兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第166回[2024年7月後半・演劇やプロレスやお笑いやフジロックなどの9本です]編

コラム | 2024.08.22 18:00

イラスト:河井克夫

音楽などのフリーライターである兵庫慎司が、基本は音楽ですが時々演劇やプロレスやお笑いも含め、あとフェスなども含め、自分が観たすべてのライブ(基本生・たまに配信)のレポを書いて、半月に一回アップする連載の166回目=2024年7月後半編です。と、いつも書いていますが、今回きれいに音楽・演劇・お笑い・プロレス・フェスが揃いました。

7月16日(火)19:00 羊文学 @ LIQUIDROOM

毎年この時期恒例、リキッドルームの周年シリーズ企画(今年は20周年)の中の1本である羊文学のワンマン。途中の塩塚モエカのMCによると、リキッドルームが20年前にここ恵比寿に移ってオープンしたのは7月14日だそうで、この周年企画に3年連続で出演している羊文学は、1年ごとに1日ずつじわじわと、その14日に近づいてきているそうだ。
この分で行くと再来年には14日にやれますね、とのこと。ちなみに今年、14日に出演したのは、電気グルーヴでした。なお、ドラムの福田ヒロアがお休みに入って以降、サポートドラムはShe Her Her Hersの松浦大樹か元CHAIのユナのどちらか、という体制でライブを行っているが、この日はユナだった。最近ユナの確率が高いように思う。
で。なんかもう、気持ちいいくらいシューゲイザーだった、この日の羊文学は。今や横浜アリーナを満員にする人気バンドなのに……いや、「なのに」ってことはないが、音といい歌いっぷりといい佇まいといい、リキッドルームというヴェニューがすんごい似合う。まるでここで結成してここで育ったような。そんな事実はありませんが。
加えて、PAエンジニアの腕も大きいと思うが、出音がめちゃくちゃ良くて、浴びていて気持ちいいったらない。観れてラッキーだった。
新曲「Burning」もやった。アニメ『推しの子』のエンディング主題歌。

7月17日(水)18:00 『ふくすけ2024―歌舞伎町黙示録―』 @ 新宿THEATER MILANO-Za

1991年に初演、1998年に再演、2012年に再々演された、松尾スズキ作・演出の『ふくすけ』の、四度目の上演。松尾スズキの代表作のひとつで、過去も数々の名俳優たちが出演してきたが、今回は阿部サダヲ・荒川良々・皆川猿時・伊勢志摩・猫背椿・宍戸美和公といった大人計画勢や、町田水域・河井克夫・菅原永二・秋山菜津子といった松尾作品常連組に、黒木 華・岸井ゆきの・松本穂香・内田慈などなども加わった、「何もそこまで豪華にしなくても」と言いたくなるラインナップ。
僕は、1991年の初演は観逃していて(東京に出て来た年で、まだ大人計画の存在も知らなかった頃です)、1998年・2012年の公演は観ているが、今回、冒頭のシーンからびっくりした。松尾さんがかなり台本をリニューアルした、というのはきいていたが、もうこれ別の新しい芝居じゃん、という。物語の軸を担う役割を、コオロギとサカエ(阿部サダヲと黒木 華)に移したのがもっとも大きな変更点だが、それ以外もいろいろ変えてある。
でも、驚きつつ観ているうちに、だんだん「ああそうだ、こういう話だった」となっていき、ラストは「ああっそうそうそう、これっ!」。役者陣、常連組も初参加組も含めて、ひとり残らず(おそらく自分でも自覚してなかったレベルの)すんごい実力を発揮しているし。「よかった」や「おもしろかった」を「驚愕した」が超えていく演劇体験だった。

