DI:GAに遺してくださったそんな宝物のような言葉を、取材をして下さったライターさんによる新たな寄稿と共にお届けします。黒沢健一さん、素敵な音楽を、ありがとうございました。
-ディスクガレージ DI:GA編集部-
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2002年4月(66号) インタビュー
ALBUM「B」・KUROSAWA KENICHI LIVE TOUR 2001「B-Me」
2002年11月(73号) インタビュー
SINGLE「PALE ALE」・LIVE TOUR 2001「SOUVENIR」
interview/伊藤博伸
黒沢健一ほど、音楽が大好きで、その大好きなことに心底から熱を注ぐ人に、僕は出逢ったことがない。
音楽の話をする時の、口元に薄い微笑みを浮かべながら、まっすぐ相手の目を見て話す姿を、今でも鮮明に思いだすことができる。
15年以上前にインタビューしたアーカイブ記事を読み返して、思いだしたことがある。当時、目黒川沿いのオフィスで取材を終えた後のことだ。何気なく僕がアコースティックギターの話を切り出した時、黒沢の瞳が一瞬輝きを増したように感じた。
それはハワイ島のローカルなギターショップで買いそこねたマーチンのアコギの話だった。
「そのモデルはD-25の試作品として作られた名品で、数本しか存在していない貴重なギターですよ!」から始まり、その後も絶え間なく言葉を発し続けた。そして僕が買いそこねたことを、まるで自分のことのように悔しがってくれた。ひとのことでも自分のことのように親身になって考える。黒沢は、そんな人だった。
たがいに共通した好きなアーティストや音楽の話で盛り上がり、気づけば取材時間より時が流れていた。懐かしい想い出である。今頃は、その時に僕らの隣で優しく見守っていた編集のHさんと、空の上で音楽の話に花を咲かせているかもしれないな。
今、アルバム『Banding Together in Dreams』を聴きながら、黒沢健一の存在を噛みしめている。最後の曲「Goodbye」で、〈季節が巡る頃 また何処かで出会うだろう〉と歌うように、現実の世で再び出会うことはできないが、黒沢が遺してくれた音楽を通して出逢うことはできる。
たくさんの素敵な音楽を遺してくれた黒沢健一に、音楽が大好きな人たちを代表して、感謝したい。
合掌
ライター・伊藤博伸