兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第116回[2022年9月後半・『INSPIRE TOKYO』の1日目、銀杏BOYZ、フラワーカンパニーズ、『TOKYO ISLAND』の2日目と3日目の昼まで、エレファントカシマシ、THE COLLECTORSと優里とエレファントカシマシとスピッツが出た『有明サンセット』2日目、Dragon Ash、の7本を観ました]編

コラム | 2022.10.20 15:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、半月の間に観たすべてのライブ(主に音楽、時々それ以外)のレポを書く連載の116回目、2022年9月前後半編。今回は全部で7本、うち3本がフェスやイベントで、4本がワンマン。「半月の間にエレファントカシマシを二回観れた」「レキシを久々に観れた」「フラカン5年ぶりの日比谷野音」「Dragon Ashもワンマンでじっくり観たのは久しぶり」など、個人的トピックの多い回になりました。

9月17日(土)11:00 『J-WAVE presents INSPIRE TOKYO』1日目@国立代々木競技場 第一体育館・第二体育館

 屋内の大会場イベント『J-WAVE LIVE』を毎年夏に開催してきたJ-WAVEが、コロナ禍で通常の形では開催できなかったインターバル期間を経て、その『J-WAVE LIVE』をリニューアルする形で立ち上げた「東京どまんなか! 音楽、マーケット、食が楽しめるJ-WAVEがおくる究極の都市フェス!」(公式サイトより)というコンセプトのフェス。この日は、3日間開催のうちの1日目。
 代々木競技場の第一&第二体育館の外周エリアに、マーケットやフードコートが設けられていて、そこはフリースペース。ステージは2つあって、第一体育館の前半、第一体育館の後半、第二体育館の終日、の3種類でチケットが別売りになっている。その日のすべてのステージを観れる1DAYチケットと、3日間のすべてのステージを観れる3DAYSチケットも販売あり。
 僕が入手できたのは、この初日の、第一体育館の前半と後半のチケットだった。その前半と後半の間は、3時間ぐらいブランクがある。で、後半の開演時刻である18時から、六本木方面でインタビューの仕事が入った。という状況だったので、長く会場にいようとがんばるのはあきらめて、ピンポイントで観れるものを観るようにした。結果、go!go!vanillas 、クリープハイプ、DISH//、KICK THE CAN CREWの最後の2曲(「アンバランス」と「マルシェ」だった)、レキシを観ることができた。
 バニラズはコロナ禍前よりもあきらかに支持される規模がでかくなっているなあ、とか、クリープハイプは今年どのフェスで観ても、「全世代に愛されている感じ」で、特に若い新しいファンが大量についてるのがすごいなあ、とか、いろいろ思いながら観たが、特に良かったのはレキシ。池ちゃんの歌そのもの、バンドの演奏そのもののすばらしさが、強く届くステージだったように感じた。
 個人的に、レキシのライブを観れたのが久々だったから、というのもあるだろうけど。それに、登場第一声が「上がってんの? 下がってんの?」だったり、INAHOを降りながら「リライト」を歌ったり(2つ前にアジカンも出ていたのだ)と、いろいろやってくれて爆笑をかっさらってもいたんだけど。まあ、自分はそう感じた、という話でした。

9月22日(木)18:30 銀杏BOYZ@中野サンプラザ

 「銀杏BOYZ特別公演『君と僕だけが知らない宇宙へ』」というタイトルの、東京と大阪でのホールライブの東京編。このDI:GA ONLINEでもレポートされたので、ライブの内容の詳細については、そちらをどうぞ。≫ DI:GA ONLINE:銀杏BOYZ、特別公演をレポ。「伝説」の名に値するSHOW!現時点における、バンドと人間・峯田和伸の「集大成」
 というわけなので、個人的な印象だけ書く。これ、下手したら、自分が今まで観てきた銀杏BOYZのライブの中で、いちばんいいんじゃないか? 結成当時から観てるけど。もっとさかのぼると、GOING STEADYの途中からか。
 銀杏BOYZが今の5人になってから、というだけでなく、その前の4人編成だった頃まで含めての、このバンドの総決算であり到達点、とまで言っていいかもしれない。と、サンプラの客席で、そのすさまじさに身体をフリーズさせながら、思った。
 唯一ケチをつけるなら、こんなにすごいライブが、東京と大阪の2本だけだったこと。せめて5大都市くらい回らないと、もったいなさすぎる。

