インタビュー/東條祥恵
レコーディングのときもライブを想定して歌う
──まずは新作『Little Trip』について聞かせて下さい。こちらはタイトル通り、旅をコンセプトに制作されたものなんですよね?
そうです。今作は旅をテーマにしたもので、1曲目の「Wonderful Catcher」はこれから旅に出るぞという曲で、そこから旅が始まって。アルバム1枚を通して旅をしていく流れが楽しめるものになってるんです。そして、最後の「約束train」は、このアルバムの旅はここで終わりだけど、これからまた新しい旅が始まるよというメッセージを込めた曲になっています。
──Rayさんの声って、こうしてお話ししているときは耳元にこしょこしょ届くような声なんですね。耳障りが心地いい(微笑)。
(あたふたしながら声が高くなり)うわー、ありがとうございます……どうしよう、恥ずかしい(激照)。そんなこと初めていわれたので嬉しいです。私の声はこうして1対1でお話しするときは大丈夫なんですけど、あまり通らない声なので、大人数がいるところでは全然届かないんですよ。居酒屋さんとかで(元気な声で)“すいませーん!”とかいっても、周りの声に見事にうまっちゃってお店の人にいつもシカトされるんです(笑)。だから、そういって頂けると嬉しいです。
──歌ってるときと普段では声の印象がちょっと違うんですね。
そうですね。元々声量があまりないので、歌うときはすごいスイッチ入れて歌ってるんですよ。レコーディングのときも私はライブを想定して歌うんですよ。そうしておかないと、ライブで再現できなくなっちゃうんで。今回のアルバムでいうと、「約束train」のAメロとかは一番地声に近い感じで歌ってますけど、そうやって語りかけて歌うところ以外は、頑張って声を張って出して歌ってますね。
アニメの一部に私もなりたいと思って歌います
──今作にもアニソンのタイアップ曲がたくさん収録されてますが。Rayさんはデビュー時からいろんな声色、歌い方を使い分けてアニソンを歌ってきてらっしゃいますけど。アニソンを歌うときに心がけていることって何かありますか?
作品のイメージをもっとも大事にするということです。例えば、アニメのオープニングテーマをやるとなると、その歌、その声からアニメがスタートする訳ですよ。こんなこというのはおこがましいんですが、主題歌はある意味そのアニメの“顔”になる部分だと思うんですね。だから、やるときはすごくプレッシャーもあります。私自身いちアニメファン、アニメおたくなので、オープニングの主題歌を聴いたらすぐにアニメが浮かんでくるような印象を持ってもらいたいと思ってるんですよ。だから、青春がキラキラしてるようなアニメだったらそのキラキラ感をどうやって声に出していこうかなとかすごく考えますし。ちょっとダークな物語だったら、普段あんまりダークな曲は歌わないんですけど、歌のここにこういうニュアンスをつけたら不安な気持ちが伝わるかなとか。そういうことを考えながら毎回やってますね。
──主題歌って、アニメ作品にとって一番密接な関わりを持つパートナーですもんね。
そうなんですよ!私がアニメオタクだから特に思うのかもしれないですけど。主題歌とアニメがバッチリあっているものだと、録画したアニメでもオープニングは飛ばさないんですよ。そこから全部見ちゃうんです。
──わかります。それ同感です!!
オープニングからアニメがスタートしてる感覚で見ちゃうんです。私が主題歌をやる場合はそういう存在になりたい。だから、アニメの一部に私もなりたいと思って歌いますね。そうなるために、原作があるものはゲーム、アニメ……ほぼ全部網羅します。オリジナルアニメの場合は、頂いたシナリオを必死に読み込んで。そうやって、その世界に出てくるヒロインの心境だったり物語の背景を分析して、そこにどうやったら寄り添えるだろうかというのを考えながら歌っていきます。例えば、原作がコミックだった場合は、まず全巻いっきに買って読みます。そして、次に歌詞を読む。そのあとにまた原作を読むというのを繰り返します。歌詞を書いて下さる方は原作に沿ったものを取り入れているので、そうやってその意図を自分で汲み上げていくという作業をしていくんですよ。それで最後に、さらに自分なりに解釈をして。私が主人公だったらこう思うなという部分を加えて歌っていくんです。
──歌うまでに凄い工程があるんですね。こういうやり方は自分であみだしたんすか?
そうですね。誰も教えてくれる人はいなかったので。
──そうやって、アニメ作品ごとにいろんな主人公に寄り添っていくとああいう歌が生まれてくる、と。
そうです。そこがアニソンは面白いんです。歌を通して、自分が実際に経験できない物語の主人公になれる訳ですから。ファンタジーだったりアクションの場合もあれば、すごく日常に近いものもあったりしますけど、そのほとんどは自分が実際には体験できなかった経験を描いたものが多いですからね。ここは役者さんとかにも共通するのかもしれないですけど、自分が体験したことがない別世界の主人公になれるというのは、すごく面白いです。
──アクションの主人公とか現実世界ではそうそう体験できないですからね。
そうなんです。だから、そこは自分の“妄想力”が試される感じですよ。でも、オタクは妄想は大得意なので(笑)
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