兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第158回[2024年3月後半・GLIM SPANKY、ハナレグミ、Saucy Dogなどの9本を観ました]編

コラム | 2024.04.16 17:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブのレポを書いて、1ヵ月に二回ペースでアップしていく連載の158回目、2024年3月後半編です。
3月前半は半月で4本、という、自分的にはめずらしい少なさだったのですが、3月後半は半月で9本という、自分的にはめずらしい多さになりました。まあ、そういうバランスの悪い月もある、ということです。なお、9本中4本は、既に単体でレポを書いています。

3月17日(日)17:00 ROTH BART BARON @ 渋谷Spotify O-EAST

ROTH BART BARONの「TOUR 2023-2024『8』」のファイナル公演。ぴあ音楽にライブレポを書きましたので、未読の方、ぜひ。
【ライブレポート】ROTH BART BARON、ツアーファイナルでTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT「世界の終わり」演奏

3月23日(土)17:30 フラワーカンパニーズ @ HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3

フラワーカンパニーズ35周年ツアー『今が旬』(つくづくいいタイトルだと思う)の2本目。CDシングルでリリースされた新曲、2曲とも演奏。他は「これ、ライブで聴くのいつ以来だっけ?」みたいな新旧のレア曲がいっぱい並んでいて、自分みたいにしょっちゅう観ている人間にとって、とてもうれしいセットリストだった。おそらく、この日が東京圏のさいたま新都心の会場だったからそうしたのであって、行くのが久々の地方とかだとまた違うんだろうな、もっとおなじみの曲を増やしたりするんだろうな、と思う。
フラカンのような超ベテランのDIYバンドが、各地のライブハウスを細かく回るツアーを、年に二回も三回もやっていると、さすがにお客さんが毎回は来なくなったり、「年に一回でいいやあ」みたいな按配になったりしても不思議はないのに、全然そうならないのは、バンド側がこんなふうに「今回も観なきゃ!」と思わせる内容のライブを、しているからだと思う。

3月24日(日)15:35 bokula.(ツタロックフェス2024) @ 幕張メッセ

3月23・24日、今年は2デイズで幕張メッセで開催された『ツタロックフェス2024』に、bokula.だけを観に行った。って、めちゃくちゃもったいない行き方だが、以下のような事情があったのだった。
3月25日にbokula.のインタビューの仕事が入った。半年くらいライブを観てないので、できれば観ておきたい、と調べて、前日の『ツタロック』に出ることを知る。が、自分はその日は朝11:30から別のインタビュー仕事で、夕方は18:00から日比谷野音でGLIM SPANKYを観る……あ、bokula.の出番、15:35じゃん!
というわけで、11:30から恵比寿でインタビュー仕事をして、終わって幕張メッセまで行って『ツタロック』でbokula.を観て、終わったらすぐ出て日比谷野音へ、という、慌ただしいスケジュールになった。
ただ、そこまでして観てよかった。今のbokula.の勢いが、よくわかったので。サウンドチェックの時から、すごい集客ですごい盛り上がり、本編が始まったらもうみんな歌う歌う、叫ぶ叫ぶ、跳ぶ跳ぶ。みんなほんとによく曲を知っていて、完全にワンマンみたいな空気感である。
ただ、この日の豪華なラインナップを鑑みるに、bokula.だけを目当てに来ました、という人は少ないはずで、つまりいろんなバンドのいろんなファンに注目されているし、すでに好きになられている、ということなのだと思う。バンド自体のパフォーマンスの勢いも含めて、圧倒された、30分で。

3月24日(日)18:00 GLIM SPANKY @ 日比谷野外大音楽堂

ニューアルバム『The Goldmine』リリース・ツアーのセミファイナル(なおファイナルはふたりの地元、長野での公演)である日比谷野外大音楽堂。3月の野音で雨、というハードなコンディションだったが、それを跳ね返すような、ライブ・バンドとしての地肩の強さを見せつけるパフォーマンスだった。あと、雨だろうが晴れていようが、つくづく日比谷野音が似合う、GLIM SPANKY。
4月4日の朝日新聞夕刊に、ライブ評を書きました。会員制で有料ですが、デジタル版にも載っているので、読める方はぜひ。
(評・音楽)GLIM SPANKY 聖地に負けぬ風格と瑞々しさ

