インタビュー/武市尚子
撮影/横井明彦
撮影協力/Motion Blue YOKOHAMA
──6枚目となるフルアルバム『UИTITLƎD(アンタイトルド)』を10月4日にリリース、10月29日の沖縄公演を皮切りに11月3日から10日まで中国でツアー、11月15日から本格的に国内全国ツアーをスタートされているわけですが、ちょっと変わった流れですよね。
岸本 亮(Piano) そうなんですよ。今回の『UИTITLƎD』は、いつものアルバム制作よりも、すごく時間をかけて作ったアルバムでもあったんですね。前作のアルバムを作ったときと同じタイミングで制作した楽曲も中にあったりするんですよ。もちろん、今回のアルバムのリリースが決まってから作った曲もあるんですけどね。アルバムを作ることが中心になっていたということもあって、ぶっちゃけ、ライヴに向けてのリハーサルが追いついてなかったとこもあったんです。そんな感じの状態で中国ツアーに行き、新しいアルバムの曲を従来の曲の中に織り込んでセットリストを組んでライヴをしていったんです。
カワイヒデヒロ(Double Bass) そうそう。中国ツアーは7日間だったので、強制的に新曲たちが鍛えられるという状況になったんですよ(笑)
井上 司(Drums) 強制的に仕上がっていった感じというか(笑)
岸本 ライヴをやりながら、新曲の感覚がすごく掴めてきたというかね。
──それってすごく理想的ではありますよね。
岸本 そうなんですよ。
──それが海外からのスタートということで、また少し感覚が違ったんじゃないですか?
岸本 そうなんです。やっぱり日本みたいに頻繁に行ける場所ではないので、現地の人たちからするとすべてが新曲みたいなものだったと思うので、既存曲も新曲も同じ受け取り方をしてくれていたというのが、すごく大きかったのかなって思いますね。自分達的にも、“あ、新曲だ!”って構えて見られることがない分、気負わずに演奏できたというとこが、海外ツアーから始まった利点でもあったんじゃないかなと思います。
──いつものツアーとは、自分達にとっても曲の馴染み方が違ったのかもしれないですね。
カワイ それはあったと思いますね。たぶん、国内からだったら、だんだん徐々に仕上がっていく感じだったと思うんですけど、今は、なんかもう1本ツアーを終えてる感覚なんですよ(笑)。(※編集注:取材は11月15日のモーション・ブルー・ヨコハマのライブ前でした)
井上 そうなんだよね、中国ツアーで1つのツアーが終って、横浜から新たなツアーがスタートするような感覚なんです。
カワイ だから、今回の国内ツアーは結構仕上がった状態からのスタートになるんじゃないかなと。
──なるほど。今年は、1月にもフルアルバム『FRAGILE』をリリースされてますもんね。
岸本 そうなんです。1年にオリジナルアルバム2枚は2013年以来ですね。
井上 昔、1年にミニアルバム、カヴァーアルバム、フルアルバムという3枚を出したことがあったんですけど、1年にオリジナルアルバム2枚は初ですね。
カワイ 逆に去年は1枚も出してないんですよね。
──オリジナルフルアルバムを制作されるときは、コンセプトありきで始まる感じなんですか?
岸本 その時々によって違ったりはするんですけど、前作の『FRAGILE』とか、その前の4thアルバム『BUTTERFLY』は、コンセプトがしっかりとあった、いわゆるコンセプトアルバムでもあったんですね。どういうサウンドにするかとか、曲順でストーリーを作っていこうとか、すごくコンセプチュアルに作っていったアルバムだったんですけど、今回の『UИTITLƎD』は、逆に“コンセプトをはっきりと作らないことがコンセプト”みたいなアルバムだったんですよ。
カワイ それもあって、タイトルも『UИTITLƎD』なんです。
──なるほど、そういう意味でしたか!
岸本 そうなんですよ。コンセプトアルバムがあったからこそ辿り着けた今作、という感じでもありますね。
井上 時間の記録的な感じというか、時間の経過を感じる1枚になったのかなと思います。
岸本 1年かかりですからね。
カワイ 初めてだよね、1年かけてアルバム作るなんて。
──いつもはどれくらいのペースなんですか?
カワイ いつも2、3ヶ月なんですよ。
井上 コンセプトを決めてから2、3ヶ月。
カワイ そう。このアルバムを作るのに、こういう曲が必要だから、こういう曲とこういう曲を作ろう!って感じで進んでいきますからね。
──焦点が定まっているからこそ、そこに向かって作り上げていくのが早いんですね。
カワイ そうなんです。でも、今回の『UИTITLƎD』は、いつもとは逆でしたからね。
井上 『FRAGILE』を録ってたときに、同時に今回のアルバムに入った曲も何曲か録っていたんですよ。でも、その時点では『UИTITLƎD』を意識していたわけでもなく、ただ、いい曲なんだけど、『FRAGILE』には似合わない曲だよね、というので入らなかった曲を録りためていたって感じだったんです。
岸本 そう。気に入ってるけど、『FRAGILE』には似合わないねっていう曲たちだったからね。
井上 そしたら、そういう曲たちがすごくいっぱい集まっちゃって、アルバム出来るんじゃん?ってことになったんです(笑)
──振り幅も広いですもんね、今回。流れで聴くというよりは、1曲1曲が立っていて。
カワイ そうですね。一話完結的な感じだと思います。
岸本 「Cross View」「行雲流水」「繰り返される時空のワルツは千の夢を語り」「Theme from quartet」という前半の4曲が推し曲というか、前半にギュッと分かりやすい聴かせどころをもってきている感じですね。
カワイ 5曲目以降はたしかに、ちょっとマニアックな楽曲が多いかもですね。
井上 セッション性が高いというかね。
カワイ ちょっとライヴ向きじゃない曲かな?とも思っていたんですけど、これが、ライヴしてみたら案外ライヴ向きだったりしたんですよ、今回。それがちょっと意外な発見でもありましたね。それは中国ツアーでの発見でもありましたね。
劇伴・劇中音楽への反響
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