜5万人くらい!)の前に立つのがあたりまえ、ぐらいの、自然、かつ堂々たるパフォーマンスだった。5曲目が終わったところで、上ちゃんにピストルを突きつけながら登場。ダイスケはんが使っている「津田製麺所」の木箱の「津」を「生」に貼り替えて「生田製麺所」にし、ホルモンと共に「殺意vs殺意」を、シャウトしまくり&暴れまくりながら歌う。さらにホルモン恒例の「恋のおまじない」を主導して行い、「見たことない景色だー!」と絶叫。続くラスト曲「恋のメガラバ」でも共演、オーディエンスを盛り上げまくった。
あと、ホルモンに生田斗真が出ることを知らなかった、というかそもそも「殺意vs殺意」のことも知らないと思われる参加者たちの反応が、おもしろかった。「え、生田斗真!?嘘、なんで!?」みたいな具合で、びっくりしまくっていて。そりゃまあびっくりしますよね。

8月4日(日)18:00 ROTH BART BARON @ LINE CUBE SHIBUYA

この日、ROCK IN JAPAN FESTIVALにホルモンを観に行くことに決め、その手配を終えたあと、同じ日のROTH BART BARON「BEAR NIGHT 5」@LINE CUBE SHIBUYAの、レポの依頼があった。
電車のアクセスを調べたら、ホルモンが終わってすぐ会場を出て、すんごい急いで移動すれば、開演時刻の18時前にLINE CUBE SHIBUYAに着ける、でも電車1本遅れたら、18時をちょっと過ぎてしまう、ということがわかった。
なので、すんごい急ぎました。間に合いました。DI:GA ONLINEにレポを書いたので、未読の方、ぜひ。
ROTH BART BARON、今年も豪華ゲストを招き「BEAR NIGHT 5」開催!過去最大規模の動員を記録し、真夏の夜を彩る

8月9日(金)19:00 真心ブラザーズ @ なかのZERO小ホール

年イチ恒例の弾き語りツアー『真心道中歌栗毛』のファイナル。ライブで聴いたのいつ以来か憶えていない、ひょっとしたらリリース当時のライブ以来かも(1991年のサード・アルバム『あさっての方向』収録曲) 、というほどレアな「赤いラジカセ」、「三楽会」コーナー(開演前にお客さんが書いたリクエストを箱から引いて歌うコーナー)は「COSMOS」と「真夏といえども」、RCサクセションのカバー「2時間35分」、桜井秀俊も今日初めて聴いたという新曲「鈍感音頭」、服部良一トリビュート・アルバムでカバーした笠置シヅ子「ヘイヘイブギー」、本編ラストは「Dear,Summer Friend」(特に好きなんです)などなど、レアな曲やうれしい曲がいっぱい、いつもながらYO-KINGと桜井の掛け合い爆笑MCもいっぱいの、それはもう楽しい時間だった、のだが。
10曲目に「真夏といえども」のイントロを経て、ふたりが歌い出した、と思ったら、けっこうでかい地震が発生したのだ。会場のあちこちであのイヤな音でスマホが鳴り、曲がストップ。安全を確認するためインターバルを、ということで、いったんふたりは退場、お客さんたちは「待ち」の時間になった。が、7〜8分でふたりが戻って来て、「真夏といえども」をやり直すところから再スタート。大事に至らなくてよかった。
なお、再度「真夏といえども」のイントロを弾き始める前に桜井、「こんな時こそ、『鈍感音頭』の心意気で」。確かに。

8月11日(日)14:00 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024の4日目 @ 千葉市蘇我スポーツ公園

8月4日のROCK IN JAPAN FESTIVALは、自分の都合でマキシマム ザ ホルモンだけしか観れなかったが、この日はわりとゆっくりできた。観たのは以下。全部観たのも一部観たのも含みます。
NiziU→ハルカミライ→宮本浩次→Creepy Nuts→Tani Yuuki→yama→サバシスター→星野 源→なとり
NiziUがMCの度に「今日は見せたい曲がいっぱいあって」とか「次の曲ではまた違ったNiziUが見られると思います」という言い方をしているのが新鮮で、「聴かせたい」「聴ける」じゃないんだ、そらまあ確かにそうよね、と納得したり。初めて宮本浩次を観たと思しき人たちが、その歌のすさまじさに唖然としている光景に、関係ないのに自分まで誇らしい気持ちになったり。
Creepy Nutsのヒット曲連発っぷりが、もうえぐいくらいのレベルだったり(ヒット曲を選んでやっている、のではなくて、普通にやるとヒット曲連発になる、という感じ)。サバシスターのパワー爆発っぷりにやられたり。
そのまま街のライブハウスに持って行けそうなシンプルな編成で、とんでもない音&声を出している星野 源に圧倒されたり。なとりのライブにシークレット・ゲストでimaseが出て来て「観ててよかった!」と思ったり──と、どのアクトも刺激いっぱいで、楽しい日でした。
余談。蘇我に移ってからのROCK IN JAPAN FESTIVALのいちばんの問題って、会場のキャパの割に、最寄り駅が小さいことなのですね。なので、ヘッドライナーの星野 源が終わってそのまま出たら、大混雑の渦中に飛び込んで行くことになる。でも星野 源の前に帰るのはありえない。だったらもう開き直って遅くまでいよう。と決めて、なとりを観終わったあとも、しばらく会場でうだうだして、空くまで待ってから帰りました。

8月14日(水)19:00 曽我部恵一、大武茜一郎 @ 下北沢440

4月30日の新代田FEVERのワンマンを最後に活動休止した突然少年の大武茜一郎は、その休止のちょっと前から、下北沢440で、先輩ミュージシャンと弾き語りの対バンを、シリーズ・ライブみたいな具合で行っている。奇妙礼太郎とか、トモフスキーとか。で、この日は御大、曽我部恵一だったわけです。
いつもながら突然少年の曲は一切やらない、オリジナルのソロ曲で勝負する大武茜一郎の歌、すんごいエモーショナル、かつ切ない。弾き語りで聴くと、そのメロディと言葉の強さが、いっそうよくわかる。この組み合わせなので、当然曽我部恵一のお客さんの方が多かったと思うが、そこにもちゃんと刺さっている空気感だった。
で、曽我部恵一。もう圧倒的。自分が初めて彼のライブを観たのは、サニーデイ・サービス『若者たち』のリリースの時の渋谷クラブクアトロなので、もう30年近く観てきたことになるが、今がいちばんすごいと思う、この人のライブ・パフォーマンス。
歌もギターも自在の極み、その二者で表せない感情などない、というくらいの按配。ここで歌われる曲を、ひとつも知らない人でも……というか、曽我部のことをまったく知らない人でも、観れば、聴けば、このすごさは伝わると思う。
アンコールでは、大武茜一郎を呼び込んで、ふたりで「シモーヌ」。サビでハモるハモる。で、ダブル・アンコールは曽我部ひとりで「One Day」でした。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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