が、ご存知のように、2020年の2月の末頃から、コロナウィルス禍でライブやイベントが自粛されるようになりました。それでもまだ3月は、いろんなバンドが「ライブハウスから無観客生配信ライブ」とかやっていたので、観て書いたりしたのですが、4月になるあたりから「メンバーやスタッフが一箇所に集まるのもよくない」ということになって、それも激減しました。
なので、4月前半は、めっちゃ苦肉の策ですが、ライブとかは関係なく、その時期に聴いたニュー・アルバムでよかったもの、4作について書きました。
そして今回=4月後半ですが、幸いにも、インスタグラムやYouTube等を使って、アーティストがひとりで生配信ライブを行っているものを、4本観ることができたので、それについて書きました。生でやっているものをリアルタイムで観たやつに限る、というルールです。
あと、書いてみたら全然「ひとこと」じゃねえよ、という分量になってしまいました。
4月21日(火) 20:00 Caravan @ Instagram
Caravanのプライベート・スタジオというか、仕事部屋というか、本人曰く「茅ヶ崎のアジト」にてライブを行い、インスタグラムで生配信。
ひとりでアコースティック・ギターを弾きながら&時折ハープを吹きながら、スタンディングで弾き語り。マイクスタンドは立てているが、ギターは生音の模様。ギターにシールドが付いていなかったのと、Caravan普段はギターをループさせて重ねたりするんだけど、そういうのはやらなかったので、そうなんだろうな、と、判断しました。
ちょっと見ない間に髪を切って若返った印象のCaravanが、この日歌ったのは「Sweet Home」「Bye-bye bluebird」「Magic Night」「Stay Home」「Night song」「ハミングバード」の6曲。
「Magic Night」は3月30日にリリースされたばかりの配信シングルで。「Stay Home」は、この日初めて披露された新曲。タイトルに表れているとおり、現在の状況に対応して書いたと思われます。で、歌い終えて、「この曲に関しては、折を見て、みんなにプレゼントというか、フリーダウンロードって形でやっちゃおうと思います」。
「Bye-bye bluebird」は、2011年のアルバム『黄金の道 soundtracks』の収録曲で、歌う前に「次は、普段あんまライブではやんないレアな曲を。昔、BSのテレビでナレーターをやっていて、アメリカの田舎を回る番組で。その番組の中で生まれた曲です」と説明(※BS-TBS『アメリカの町』)。
「Night song」は、Caravanが最初にインディ・リリースしたアルバム『RAW LIFE MUSIC』(2004年4月)のラストに入っている曲。「16年前の今日、Caravanは初めて『RAW LIFE MUSIC』ってアルバムを出して。それから16周年になります。その中に入ってる曲をやろうかな。Caravanって名前になって初めて作った曲です」という言葉に続いて、歌われた。そうか、4月21日だったのか。
というふうに、1曲1曲が、なぜ今日ここで歌われるのか、という必然に裏打ちされたセットリストだった。最後にアンコール的に追加されたのが、Caravan初期の代表曲「ハミングバード」だったのも、「『RAW LIFE MUSIC』の日だから、『RAW LIFE MUSIC』からもう1曲」という理由。
なお、最後にその「ハミングバード」を歌う前に、次は4月30日に、初めての試みとして有料の配信ライブ『“Live in Your Room #2”』を行うことを発表。ZAIKOの配信システムを使って実行、1,200円で参加可能、とのこと。
4月24日(金) 14:30/19:00 海北大輔 @ Instagram/YouTube
Lost In Time海北大輔、この2020年4月24日が40歳の誕生日。なので、この日から『海北大輔 弾き語り旅2020春「コニチワ40’sツアー』をスタートするはずだった。ちなみにその直前までは「サヨナラ30’sツアー」が組まれていた。
が、やはり、どちらも全公演中止にせざるを得ず、でもせめて誕生日ぐらいは何かやりたい、ということだと思うが、この40歳を迎える日にインスタグラムで『四十路突入記念40曲配信』ライブを行う、と発表。
