伊藤 蘭 〜Over the Moon〜 コンサートツアー 2024-2025
2025年1月25日(土) 東京ガーデンシアター(有明)
『伊藤 蘭〜Over the Moon〜コンサートツアー 2024-2025』のツアーファイナル公演が、1月25日(土)、東京・有明の東京ガーデンシアターで開催された。
昨年8月の大阪フェスティバルホールを皮切りに、名古屋、仙台、京都など全国9都市を回る今回のツアーは、2019年にソロデビューして以来、過去最大規模の公演となった。千秋楽を迎える会場には、5500人の観客が集まり、主役の登場を待ち侘びていた。
17時を少し過ぎたところで客電が落ちると、1曲目「ICE ON FIRE」のイントロに乗せ、ステージ中央より黒のライダースジャケットに身を包んだ伊藤 蘭が登場。ハードな楽曲にふさわしい衣装と力強いヴォーカルに、アリーナ客席は早くも総立ち。伊藤のイメージカラーである真っ赤なペンライトを振るファンの姿で会場が埋め尽くされた。続いてはソロでの人気曲「恋するリボルバー」、ペンライトを振りながらコーラスワークを行う渡部沙智子、高柳千野のアクティヴなパフォーマンスもすっかりお馴染みだ。さらに「なみだは媚薬」を歌い終え、最初のMCに。
「8月にスタートして今日がファイナル公演。こうして皆元気に会えて、同じ時間を過ごす貴重なひとときだと思いますので、どうぞ音楽に身をゆだねて心を解き放して、ツアータイトルのように月を超えるほどの楽しい時間にしましょう」
そう挨拶した後は、昨年5月29日に、東京・EXシアター六本木での『伊藤 蘭 Special Premium Live ~Don’t Stop The Music!~』公演で初お目見えした、キャンディーズのリアレンジ作品のコーナーに。ビート感を強め、美しいハイトーンヴォイスも魅力的に響く「アン・ドゥ・トロワ」、ハードロックテイストの「やさしい悪魔」と、昭和の時代に吉田拓郎が提供したナンバーが、令和の世に新たな形で蘇った。同じく拓郎作曲の「銀河系まで飛んで行け!」をオリジナルアレンジで。この曲も今回のツアーで46年ぶりに歌われることとなった。
ステージ上でシルバーに輝くワンピースに着替えた伊藤は、最新アルバム『LEVEL9.9』の中から、自身で手がけたユニークな歌詞とファンキーなダンスビートが融合した「FUNK不肖の息子」、売野雅勇の作詞で80年代のトレンディな都会風景を活写した「明日はもっといい日」、そして安部純の作曲による、シティポップ・サウンド「Shibuya Sta. Drivin' Night」と、まさしく今の伊藤 蘭の最新形を立て続けに聴かせてくれた。
今回の演奏陣は音楽監督の佐藤 準(Key)をはじめ、是永巧一(Gt)、笹井BJ克彦(Bass)、そうる透(Dr)、notch(Per)、竹野昌邦(Sax)、渡部沙智子(Cho)、高柳千野(Chorus)。6年目に入った伊藤のソロ活動を支える、すっかりお馴染みのメンバーだ。
そして最新シングル「風にのって〜Over the Moon」と「大人は泣かない」を歌い終えたところで「皆さん、大丈夫ですか? 後半に向けてエネルギーチャージしたく…ちょっとだけョ」とキュートな表情を見せ、ここで15分間の休憩に。この間、アリーナの観客はずっと立ちっぱなしで声援を送り、そのパワフルさとタフネスぶりにも驚かされる。
後半戦は、お馴染みのキャンディーズ応援歌「SUPER CANDIES」で幕を開け、ここからはお待ちかねのキャンディーズゾーン。赤いフリンジのワンピースに着替えた伊藤は、「その気にさせないで」「ハートのエースが出てこない」「年下の男の子」「春一番」など愛すべきキャンディーズの名曲群を、往年の振り付けで歌い踊る。その中でも今回のツアーのサプライズ曲が「わな」。78年の解散直前にリリースされ、メンバーのミキ(藤村美樹)がシングルA面で初めてセンターをとった曲だ。伊藤のソロコンサートでは初めて歌唱され、歌い終わると「ミキさんの面影を密かに重ねながら歌ってみました」と懐かしむ。リリース当時はかなりクールで大人っぽい曲調に思えたが、現在の伊藤の世界観には、実にしっくりくるナンバーだ。
