Shout it Out ワンマンライブ「GOODBYE MY TEENS」東京公演
2018年1月20日(土) LIQUIDROOM
TEXT:沖 さやこ
PHOTO:知衿
Shout it Out、間違いなく過渡期である。10代限定フェス「未確認フェスティバル」にて10代最後の年でグランプリを獲得し、フロントマンの山内彰馬が二十歳になる直前にメジャーデビュー。彼らの活動にはつねに“年齢”というものがついて回った。それは山内自身が活動初期から年齢に対するこだわりが強い人間であることが大きな理由だ。 彼は10代の時、大人へ憤りを感じていた。二十歳を迎える直前の彼は、その大人の仲間入りをしてしまうことに対する恐怖心を持っていた。だが二十歳を迎えたあとの彼は、10代の頃からは考えられないほど、自分から果敢に大人の世界へと飛び込もうとしていた。生活スタイルも変わった。聴く音楽も増えた。そのマインドが表れた言葉が、大阪はBIGCAT、東京はLIQUIDROOMで開催されたワンマンライブのタイトルでもある“GOODBYE MY TEENS”。2017年の夏に物販のグッズのデザインで山内が使用した言葉を、スタッフが面白がってライブタイトルにしたという。
山内は東京公演のMCで「自分の10代を成仏させに来た」と言っていた。まるで10代の頃の自分を悪霊呼ばわりだ。だがこの言葉、21歳の彼にとって、10代が脅威であるという意味合いも孕んでいるようにも思える。背負うものが多くなった21歳の彼は、「夢中に自分の夢だけをがむしゃらに追い求めてきた10代の無敵感」とどう戦うべきかもがいている最中なのではないだろうか。ステージに立ち、10代の頃作った歌を、沸々とした苛立ちを抱えながら鋭い眼光を持って唄う彼の姿を見て、そんなことを思う。
大人の年齢のわたしから言わせてもらえば、10代の自分も20代の自分も現在の自分の身体のなかで息をしているし、過去の自分はいまの自分がこの時代を生きていくうえで大きな糧となる存在である。わざわざ過去に別れを告げる必要はないと思う。だが21歳の山内にとって、10代に別れを告げる――いや、10代の自分に打ち勝つことが必要なのだろう。あの無敵だった頃の自分を、いま彼は超えねばならないのだ。 客入れBGMのくるりが流れているステージに、山内と細川千弘は、サポートメンバーとともにステージに現れた。「青」で幕を開けた序盤4曲、何かから逃走するような殺気立った緊張感のある演奏が会場を支配する。
MCで細川は2017年に100本以上ライブをしたこと、そのなかでバンドというものが大好きになったことなどを伝えた。そのあともアッパーな楽曲を立て続けに演奏。序盤のムードはまだ崩れないままだ。もやもやを抱えていると言うにはエネルギッシュで、攻撃的と言うにはウェット。ステージにはただただ、いつまでも若さに頼っていられないと生き急ぐ21歳の青年たちの姿だけがあった。
山内が19歳のときに音楽への覚悟の甘さを理由に母親から進路を反対され、真夜中にギターを持って逃げ出すように家を出て公園で作った「ギターと月と缶コーヒー」、高校時代の心の陰が綴られた「トワイライト」というミドルナンバー2曲で感傷を描く。「一から」から「そのまま」へのなだれ込みは中盤のクライマックス。特に「一から」はメンバーが二十歳になってからほとんどライブで演奏されたことがない。この曲のイントロのギターフレーズの華やかさはShout it Outのなかでも一、二を争うもの。10代のときよりも言葉が強く響くようになっていたところにも、楽曲の目覚めを感じさせた。もっとライブでレギュラー化させてもいいのではないだろうか。そのあとは切ない恋心をポップに唄った「エンドロール」、ヘイトをまき散らす「大人になれない」を立て続けに披露。7曲でもってディープでドラマチックなステージを作り上げた。
山内はギターを爪弾きながら2017年を振り返り、「全国各地でライブをしたり、それ以外にもいろんなことをしていたら、世に出せる曲が1曲しか作れなかった。気まずいったらありゃしない」と居心地が悪そうに笑う。そして昨年唯一制作した、映画『ちょっとまて野球部!』の主題歌「アフタースクール」を披露した。最後に「ひとつの武器も持たないまま、素手で行けるところまで行ってみようと思います」と言い「青春のすべて」で本編を締めくくる。最後の一音まで、ふたりは自分たち自身と戦っているようだった。
アンコールでは指定のグッズ購入者に与えられたセットリストリクエスト権により2位に選ばれた「これからのこと」と、「光の唄」を届ける。彼らはこの日、10代に別れを告げることはできたのだろうか。10代に別れを告げたあと、彼らに残るものはどんなものなのだろうか。その答えは春から初夏にかけて行われる全国ツアー『GOODBYE MY TEENS-延長戦-』で明らかになるだろう。だがやはり音楽家、特にソングライターは楽曲を生み出してこそ前に進むことができる生き物。そして楽曲は演奏を重ねることで“育つ”という特色を持っている。Shout it Outもそろそろ新しい我が子を育てる時期にきているだろう。試合はまだまだ終わっていない。彼らは延長戦でどんな大逆転劇を見せてくれるのだろうか。
■ SET LIST
01 青
02 青年の主張
03 17歳
04 道を行け
05 夜間飛行
06 逆光
07 列車
08 生きている
09 ギターと月と缶コーヒー
10 トワイライト
11 灯火
12 一から
13 そのまま
14 エンドロール
15 大人になれない
16 アフタースクール
17 風を待っている
18 青春のすべて
–ENCORE–
01 これからのこと
02 光の唄