で、Lost In Timeの最初のアルバム(『冬空と君の手』2002年6月リリース)から、2019年の最新音源まで、その中から40曲を選んで、1アルバムにつき3曲ぐらいずつ、昔→現在、の順番で歌っていく、というライブを決行した。
ただし、インスタグラムで生配信できるのは、一回につき60分までなので、まず昼の14:30過ぎから『冬空と〜』の1曲目の「花」でスタートし、3枚目のアルバム『時計』(2005年11月リリース)収録の「旅の途中」までの10曲を歌い終えた段階=15:18で、いったんインスタグラムを切る。で、15:24にすぐ立ち上げ直して、4作目『さぁ、旅を始めよう』収録の「さぁ旅を始めよう」から再スタート、60分後に同作収録の「まだ故郷へは帰れない」を歌って20曲完遂。という、ここまでが第一部。
で、第二部は19時過ぎに、2010年の6thアルバム『ロスト アンド ファウンド』の1曲目「ひとりごと」でスタート。7曲目の「ジャーニー」(8thアルバム『LIFE IS WONDER』2013年10月)の演奏を終える前に配信が切れ(MCが長かったり、5曲目と6曲目の間に突然KATZEの「STAY FREE」を歌ったりしたせいだと思います。しかし今年40歳でよく知ってたな、KATZEを)、すぐインスタグラムを立ち上げ直して「コップの砂」(同じく『LIFE IS WONDER』収録曲)でリスタート。
その後、歌いながら涙ぐんだり、詩を朗読したり、というようなさまざまなことを経て、2019年6月(配信は5月)リリースの最新シングル「Drifter」を、38曲目で歌い終える。で、4thアルバム収録の「旅立ち前夜」と、2019年9月のソロ作品集『early works #1』でようやく音源化された「ただ、抱きしめて」を追加して、40曲完遂したのだった。
完全に余談ですが、私、第二部の途中で、これがインスタだけじゃなくてYouTubeの「LOSTINTIMEofficial」でも観れることに気がついて、そっちに切り替えました。で、このライブ、後日、本人によって、その「LOSTINTIMEofficial」にアップされました。
4月26日(日) 15:00 藤井風 @ YouTube
子供の頃から(と言っていいですよね)、人の曲を、ピアノがんがん弾いてがんがん歌う映像をどんどんYouTubeにアップ、ピアノも歌もそれぞれバケモンレベルのすさまじさ、その両者が合わさるとさらにバケモン。というわけで大注目を集め、2020年5月20日にファースト・アルバム『HELP EVER HURT NEVER』をリリース……するより前、2019年11月17日の段階で、LINE CUBE SHIBUYA(新しくなった渋谷公会堂です)でライブをやって、ソールドアウトさせている。という事実からも、その大注目度の高さがうかがえましょう。6月14日に23歳になる、岡山弁の男です。
6月4・5日大阪Zepp Namba、26・27日Zepp Tokyoで行うはずだったライブ「Fujii Kaze “NAN-NAN SHOW 2020”」の中止を発表した時に、「これを受けて、ライブの代わりにはならないですが、4月26日(日)15時から、YouTubeでピアノ弾き語り生配信をさせていただこうと思ってます」とアナウンス。「人生で初めてのことなので、今からどきどきです」って、そうか、映像アップしまくってるからそういう印象なかったけど、生は初めてなんですね、言われてみれば。
で。観ました。藤井風、上半身は自分のグッズの長袖Tシャツ、下半身はジャージで(高校のジャージだそうです)、床に直で座って、ピアノをばんばん弾きながら、ワンコーラスぐらいずつ、人の曲をどんどん歌っていく。あるいは、歌わないでピアノだけ弾く曲もある。
「Over the Rainbow」から始まって、椎名林檎とか、テイラー・スウィフトとか、太田裕美とか、ポスト・マローンとか、泰葉とか。最後は、「グダグダ生配信しよってもきりがないから、『キリがないから』いう曲を聴いてください」と、ファースト・アルバムから1曲披露、そして、既発のシングル2曲「何なんw」と「もうええわ」を歌って締めた。全部で15曲ぐらい。
すごかった。こういうのを天才っていうんだなあ、と、つくづく思った。人の曲とか自分の曲とかもう関係ないというか。25年くらい前にトータス松本にインタビューした時、「昔は俺は、ギタリストとして、オリジナル曲とか一切作らずに、ブルースのカバーだけやって武道館まで行ったる! と思ってた」と言っていたのを、観ながら思い出したりした。
