──結成から11年。今作「名前を呼ぶよ」はメジャーデビュー一発目の作品となるわけですが。
PON(Vo&Gt/以下同) やっぱりメジャーデビューって憧れでしたからね。Mステ出たいですし(笑)。メジャーデビューしたから何がしたいとか、何が変わるっていうものではないんですけど、純粋にカッコイイなって(笑)。メジャーというシーンに行くと、なかなか自由に自分たちを表現するのが難しくなるって聞いたりするんですけど、自分たちがずっとライヴハウスでやり続けてきたライヴを変わらずにやり続けて、ブレずに音楽を作り続けていけば、いままでの自分たちでいられると思うので、そこはまったく心配してないですね。メジャーというシーンで、聴いてくれる人たちの層が増えていけば、チャンスも広がっていくんじゃないかなと思っているので、まったく不安もないし、今は本当に喜びと期待しかしてないです。
──メジャーデビューはどのタイミングで、どんなシュチュエーションで聞いたの?
事務所の担当の人が去年のクリスマスに大阪まで来てくれて、メジャーデビュー決まったよ!曲書いて!よろしくね!って、それだけ言い残して帰っていったんです(笑)。そこから10日後には3曲上げてました(笑)。めっちゃバタバタで死にそうでしたけどね(笑)。プリプロの2日前にアニメサイドの監督さんとの打ち合わせに東京に呼ばれて、そこで歌詞の方向性の確認があって。そのときに、自分が書きたいと思っていた方向を話したら、先方が思っていた方向性とピッタリだったんですよ!それはすごく嬉しかったです。タイアップとかがあると、やっぱり作品の色を優先しなくちゃいけないっていうのもあるから、なかなか難しいんですけど、自分が書きたいと思ったことをそのまま書けたことは本当に嬉しかった。
──そうだね。まったくラックライフの魅力は失われていないからね。それに、今回改めて思ったけど、ラックライフのサウンドは、さすがだなって思う。最初から最後までずっと変化し続けていくもんね。今回のシングルの3曲もそうだけど、1番と2番と同じフレーズの繰り返しが無い。すごく緻密というかね。カップリングの「ブレイバー」と「ストレンジマン」もすごくストイックな曲だもんね。「ストレンジマン」の間奏のリレーションとか、かなりアグレッシブだった。
お、嬉しいです!なんか自然とそうなっていくんです。ずっと聴いてても飽きないようにしたいなって思って。「ストレンジマン」の間奏も、“ここ、こうしてみる?”みたいな、軽いノリでみんなでやったんですよ(笑)。ホント、ノリなんです(笑)
──今シングルのリード曲「名前を呼ぶよ」は、TVアニメ『文豪ストレイドッグス』のエンディング主題歌でもあるけど、アニメのために書き下ろされた楽曲だったりするの?
原作を読んでから楽曲を作ってほしいって言われたので、まず原作を読ませてもらって、そこから自分と重なる部分を擦り合せて作っていったんです。メジャーデビュー一発目がバラード曲って珍しいと思うんやけど、いろいろと作ってみた中で、やっぱりこの曲でしょ! っていうメンバー全員の意見もあって、この曲になったんです。作り始めるきっかけを原作にもらって、あとはいつも通り自分たちらしく制作出来た感じでしたね。
──自分たちに重ねた部分というのは、どういうところだったの?
