ヒップホップを何も知らなかったJ太郎
最初、ヒップホップのことは本当に何も知らなかったんです。もうヒップホップっていう言葉も知らないくらいでした。ヒップアップとヒップアタックは知ってても(笑)。
ヒップホップがどういうものなのか、自分の中ではいまだにハッキリしてないんですが、ライフスタイルというか“イズム”のような、概念のようなものなんじゃないか? っていうことは分かってきました。そういう意味では、僕もヒップホップだなとは思います(笑)。フリーダムなイズムでは負けてないと思いますよ、自由を獲得するための商売なので。
まず宇多丸さんやダースレイダーからヒップホップをレクチャーしてもらったんですが、いちばん最初に戸惑ったのが“韻を踏む”っていう行為。とにかくこれが最初の大難関というか、僕には無理だな~っていう部分でしたね。
それで<9sari group>のライブに行きましたら、“バトル”を仕掛けてくる人がいるわけですよ。でも、こっちは参考書を読んで覚えたくらいの状態ですからね。それで、歌詞をブツブツ言いながら本番を待ってると仕掛けてくるわけですよ。「バトルやろうぜ」みたいな。
最初は僕、よく分からなくて、何を言ってるんだろうこの人? と思ってね。「誰ですかあなたは!?」みたいな(笑)。よく仕組みが分かっていなかったんですが、そのとき一緒に演ってくださった、ラテンラスカズさんっていうトラックメイカーの方がいたんですよ。で、「どうしたんですか?」って言うラスカズさんに「いや、さっきここで捕まってね。なんだかワケ分かんないんだけど……」って伝えたら、たぶんそれが“バトル”だったんでしょうね。ラスカズさんが「なんていうバカな奴がいるんだ……! 許すわけにはいかない!!」みたいなことになってしまって。でも僕はね、それもよく分からないんですよ(笑)。何から何までわからなかった。
“フリースタイル”っていうものにも何回かチャレンジしましたけど、僕には無理ですね。ダースレイダーなんかはそれがものすごく上手じゃないですか。でも、今の若い世代はもっと上手いって言うんでねえ……。
生まれたときにはその“リズム”があったからってことでしょうね。僕なんか、思いついたことをあのリズムに乗せるのが無理ですから、既にそこでかなりのハードルがある。今の人は、思ったことがすぐあのリズムに乗るんでしょうけど、僕らはやっぱり思いついた時点では“五七五”だったりしますからね(笑)。割と歌詞的には星野哲郎さん(作詞家。代表作は「黄色いさくらんぼ」「三百六十五歩のマーチ」など)みたいな感じになってるんでね(笑)。そこから韻を踏んで、さらにリズムに乗せるとなるとねえ……。
悪口はオープンに言えば言うほどケンカにならない!
杉作J太郎
男の墓場プロダクション局長、現代芸術マガジン編集長、東映チャンネル放送委員、映画「チョコレートデリンジャー」製作中!著書「ボンクラ映画魂完全版」発売中(徳間書店)