NEMOPHILA Apple of my eye Release Tour 2025
2025年2月9日(日)LIQUIDROOM
NEMOPHILAが5人編成から4人編成になりもうすぐ1年。「音圧が減っているのではないか」「パワーダウンしているのではないか」と思っている人も、現在開催中の全国ワンマンツアーを観たらそれが誤認識であることを全身で痛感するだろう。4人編成初のフルアルバム『Apple of my eye』を引っ提げて全国17箇所を回る「NEMOPHILA Apple of my eye Release Tour 2025」。その初日であるLIQUIDROOM ebisu公演はチケットも完売し、すし詰めのフロアとともに火力の高い熱演を巻き起こした。(※このレポートでは一部曲名と演出に触れています)
高揚感を煽るSEに乗せてむらたたむ(Dr)、ハラグチサン(Ba)、葉月(Gt)、mayu(Vo)の順にメンバーがステージに登場すると、冒頭からアルバムのオープニングを飾る「Just Do It!」をはじめとしたアルバム収録楽曲はもちろん、5人編成時代の楽曲も織り交ぜてハイテンションなステージを展開する。
パワーと正確さを併せ持つむらたたむのドラムは4人のサウンドの頼もしい土台であり、楽曲に説得力を持たす。葉月とハラグチサンは5人時代に立ち位置が隣同士でプレイをしてきたからこそのしなやかなコンビネーションを音でもステージングでも見せ、キュートでありながら硬派なアプローチで魅了した。葉月とハラグチサンがむらたたむのドラムの前でプレイし、フロアに向かって絶唱するmayuをさりげなく後ろから盛り立てるというフォーメーションも壮観だ。mayuも歌いながら時に優雅に腕を高く掲げ、時にパワフルに足を軽やかに振り上げるなど、一挙手一投足が鮮やかである。一人ひとりのプレイやキャラクターが際立てば際立つほど、“4人でひとつ”という結束が見えるのも面白い。4人でNEMOPHILAをいう花を咲かせるというよりは、一人ひとりの花が開いた状態が今のNEMOPHILAなのかもしれない。
5曲を披露し、mayuは満員の観客を目の前に「LIQUIDROOMは出てみたかったステージで、まさかソールドアウトするなんて!」と喜びをあらわにする。「うちらも元気もらってるんで、皆さんのことはわたしたちが爆音で元気にさせるので。今日は思う存分暴れてってください!」と、その後もアルバム曲と過去曲を織り交ぜて立て続けに演奏した。5人編成時の楽曲も4人編成用にアレンジを組み直しており、さらにはこれまで演奏してきたという経験もあるため、成熟さと新鮮さを併せ持っている。思えば『Apple of my eye』というアルバムも、これまでのNEMOPHILAが培ってきた“ポジティブなバキバキサウンド”という武器でもって、4人のキャラクターや感情を表現した体当たりの作品だ。すべてのNEMOPHILAの歴史が、4人をあのアルバムとこのツアーへと突き動かしているのだろう。
2023年のワンマンツアー「おしくらまんじゅう押されて笑おう」に向けて制作された「OSKR」ではフロアの躍動感とともに熱量を作り出し、NEMOPHILAを語るうえで欠かせない和を始めとしたオリエンタルな要素を含んだラウドロックナンバーたちもダイナミックに響き渡る。新作アルバムの問題作とも名高い「BRAINWASH」は鬼気迫る演奏とmayuのスクリームに息を呑んだ。曲によってはmayuがギターボーカルスタイルを取り、彼女が気持ちを込めてアルペジオを鳴らす様子も、ギターをかき鳴らしながら熱い歌を響かせる様子も胸に迫るものがあった。
mayuはこれまでアルバムを出すたびにどう受け取ってもらえるのか不安になっていたが、今作はまったくそういった緊張や不安はなかったと話す。「(今作は)助けてもらいながらとはいえ自分たちの出したい音も伝えたいメッセージも何もかも自分たちで作れたし、自分たちも納得いくものができたから“聴いてくれや!!”という思いのほうが強かった。そのアルバムのツアーの初日がソールドアウトして、いまこの景色が結果だったんだなと思っています」と自信に満ちた表情を浮かべると、フロアからは大きな歓声が沸いた。
ライブの終盤もさらにエネルギーを増すだけでなく、展開の多い楽曲で緩急を用いてドラマチックに彩る場面もあれば、葉月のギターソロをハラグチサンが低音で底上げしたり、センターのお立ち台に華麗に飛び乗ってギターソロを見せる葉月をmayuが巨大うちわで扇いで、美しく髪が靡く風を巻き起こすなど、五感を刺激するステージを繰り広げる。ラストのアウトロのブレイクやかき回しなどからも4人の阿吽の呼吸が伝わり、会場は熱烈な爽快感で満たされた。
mayuがメンバーを代表して「ソールドアウトのLIQUIDROOMのみちみち感はすごいですね。皆さんが(最新アルバムの)曲を熟知していることが伝わってきて、たくさん聴いてくださったんだなと本当にうれしいです! ここからツアーへと駆け抜けてまいりますので、皆さんまた遊びに来てください」と挨拶すると、大きな拍手が巻き起こる。その音に包まれながら4人は笑顔でステージを後にした。
この1年で、まさにアルバムの最後に収録されている「Good as hell quartet」というタイトルどおり「半端ない4人」に進化したNEMOPHILA。この全国ツアー中に新曲も過去曲もさらに育つことは間違いない。さらに5月6日には日比谷野外大音楽堂にて今までにNEMOPHILAが発表した全楽曲を1日で演奏する「やめられないとまらない、NEMOPHILA地獄の全曲ライブ」というとんでもないライブも決定している。進化の真っ最中である4人のすがすがしい爆音を、ぜひ全身で感じてほしい。