結成から10年、11年と、バンドをやり続けてきてしんどいと思ったことも正直あったけど、しんどいことがあった数だけ誰かが支えてくれてたと思うんです。お客さんはもちろん、バンド仲間とかライヴハウスの人たちとか。“ラックライフ好きやで”とか“また来いよ”って言ってくれてたライヴハウスの人たちの言葉って、本当に元気をくれたんですよね。メジャーデビューという自分たちにとって、1番大きな節目となるこのときに、お世話になってきた人たちのことを書いた曲でデビュー出来たっていうことが、本当に嬉しいことだなって思ったんですよね。ずっと書きたかったテーマでもあったんですけど、想いが強過ぎるからか、なかなか形にならなかったんです。でも、今回のタイアップの原作のおかげで、書きたいことをまとめることが出来たんですよね。すごくいいきっかけをもらえたなって思うんです。いままでも、“誰かのために何かをしたい”っていうメッセージとか、曲調的にもラックライフがずっと歌い続けてきたことだったりするんですけど、この原作が無かったら、“名前を呼ぶよ”っていうワードは出て来なかったと思うんですよね。このフレーズが出て来たのは原作のおかげやったと思うので、すごく感謝してますね。
──名前ってその人だけのものだもんね。名前を呼んでもらうって、すごく大切なことというか、すごく素敵なことだよね。
そう。安心しますよね。自分が存在する証拠というかね。そういうところを歌詞にしたかったんです。1人1人の名前を呼ぶことは出来ないけど、この曲を歌うことで、みんなが“1人じゃないんだな”って思ってくれたらいいなって。そう思える場所がライヴハウスであってくれたら嬉しいなって思ったんです。
──なるほどね。楽曲も楽器1つ1つの音が大切に紡がれていってる感じだった。優しい曲だけど、すごく強さを感じたりもしたしね。
そうですね、しっかりとメッセージが伝わるように意識しましたからね。
──カップリングの「ブレイバー」「ストレンジマン」は、どのタイミングに作られた楽曲たちだったの?
去年の夏くらいから、同時進行で何曲か作っていた曲の中の2曲で。今回メジャーのタイミングで「名前を呼ぶよ」を作ってから、この曲に合う曲をカップリング曲として選んだんです。表題曲がバラードだから、ライヴハウスで育って来た底力を見せつける意味でも、ちょっとストイックな曲を入れたかったんです。
──なるほどね。だからいつも以上にアグレッシブな曲の2曲なんだね。
そうですね。こんな一面もあるよ、みたいな。歌詞的には、「ブレイバー」は、なんか自分に対してイライラしてたときに書いた歌詞だったんです。“ずっと変わりたいとか思ってるのに、全然変わらへんな、俺”って。どうにかなりたいって思って、この歌詞を書いたんです。昔憧れてた勇者とかヒーローにはなれないけど、そこを目指して頑張ることが大事なんやなって。そんなことを書いた歌詞ですね。ほんまに、ちょっとでもええから、前に進もうとする気持ちが大事やなって。自分の背中を蹴るだけの歌詞ですね(笑)。「ストレンジマン」は、10年前くらいに、先輩のライヴ観てたときに、“死ぬって解っていても笑っていられるのは、人間だけだ”っていう哲学的なMCをしてたバンドが居たんですよ。その頃は、ふぅ〜ん、そうなのか。たしかに、そうかも。くらいにしか思ってなかったんですけど、ふと最近その言葉を10年ぶりくらいに思い出したときに、その言葉に対して想うことが、なんも変化してなかったんですよ。それを歌詞にしようと思って書いた1曲なんです。動物って、ただただ生きることに一生懸命だと思うけど、人間って、いろいろと矛盾の多い生き物だと思うんですよね。すごく悲しい出来事があった後でも、面白いと思ったら笑えちゃったり、なんかカッコ付けてみちゃったり。すごく不思議な生き物だなって思うんです。でも、それがどうしてか?って考えたところで答えなんて出るはずもなくて。そんなちょっと重たいテーマを、ポップな楽曲に乗せて歌ってみたかったんです。
──6月24日からは、「名前を呼ぶよ」ツアーが始まりますが。
はい。いままで支えてきてくれた人たちには、“何も変わらないラックライフ”を見せたいし、「名前を呼ぶよ」で出逢ってくれた人たちには、俺ら11年やってきたんで、“俺たちライヴハウスで育ってきたバンドなんです!これがラックライフです!”っていうとこを見せていけたらいいなと思ってますね。ライヴハウスっていうキラキラした場所の楽しさに気付いてもらえるような、そんなツアーに出来たらいいなと思っています。
インタビュー/武市尚子
■ラックライフ「名前を呼ぶよ」Music Video