9月23日(金祝)17:30 フラワーカンパニーズ@日比谷野外大音楽堂

 フラカン、5年ぶり・8回目の、日比谷野音ワンマン。あいにくの雨だったが、それも含めていろいろ感無量になった、観ていて。ぴあにレポを書きました。ぜひ。≫ぴあ:フラカン、5年ぶり8回目の日比谷野音公演をレポート!「来年2023年、僕たち34周年、そして54歳! なんと波平と同い歳!」

9月24日(土)11:00 『TOKYO ISLAND』2日目@海の森公園

 お台場エリアの埋立地の島にある公園(ただしまだ開園していない)で開催する、という、いろんな意味で、あらゆる角度から、前代未聞のフェス。
 行って、このDI:GA ONLINEで体験レポを書いてください、と依頼があったが、3日間のうちの1日目と3日目は、既に日比谷野音でレポ仕事が入っていた。なので、2日目に行って、そのまま泊まって(キャンプできるのです)、翌日の昼頃まで観てから、日比谷野音に行く、というスケジュールにした。
 で、そのレポはこちらです。≫ DI:GA ONLINE:お台場の埋立地の島で初開催。前代未聞だらけのフェス「TOKYO ISLAND」体験記

9月25日(日)17:00 エレファントカシマシ@日比谷野外大音楽堂/Streaming+

 1990年から毎年行われて来たが、2021年に遂にその連続開催記録が途切れてしまった、でも今年は復活した、エレファントカシマシの年中行事である日比谷野音ワンマン。生配信もあり。
 某所でレポ仕事をいただいて観た、ゆえにこっちで詳しく書くのは憚られるので、ちょっとだけ。まず、一部も二部もアンコールも、本当にうれしいセットリストだった。そして、全編を通して、エレファントカシマシというバンドの得難さがひしひしと感じられるパフォーマンスだった。
 一昨日も昨日も悪天候だったのに、この日は快晴で青空だったのも、何か「うわあ、そうかあ」と思わされるものがありました。その3連休の3日とも野外でライブを観ていて、1日目と2日目は雨に打たれ放題打たれた者としては。