7月19日(金)19:30 TESTSET @ LIQUIDROOM

7月16日の羊文学や、前回書いた7月14日の電気グルーヴと同じく、これもリキッドルーム20周年シリーズの中の1本。2021年のフジロックにMETAFIVEが出られなくなった時、「METAFIVE特別編成」として、この4人(砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一)で初めて行ったライブを観て以降、都内のライブも地方のフェスやイベントも含めて、けっこうな回数観てきたつもりだが、3〜4曲経ったあたりから「あれ?今日これ、今まで俺が観た中でいちばんいいライブになるかも」と思い始めた。中盤でも思ったし、後半でも思った。
で、本編14曲アンコール3曲の全17曲を観終わった段階で、「はい、間違いなくそうです!」と、自分の中で結論が出て、楽屋挨拶の時、某スタッフに……って別に名前を伏せなくてもいいか、電気ファンにはおなじみのミッチーにそう言ったら、「そうです!」と肯定された。
なので、ほんとにそうだったんだと思う。ご本人たちがどう思っているかはわからないが。しかし、何がそんなによかったんだろう。演奏力やパフォーマンス力は、もともと高い人たちが集まっているので、普段から当たり外れはないし、音響や映像や照明もすばらしいけど、でもそれもいつもだし。
あ、今回からメンバーの立ち位置が変わった。4人が横並びでライブをやるバンドだが、左から永井聖一・砂原良徳・LEO今井・白根賢一だったのが、砂原良徳・永井聖一・LEO今井・白根賢一になりました。それもよかったんだろうか。よかったんだろうな。永井聖一が歌う曲もあるし。それだけが原因ではない、とも思うが。
あと、新曲を本編で1曲、アンコールで1曲やった。で、次の東京ワンマンが10月20日(日)Zepp Shinjukuであることを発表した。そして8月9日に、新曲「Sing City」のエディット版が、配信リリースされた。秋に、アルバムかミニアルバムのリリースが控えている、と予想します。楽しみ。

7月20日(土)18:00 空気階段 @ 天王洲 銀河劇場/PIA LIVE STREAM

毎年この時期恒例で、毎年規模を拡大している、空気階段の全国ツアー。『空気階段・第7回単独公演「ひかり」』というタイトルで、この日が全29公演の最終公演である。
東京公演はいつもチケット瞬殺、地方まで行けば取れそうだけど、毎年最後に生配信があるのがわかってるから、それで観ればいいや。というのが、自分は毎年続いていて、今年もPIA LIVE STREAMでチケットを買いました。
チケット代は2,500円で、システム利用料が220円。調べてみたら、去年はFANY ONLINE(よしもとのサイト)で買っていて、2,500円+システム利用料198円。一昨年はPIA LIVE STREAMで、チケット3,000円+システム利用料220円。一昨年もPIA LIVE STREAMで、チケット2,500円+720円だった。そうか、2022年だけ500円値上げしたけど、2023年に元に戻したのか。
オープニングのやつも含めるとコントは全部で7本。テンプレに頼らないし、これまでに自分たちが作ったパターンをなぞらない。自分たちが(他の人たちも)まだやっていないこと、まだ笑いが掘り出されてない場所、そういうこと・そういうところを探して、笑いを生んでいく空気階段のコント、毎年おもしろいし、毎年「どうやったらこんな発想できるんだ」と、つくづく思う。
あと、全体の最初にかかる曲が、じゃがたらの「タンゴ」で、最後にかかる曲が忌野清志郎の「JUMP」なのも、とてもいいなあと思う。世代的には彼らと合っていないのも含めて。