もうひとつの目玉演出は、事前に告知されていた「哀愁のシンフォニー」での紙テープ投げの解禁。赤、青、黄色のカラフルな紙テープが、サビの部分に合わせ一斉にステージに投げ込まれた。前述のEXシアター六本木でも行われたが、天井が高く、半円形の広い東京ガーデンシアターに乱舞する紙テープは圧巻のスケールで、その凄まじい量とファンの熱気は、キャンディーズ時代の応援風景もこうだったのだろうな、と思わせるものがあった。伊藤も歌唱後に「美しい景色です」と率直な感想を述べ、ファンとの温かい交流を楽しんだ。ソロの音楽活動を始めてから6年目に入り、すでにキャンディーズの活動期間の4年半を超えてしまったことを回想し、「あの頃の色褪せない楽曲が、これからもより輝いて皆様に届けることができるよう、明日に繋いで行けたら」と決意を込めて、本編最後を「微笑がえし」で締め括った。
そして、最終日だけのさらなるサプライズはアンコールで訪れた。ターコイズブルーのドレスに着替えた伊藤は、まずソロ曲「美しき日々」を披露すると、会場に飛び交うペンライトの光も衣装に合わせブルーで埋め尽くされる。すぐさま対応するファンの呼吸の良さは、さすがとしか言いようがない。「これからも自然に、自由な感じで音楽に携わっていきたいと思います」と決意表明を述べた後、「プライベートでは家族の存在に支えられています。今日はその一人を」と、ステージに愛娘で女優の趣里を紹介。会場は驚きとともに割れんばかりの歓声と拍手で迎え、その反響に趣里も驚きの表情を見せ「すごい!すごい!」を連発。「初めての光景です」とファンの熱量に圧倒された模様だ。
伊藤は一旦、袖に下がり、ここで趣里がヒロインの福来スズ子を務めたNHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の劇中歌「買物ブギー」と「ラッパと娘」をソロで披露。2曲ともスズ子のモデルとなった笠置シヅ子のナンバーで、ドラマでも重要な意味を持つ楽曲。「ラッパと娘」では、トランペットの二宮孝裕が、楽曲の重要なパートであるソロ演奏もダイナミックに披露し、趣里の力強いヴォーカルに応えた。趣里が客前で本格的に歌うのは初めての経験だそうだが、それを微塵も感じさせない堂々たるパフォーマンスで、今度は逆に観客を圧倒する。
再びステージに戻った伊藤は「福来スズ子さん、再びでしたね。それから今の趣里も表現されていて」と感想を述べ「親バカですみません!」と照れながら笑う。家族仲の良さを感じさせるMCの後は、奥田民生とトータス松本が提供した「春になったら」を手を繋いで歌い、まさかの母娘デュエットが実現。天井からひらひらとウイングハートが舞い、新たなステージでのファンとの再会を約束して、暖かなムードでコンサートツアーのファイナルは幕を閉じた。
SET LIST
01. ICE ON FIRE
02. 恋するリボルバー
03. なみだは媚薬
04. アン・ドゥ・トロワ
05. やさしい悪魔
06. 銀河系まで飛んで行け!
07. FUNK不肖の息子
08. 明日はもっといい日
09. Shibuya Sta. Drivin' Night
10. 風にのって~Over the Moon
11. 大人は泣かない
12. SUPER CANDIES
13. 危い土曜日
14. その気にさせないで
15. わな
16. ハートのエースが出てこない
17. 年下の男の子
18. 暑中お見舞い申し上げます
19. 春一番
20. 哀愁のシンフォニー
21. 微笑がえし
ENCORE
22. 美しき日々
23. 買物ブギー
24. ラッパと娘
25. 春になったら