すごすぎて、もはや人の曲とか自分の曲とか関係ないというか。この人が歌えばこの人の曲というか。いるじゃないですか、人の曲を気に入るとすぐ歌って自分のものにしちゃう、「歌われる身にもなってみろ」と言いたくなる、モンスターな人。矢野顕子とか、ハナレグミとか。それと同じ箱に入っている人、というと、わかりやすいと思う。
でまた、最後にやった自分の曲も、どれもすごいし。メロディも言葉も自分の文体が完成していて。いや、完成とかじゃないか。最初からあたりまえに持っているのか、こういう人の場合。ピアノ弾き語りという手法で、あらゆる他のジャンルに拮抗しうる音楽表現、まさに。
なお、あまりにも評判がよかったようで、5月6日に第二回が生配信されました。一回目も二回目も、YouTubeのオフィシャルチャンネルで観れます。
4月30日(木) 20:00 Caravan『“Live in Your Room #2”』 @ ZAIKO
4月21日に告知された、Caravanが初めて行う有料配信ライブ、こちらも観ました。1,200円、全然高いと思わなかった、観た実感として。
あ、なぜタイトルに『#2』と付いているのかというと、前に『#1』=1回目をやっているのですね、2019年4月24日に。デビュー15周年を記念して、ということと、ライブを観たいけど物理的な条件などでなかなか足を運ぶことができない、というファンの声にも応えたい、ということが動機になって行われたのでした。その時は無料でしたが。
で、2回目のこの日、後半のMCで、「前回のYouTubeライブの時の感じと(やっていることは)同じなんだけど、全然目的というか心づもりが違っていて……」とか、「二回目で、まさかこんなことになるとは……」などと、複雑な思いを吐露したりもしていた。そりゃまあそうだろうなあ、と納得。
場所は前回と同じく、Caravanのアジトである(この日は「秘密基地」と言っていた)「Studio Byrd」。ただし、前回は無料だったけど今回は有料、ということもあってか、前回はカメラ1台(たぶんスマホ)だったのが、今回は2つか3つ入っていて、曲中にいろいろ切り替わる。で、Caravanの映像仕事をずっと手掛けてきた盟友でありCaravanに限らず日本のさまざまなアーティストのMVやライブを撮ってきた番場秀一が、そのカメラのうちのひとつを持っていて、撮影しつつ、ディレクションしつつ、時折盛り上がって振り上げた腕がカメラに映っちゃったりする役割も果たしつつ、仕事しておられました。
あ、音の面でも、前回は歌とギターとハープだけだったけど、今回は通常のCaravanの弾き語りライブと同じく、ギターのループを使ったり、ボーカルにハモリを付けるエフェクターを活用したりしていた。あと、前回はアコースティック・ギター1本だったけど、今回はアコギとセミアコの2本を、持ち替えながらのライブだった。
セットリストは、本人曰く「今日はライブでよくやる曲を」ということで、以下のような具合でした。
1. Stay Home
2. Trippin’ Life
3. Wagon
4. Music Save My Life
5. The Passenger
6. アイトウレイ
7. Magic Night
8. モアイ
9. 夜明け前
10. Hello & Goodbye
11. サンティアゴの道
ラストの「サンティアゴの道」は、アンコールという体。で、全部終わったあとに、作ったばかりだという「Stay Home」のMVが流れた。
それから、中盤で「ちょっと換気しましょうか」と、木製のブラインドをめくって換気したり、「Stay Home」は無料ダウンロードでプレゼントする、もう落とせるようになっている、という告知をしたり。あと、中止を発表した、5月30・31日の渋谷さくらホールの日に、有料配信でライブを行う、予定どおりに1日目は堀江博久とふたりで、2日目はお客さんからの希望に応えて選曲する「オール・リクエストデイ」として行うことも、発表した。チケット代を入金する時にリクエスト曲を入れられる、というシステムだそうです。なるほど。どの曲にしようかな。
総じて、どの曲もすばらしいパフォーマンスだった。MCは、「サンティアゴの道」を歌う前に、「まあほんと、今しんどい時だけど、乗り越えましょうよ。そいで、必ず笑顔で再会しましょうよ。その時は、元通りの世界に戻るんじゃなくて、もっと違うフェイズの世界で再会しましょうよ」みたいなことを言っていて、その言葉が、いちばんグッときた。