7月21日(日)14:00 DDTプロレスリング『WRESTLE PETER PAN 2024』@ 両国国技館

DDTを生観戦したことがなかったのと、前にこの連載で書いたエル・デスペラードの自主興行(≫ 兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第163回[2024年6月前半・デスペ自主興行、宮本浩次、くるり、やついフェス1日目などの6本を観ました]編)で、彼も出場することを知ったので、足を運んだ。両国国技館でプロレス観るの、久しぶり。なお、私、両国国技館で相撲を観たことがありません、音楽とプロレスばかりで。同じく、東京ドームで野球を観たこともありません。だからなんだと言われると困るが。
で、それはもう、おんもしろかった!全10試合があっという間(尺が短い試合が多かった、というのもあるが)。DDTのボス、高木三四郎の「無期限休養ロードFINAL」試合であるvs男色ディーノ戦に、飯伏幸太が現れてDDT復帰を直訴したり。平田一喜vsスーパー・ササダンゴ・マシンの試合でおなじみパワポ芸以外にも山と仕込まれていた各ネタ、たとえば「ササダンゴ・マシンが覆面を脱いで武藤敬司になる」などなどに爆笑したり。
中でも、自分的ベストバウトは、セミファイナルのエル・デスペラードvsクリス・ブルックスのデスマッチ。開始早々クリスがデスペのマスクをハサミでボロボロにすると、デスペ、自らマスクを剥ぎ取って応戦(カラコン装着でめちゃ怖い顔)。ステープラー(でかいホチキス)で身体に針を打ち合い、プラ箱で殴り合い、フォークがいっぱい生えたボードや有刺鉄線にお互いを投げつけ合い……という凄惨な戦いの末、見事、デスペが勝った。
なお、この翌日、デスペは自身のYouTubeチャンネルで、膝の治療のため、しばらく休養することを発表した。

7月25日(木)18:00 FUJI ROCK FESTIVAL 2024 前夜祭 @ 苗場スキー場

フジロック、おそらく2002年以來、木曜の前夜祭から行きました。ということなどをnoteに書いたので、未読の方はぜひ。(≫ 2024年のフジロック・フェスティバル雑感
なお、この前夜祭の日に観たアクトは、DJ MAMEZUKA、US、どぶろっく、SPARK!!SOUND!!SHOW!!でした。

7月26日(金)10:30 FUJI ROCK FESTIVAL 2024 1日目 @ 苗場スキー場

フジロック初日。この日観たアクトは以下。全部観たのも一部観たのも含みます。
新東京/ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA/家主/大貫妙子/マカロニえんぴつ/OMAR APOLLO/Awich/THE SPELLBOUND/FLOATING POINTS/THE KILLERS/電気グルーヴ

7月27日(土)10:30 FUJI ROCK FESTIVAL 2024 2日目 @ 苗場スキー場

2日目。この日観たアクトは以下。全部観たのも一部観たのも含みます。
syrup16g/THE LAST DINNER PARTY/THE BAWDIES/KID FRESINO/KRAFTWERK/THE YUSSEF DAYES EXPERIENCE/girl in red/2manydjs

7月28日(日)10:30 FUJI ROCK FESTIVAL 2024 3日目 @ 苗場スキー場

3日目。この日観たアクトは以下。全部観たのも一部観たのも含みます。
Suzu Toyama/ESNE BELTZA/RUFUS WAINRIGHT/WEEKEND LOVERS 2024”with you”LOSALIOS、The Birthday(クハラカズユキ・ヒライハルキ・フジイケンジ)/クリープハイプ/THE JESUS AND MARY CHAIN/RAYE/FONTAINES D.C./ずっと真夜中でいいのに。/RIDE/NOEL GALLAGHER’S HIGH FLYING BIRDS/TURNSTILE/あらかじめ決められた恋人たちへ/SUGIURUMN

というわけで、前夜祭4アクト、1日目11アクト、2日目8アクト、3日目14アクトを観たことになります。前夜祭と初日ではしゃいで、2日目でへばって、いかんこれではもったいないと最終日はがんばった、というのが、わかりますね。
基本、40代50代のおっさん数人で苗場までの足(レンタカー)と宿を共有、会場では基本的にそれぞれひとりで行動、その日の最後に、まだ残っている人は集まったり、集まらなかったり、という具合で、最終日は会場の端っこも端っこにあるステージ(苗場プリンスホテルの裏)、PYRAMID GARDENに集まった。で、そのステージのトリである、あらかじめ決められた恋人たちへを、24:10から1時間楽しんで、みんなはそこで宿に帰ったが、なんか寝るのが惜しくて、「まだ撮影がある」と言うカメラマン岸田哲平と一緒にオアシスまで戻った。で、哲平と別れてGAN-BAN SQUAREで、SUGIURUMNのDJを聴いたのだった。楽しかった。ヘトヘトになりましたが。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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