9月29日(木)18:00 THE COLLECTORS、優里、エレファントカシマシ、スピッツ@東京ガーデンシアター

 スピッツ、夏から秋にかけて『ロックのほそ道』(東北)、『ロックロックこんにちは』(大阪)、『新木場サンセット』(東京)と、各地のプロモーターと組んで毎年イベントを行ってきたが、コロナ禍で止まっていた、それが3年ぶりに開催された。
 で、東京は、新木場スタジオコーストがなくなってしまったので、東京ガーデンシアター2デイズ、という、大規模会場での開催になった。この日は、その2日目。THE COLLECTORSは常連だし、優里もなんとなくわかるが、エレファントカシマシの出演にびっくりした。30周年ツアーの締めのさいたまスーパーアリーナ(2018年3月18日)にスピッツが出てくれたから、そのお返し、ということなのか、それとも日比谷野音の直後なのでこっちも出ようと判断したのか、その両方なのか。
 ただ、このような超人気イベントって、レポ仕事でもない限り、関係者招待は、ごく近い人だけに限られる。で、正直、スピッツサイドに普通に招待してもらえるほどの関係性ではない、自分は。
 なので、絶対当たらないだろうなあと思いながら、先行の抽選に申し込んだら、なんと当たったのだった。びっっっっくりした。むこう3年分ぐらいのチケット運を使い果たしたと思う。行ってみたら自分の席、広い広い東京ガーデンシアターの、最上階の、最後列でした。後ろは壁。「ギリギリ当たった」ってことか。
 トップは、ご本人たち曰く「スピッツのイベントでは永遠のオープニング・アクト」、THE COLLECTORS。以前に『新木場サンセット』で、調子に乗って「ロビンソン」のカバーをやったら抗議のメールが殺到した、だから今日はスピッツがライブで一回もやったことがない曲を選んだ、と、「シャララ」を演奏する。2006年のシングル「魔法のコトバ」のカップリング曲。確かにこのバンドによく合っている。
 「今までのライブでいちばん緊張しています」「最初に弾き語りした曲は『チェリー』です」「路上ライブでいちばんカバーしたのはスピッツです」と、二番手の優里、とにかく今日ここに呼ばれたことが感無量であることを表す。で、カバーしたのは、その路上ライブ時代にやっていた曲の中から「夢じゃない」。まさに今の正直な気持ちなんだろうな、このタイトル。もちろん「ドライフラワー」や「ベテルギウス」等のヒット曲も披露。
 で、エレファントカシマシは、「地元のダンナ」「デーデ」「星の砂」「珍奇男」「RAINBOW」「悲しみの果て」「so many people」という、4日前の日比谷野音からエッジィな曲を抜き出したみたいな7曲。メジャー・デビューの時のインタビューで好きなバンドを聴かれ、「ナーヴ・カッツェとエレファントカシマシ。エレカシは正座して聴いてます」と言った草野マサムネ、これはさぞかしうれしかろう、とつくづく思う。
 THE COLLECTORSの「シャララ」、まるで彼らの曲のようだった、考えたら自分は学生の頃からTHE COLLECTORSを聴いていたから、その影響が出ている曲なんだと思う、という話や、優里の歌はすごい、あの声なら九九を歌っても感動する、という話や、アマチュアの頃、お客さんに「エレファントカシマシというすごいバンドがいる、マサムネさんも宮本さんにみたいにもっと自分をさらけ出さなきゃダメだ」と言われた話など、招いた各アクトへのマサムネのコメントが、いちいち冴えていたスピッツ。「恋する凡人」で始まり「不思議」や「正夢」や「メモリーズ・カスタム」や「大好物」等を経て、「醒めない」で終わる11曲だった。
 このシリーズ・イベントではスピッツ、何かしらのカバーをやるのが恒例になっているが(昔、44マグナムの「I’M ON FIRE」をやっていて大笑いしたことがある。私もコピーしました、高校の頃)、今回はその「お客さんにダメ出しされた」というMCに続いて、BOØWYの「ONLY YOU」を披露した。田村明浩、松井常松ばりのダウン・ピッキングでルートを刻むが、途中で限界が来てオルタネイト・ピッキングに戻る。
 あと、中盤で「夏が終わる」をやってくれたのがうれしかった。で、後半の、メンバー紹介&ひとりずつMCのコーナーで、キーボードのクジヒロコが「『夏が終わる』をやっちゃったから、今日で夏は終わりです」と言ったのもよかった。サポート・メンバーだけど、いつも、もっとも簡潔に的を射たことを言うのは、この人な気がする。

9月30日(日)19:00 Dragon Ash@Zepp Haneda

 Dragon Ashのデビュー25周年ツアー『DRAGONASH 25th ANNIV.TOUR 22/23~ENTARTAIN~』、全25本中の5本目。このDI:GA ONLINEにレポを書きました。
 ツアー序盤なのでネタバレどうしようかしら、と悩んだ結果、ネタバレしてるようで、してないようで、まあまあしてるけど、これならセーフの範囲じゃないかしら。というところに着地できたと思うので、未読の方はぜひ。
 ≫DI:GA ONLINE:Dragon Ash 25周年ツアー、スタート。全25本中の5本目=9/30(金)Zepp Hanedaをレポ!

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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