昨年の秋から冬にかけて初の海外公演(上海、台湾、香港、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ)を含むライヴハウスツアー『SKY-HI Round A Ground 2017』を行ない、各地を熱く盛り上げたSKY-HIが、3月1日にホールツアー『SKY-HI TOUR 2018 -Marble the World-』をスタートさせた。初日の会場・大宮ソニックシティホール 大ホールは、彼のライヴを待ちわびていたFLYERS(SKY-HIのファンの愛称)によって大盛況。客席内に入った人々を出迎えたのは、『Radio Marble』という架空の放送局のラジオ番組だった。ふたりのパーソナリティがウィットに富んだトークを繰り広げつつ、ヒップホップやソウルのナンバーをプレイして、間もなくスタートするライヴに備えて会場の空気を温めていた。
ギター、ベース、ドラム、キーボード、DJ、ホーンセクション、コーラスによるバンド+4人のダンサーによって構成されているお馴染みの頼もしい仲間たち「THE SUPER FLYERS」が登場して、ついに迎えた開演。そして、“始めようか!”という声が響き渡って、ステージに現れたSKY-HI。会場全体から地鳴りのような凄まじい歓声が上がったところで1曲目「BIG PARADE」がスタートした。ホーンセクションとダンサーを率いてステージ上をパレードしながら歌い、華麗に踊るSKY-HIを夢中になって見つめていたFLYERSは、掲げた腕を激しく振って早くも大盛り上がり。いきなりライヴの佳境に到達したかのような感覚にもなる熱気に満ちたオープニングであった。
今回のツアーはオリジナルアルバムを引っ提げてのツアーではないため、さまざまな時期にリリースした作品から選曲したセットリストが用意されていた。お馴染みの曲に関しても、かなり新鮮なものとなっていた点を、まずは指摘しておきたい。絶妙なサウンドアレンジによる楽器演奏、華やかなコーラス、曲の世界を絶妙に浮き彫りにしているダンスパフォーマンスが一体となり、あまりインターバルを挟むことなく次々と曲が披露されていった様は、“まるでミュージカルのようであった”と言っても、決して大袈裟ではないと思う。ラップや歌だけでなく、ダンスも武器にして、SKY-HIならではの独自の表現スタイルを一層洗練させているのを感じた。彼は“ラッパー”だが、最早些末なカテゴライズを余裕の表情で超越している。このようなライヴは、他ではまず味わうことができないだろう。
エネルギッシュなダンスチューン、高速ラップ、胸にグッと迫るバラードなど、多彩なナンバーが次々と披露され、FLYERSは耳を傾けながら様々な感情を噛み締めている様子だった。そして、時折SKY-HIが発したメッセージも、客席にいたひとりひとりにとって忘れられないものになったのではないだろうか。“逃げることだって戦うことの選択肢のひとつだと思う。俺はお前のその選択を心から応援してやる。俺が生きてる証明は、音楽を受け止めてるお前らが作ってくれてる。お前が抱えてるつらさをひっくり返すことが、俺の生きる意味。命尽きるまでお前のために音楽を届ける。改めて言わせてくれ。君の生きる意味も価値も、この音楽で証明しよう!”と宣言してから歌い始めた「フリージア」が、とても感動的だった。
そして、絶妙なポイントで届けられた新曲が、大いに異彩を放っていた点にも触れておきたい。この日配信がスタートした新曲「One Night Boogie」の終盤に差し掛かったところで“寄り道させてもらっていいかな?”と言い、マイケル・ジャクソン、アース・ウインド & ファイアーなどの曲のショートバージョンや、自身の曲を歌った後、保留していた「One Night Boogie」の最後のサビに戻る…というスリリングな展開は、全てのFLYERSにとって予想外のものだったのではないだろうか。また、4月からスタートするテレビアニメ『ガンダムビルドダイバーズ』のオープニングテーマソングとして書き下ろされた「Diver's High」も、会場全体を力強いエネルギーで包んでいた。
今の彼にとってもっともリアルな表現を追求しているのがうかがわれたこのライヴは、“SKY-HI”というアーティストのこれまでの“足跡”、到達している“現在地点”、向かおうとしている“未来”を反映したものだったと言える気がする。そして、このような面を持ちつつも、代表曲の数々をばっちりと網羅していたことにより、初めて彼のライヴを観た人への最高の自己紹介になっていたのも特筆すべき点だ。このツアーは4月28日・京都府・ロームシアター京都メインホールまで続くが、各地に素晴らしい空間を生み出していくことになるだろう。