それはまず横に広がっていく物語だった。
わたしたち自身はライブ・バンドであると自負しておりますが、それでもこれまではやはり東京と大阪、それに主要都市しか行けてなかったんですよね。それが30周年のこの機会に47都道府県に行けたというのは、非常にいい時間でした。本当に悲願だったんですよ。全都道府県ツアーというのが。いろんな街があるので本当に全部、というわけにはいかなかったですけど今回初めて行けたところもありましたから、そういう意味でライブ・バンドという自分たちの気持ちと実際の行動が一致した1年だったと思います。
しかも、それはその物語自体が進んでいくほどに成長していくようなダイナミックな展開だった、と宮本浩次は語る。
じつはツアーのいちばん序盤のところでは完全に売り切れないところもあったりしたんですが、それがだんだんライブが重なっていって、CDも出したりして、すると人が集まる雰囲気がどんどん出来上がっていってツアー自体がどんどん成長していった感じがありますね。演奏する曲も、例えば『悲しみの果て』ひとつとってもいろんな場面があり、わたしが感極まってグッとくるシーンもあったし。メンバーそれぞれにもいろんな曲でいろんな場面があったりして、本当にダイナミックでわたしたち自身も生きている実感を強く感じたツアーでした。
昨年デビュー30周年を迎えたエレファントカシマシはバンドにとって初めての47都道府県すべてをまわるツアーを敢行。各地で数多くの名場面を生みだしながら、そしてさらなる支持を広げて大成功のうちにすべての日程を完遂した。
例えば、佐賀の鳥栖というところでやったんですね。初めての土地だったんですが非常にたくさんの人が集まってくれて。特にそこの地元の人たちが観にきてくれてるんだなという感じが伝わってくるんですよ。しかも初めて行く土地はやっぱり歓迎ムードがよりすごくて、ものすごい熱量でした。鹿児島も熱かったですね。70代くらいじゃないかな?我々よりも上の世代の方が最前列でノリノリになってて。本当に嬉しかったし、全県ツアーをやっているという実感と喜びがふつふつとわいてきた瞬間でした。
一方で、それは30年という時間を縦に掘り進んでいく物語でもあった。
30周年という大きな流れのなかで全都道府県ツアーができるという、そういう感慨も確かにありました。中学高校の同級生で始まったバンドがデビューから30年やってきてやっぱりコツコツと積み上げてきたものもありますから。それこそ21、22歳の頃、父親のジャケットを来て、渋谷公会堂で電気つけっ放しのコンサートというのをやりましたし、あるいは『今宵の月のように』がヒットして久しぶりにやった武道館。それから金原(千恵子)さんたちのストリングスと一緒に『リッスントゥザミュージック』をやった2009年の"桜の花舞い上がる武道館"とか、いろんなシーンを思い出します。そうしたいろんな変遷を経てきたバンドなんだという、そのストーリーを人生と重ねることもできると思いますし。そういうふうに考えていくといろいろ感慨深いライブがたくさんありますね。
その色鮮やかな横糸と縦糸を1年間かけて編み上げた物語は、3月17日と18日の両日、さいたまスーパーアリーナで大団円を迎える。
17日のほうはツアー・ファイナルという位置付けなので、基本的にはツアーでやってきた曲を中心に考えたいと思ってはいるんですが、でも同時に30周年の記念のコンサートという意味合いもあります。だからしっかりていねいに練習をして、本当にシンプルに1曲1曲、曲順も含めあらためて洗い直すと言いましょうか、気持ちを新たに練習し直して曲を整理して、ホーン・セクションと金原千恵子ストリングスのみなさんも入るんですが、でもそれも含めた非常にバンド感のあるあっさりとした形でできるといいなと思っています。18日は、エレファントカシマシの30周年というお祭りの締めくくりを、ファンの人たち共々、SpitzとMr.Childrenという日本を代表するバンドが一緒になって祝ってくれるという…。SpitzもMr.Childrenもつねに意識してきたバンドですし、スタイルは違えども、我々も含めてそれぞれに気骨のある日本を代表するバンドだと思います。"ド・ド・ドーンと集結!!〜夢の競演〜"というタイトル通りのスペシャルな1日になるんじゃないかと思っています。わたしも今からワクワクしています。
もちろん、その大団円は新たな物語の序章でもあるだろう。エレファントカシマシの未来に向けた予感をしっかりと感じ取りたい。
※DI:GA3月号掲載インタビューより
PRESENT
30th ANNIVERSARY チケット柄タオル(FINAL ver. )を3名様に!
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