3月26日(火)19:15 突然少年、ハシリコミーズ @ 梅ヶ丘LINKY DINK STUDIO 7st

いわゆるリハーサルスタジオの東京圏の大手チェーン、リンキーディンク・スタジオの梅ヶ丘店の、いちばん広いスタジオを使って、お客さん30人限定で、この2バンドがライブをやる、という、ちょっと特殊な企画。
スタジオなのでステージはなく、楽器を部屋の四隅のうちのひとつに寄せてバンドはそこで演奏し、お客はそれを囲むように立って観る、という状態。
PAも、リハスタでマイクとかの音を調整する用のちっちゃい卓だけで、先攻の突然少年の時はハシリコミーズのアタルが、後攻のハシリコミーズの時は突然少年のカニユウヤが、エンジニアリングをやっていた。
という状況で、演者と客の物理的な距離がすごく近かったせいもあるだろうが、どちらのライブもどえらくよかった。
突然少年、最近のライブで、音源未発表の新曲を何曲もやっているのだが、それらの歌詞やアレンジの細部がじっくり味わえたし。
ハシリコミーズは──この日の選曲のせいかもしれないが──たとえば、昔の日本で言うと大瀧詠一や南佳孝のような、ソウル・ミュージックをルーツにしたポップスと同系統の楽曲を、ギター・ベース・ドラムの3ピースでパンキッシュに演奏すると、こうなる。そこがたまらなく素敵なバンドなんだ──ということに、改めて気がついたりもしたし。
なお、突然少年、4月30日新代田FEVERワンマンを最後に、ドラムのピエール畳がバンドを離れることが、以前からアナウンスされていたが、追加で、バンド自体がその日を最後に、無期限で「休憩と反省」に入ることが発表になった。そうか。うーん。

3月27日(水)19:00 ハナレグミ @ LINE CUBE SHIBUYA

大阪と東京で開催された『THE MOMENT 2024』の東京編。リアルサウンドにレポを書きました。ほんとにもうどうしましょう、と言いたくなるくらいすばらしかったので、未読の方、ぜひ。
ハナレグミ『THE MOMENT 2024』になぜ感情を揺さぶられたのか すべての必然が伝わるライブに

3月28日(木)19:00 GRAPEVINE @ Zepp DiverCity

ツアー『Almost There Tour』の、東名阪で行われた追加公演のファイナル。ツアー本編の東京公演=10月26日LINE CUBE SHIBUYAも、この追加公演のZepp DiverCityも、ド平日なのにびっしり満員。つくづく根強い、このバンドの人気。
ツアー本編とは異なるセットリストは、本編20曲・アンコール4曲の、全24曲。『Almost There』収録の11曲はすべて演奏、12月6日にリリースされた新曲「Loss(Angels)」もプレイ。
他のそれ以前の曲も、選曲が渋めというか、なんとも絶妙で、1曲1曲を聴いているうちに、「このままの感じで行ってね、後半で『光について』とか『スロウ』とかやらなくていいからね!」という気持ちに、すっかりなっていた。
で、アンコール、「阿」「God only knows」「Shame」と来て「Arma」で締めてくれたので、とても満足でした。

3月30日(土)18:00 Saucy Dog @ Kアリーナ横浜

Saucy Dogのキャリア最大規模のアリーナ・ツアー『Saucy Dog It Re:ARENA TOUR』のファイナル、Kアリーナ横浜2デイズの1日目。
このDI:GA ONLINEにライブレポを書きました。
Saucy Dog、自身最大規模のアリーナツアー!2DAYS完売の横浜・Kアリーナ、セミファイナルをレポート

3月31日(日)17:30 帝国喫茶 @ 静岡UMBER

前回のツアー(昨年秋)の東京公演は、先に別のライブのレポ仕事が入っていて、行けなかった。で、今回のツアーもそうなってしまったので、どっか近場で観れないかな、とスケジュールを調べたら、この日の静岡があったので、行きました。
フォーキーな面、ポップな面、激しくラウドな面、優しい面、内省的な面、狂気に満ちた面など、このバンドが搭載しているすべての武器を、アンコール合わせて1時間40分くらいの尺にギュッと圧縮して聴かせるような・見せるような、濃くて充実したステージ。
お客さん、満員ではないけど、このキャリアで、初めて来た静岡で、ここまで入ってるのすごくない? と思うくらい賑わっていたし、何よりも、みんなとても温度が高い。「試しに観に来てみた」みたいな人はゼロ、ひとりひとりが待ち焦がれてワクワクしている空気。始まるとみんな、めちゃめちゃ一緒に歌ってたし。今日ここに来た人、次のツアーも必ず来ると思う。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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