花譜 × 理芽、初の現地ツーマンライブ!コラボステージではYOASOBIの「アイドル」を披露、「ふたりだからこそできること」を詰め込んだDAY-1をレポート

ライブレポート | 2024.09.27 12:00

KAMITSUBAKI WARS 2024 神椿後楽園戦線 IN TOKYO DOME CITY HALL
花譜/理芽 『Singularity Live Vol.3』
2024年9月14日(土)TOKYO DOME CITY HALL

「KAMITSUBAKI WARS 2024」シリーズ第3弾となる「神椿後楽園戦線」。その2DAYSの初日に、KAMITSUBAKI STUDIO主催のツーマンライブシリーズ「Singularity Live」の第3弾が開催された。出演アーティストはKAMITSUBAKI STUDIO設立のきっかけとなった花譜と、KAMITSUBAKI STUDIOの発足とともに活動を開始した理芽。両者は花譜が本編のMCで「世界中の人の声を100パターンで分けるとしたら、最後まで同じ属性になると思う」と語っていたとおり、非常に親和性の高い声を持つ者同士である。幾度となくコラボレーションを重ねてきた両者による初のツーマンライブは、親交を深めてきた彼女たちならではのポップな世界観やエンターテインメント性に富んだ時間となった。

開演前、ソールドアウトした会場内には花譜と理芽による注意喚起アナウンスが流れる。真面目に原稿を読み進める花譜と、そこに陽気な合いの手を挟む理芽。最後は両者で「祭りだー! わっしょーい!」と声を揃える。その様子からもこのライブがシリアスというよりは笑顔の絶えない空間になることがうかがえた。

ファンタジックなオープニングムービーを経て、まずは理芽が単身ステージに現れる。自身のオリジナル曲を計6曲披露した。1曲目「おしえてかみさま」のイントロから「みんな待ってたぜ!」「最後まで盛り上がっていきましょう、ぶつけていけますか!?」など何度も観客へ話しかけていたかと思いきや、歌い始めるとふと空気を変えて楽曲の世界に没入させる。キュートで切ない彼女の歌声はたちまちグルーヴィーなバンド演奏に馴染み、ヘビーロックの要素を用いた「えろいむ」では理芽が音に合わせて身体を揺らすと、それに合わせて観客からは大きなコールが起こった。
「やっほー! 会いたかったぜ!」と持ち前の明るさを振りまき観客とコミュニケーションを取ると、「みんなも大好きなクセになる曲やっちゃいます!」と告げ、アンニュイでミステリアスな「さみしいひと」、時計の針のように腕を動かすなどの振り付けもギミックになった「チクタクボーイ」と続けざまに歌唱する。その後も「次はお馴染みのあの曲です! 一緒に歌おう!」と呼びかけてヒットソング「食虫植物」、「ピルグリム」と軽やかにつなげ、観客とともに躍動感のある音を愉しんだ。

理芽

理芽

続いての花譜のソロステージは、理芽と同様に自身のオリジナル曲を6曲披露する。まず「過去を喰らう」で気合いの入った力強い歌声を響かせ、「次の曲は久しぶりに歌います。みんな、この曲はなんだ!? せーの!」とタイトルコールを呼び掛けてダンスナンバー「私論理」へ。理芽同様に巧みなMCで観客を巻き込み、冒頭から高揚感のある歌唱を響かせる。
「Singularity Live」に初登場の花譜は「ふたりだからこそできることや、ふたりだからこそ未知数な部分もあって、知らないうちに思いもよらないところに行ってしまうんじゃないか?というワクワク感があります」「今日はお祭りなので、わたしも懐かしい曲を歌ったりしてみんなと楽しみたいです」と全身で喜びを表現する。そして2020年の無観客配信ライブ以来の歌唱となる「夜行バスにて」や、「イマジナリーフレンド」「この世界は美しい」と歌詞に込められたメッセージを真摯に届ける。最後の「ゲシュタルト」は、今年リリースでありながらも既にライブのキラーチューンとして急成長していた。花譜のキュートな面もクールな面もどちらもエネルギッシュに響くからこそ、観客も安心して歌と音に身を預けられるのだろう。

花譜

花譜

それぞれの熱演で会場があたたまったところで、花譜と理芽のコラボレーションステージへとなだれ込む。前半はカバー曲を中心としたラインナップで構成された。「不埒な喝采」ではふたりのハーモニーに加え映像とシンクロしたダンスを見せ、花譜とたなかのデュエット曲「飛翔するmeme」では歌割りを原曲と変えてパフォーマンス。理芽が高音の多い同曲を歌う新鮮さだけでなく、花譜がたなかのパートを歌う箇所も多く、さりげなく新たな輝きを取り入れるところにもKAMITSUBAKI STUDIOのクリエイティブに対する品格が垣間見られた。アウトロの台詞から間髪入れずに「打上花火」につなげると、予想だにしない選曲に客席からは驚喜の歓声が起きる。曲中でふたりが向かい合って歌う様子は非常に美しく、歌声と佇まいで楽曲に宿るセンチメンタリズムと透明感を瑞々しく描いた。

花譜

気心知れたふたりゆえにMCもアットホームな空気が流れる。ふたりが水を飲んだ後に観客へ水分補給を促すと、客席から「乾杯しよう」の声が上がった。するとふたりもすぐさま「いいね、乾杯しよう!」と同調し、会場全員で飲料を掲げ盛大に唱和する。観客とコミュニケーションを取りながら、予期せぬ展開をリラックスムードで楽しむ彼女たちの様子は非常に頼もしく、現地ライブを重ねるごとに着実にステージに立つ素養が鍛え上げられていることを痛感する場面だった。
「お次もブチアゲカバーゾーンになります!」と理芽が呼び掛けると、その言葉の通り盛り上がること必至のキラーチューン「フォニイ」「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」に、とどめとしてYOASOBIの「アイドル」を振りつきで披露するというまさしくお祭りなステージを展開する。これも花譜と理芽の「ふたりだからこそできること」。会場の熱気は高まるばかりだ。

そして花譜と理芽と言えばV.W.Pのメンバー同士であり、ふたりのオリジナル曲も存在する。両者が“八咫烏”に衣装チェンジすると、ふたりの初のオリジナル曲にあたる「まほう feat. 理芽」改め「魔法」、今年理芽×花譜としてリリックビデオが公開された「魔的」の2曲を立て続けに歌い上げると、V.W.Pの「飛翔」をツインボーカルで披露する。柔らかさのなかに強い意志が通った歌声は、親交が深いだけでなく声の相性がいいふたりだからこそ作り出せる繊細さとパワーを宿していた。
バンドメンバー紹介の後は、花譜と理芽のふたりの新曲「キャンディーゲリラ」を初披露する。毒気とポップさを併せ持つユーモラスでキャッチーなEDMテイストの楽曲で、キュート×デンジャラスなタイトルは言い得て妙だ。両者がお互いの呼吸を感じながらのびのびと歌う様子からも、あらためて信頼し合っている者同士であることが伝わってきた。

理芽

ラスト1曲を前に、花譜は「やっぱり理芽ちゃんの歌が好きだと思ったし、もっといっぱい一緒に歌いたい」とこの日の充実を語り、理芽も「歌っていくぞー! いっぱい歌お! これからもわたしたち、それぞれ仲良くやっていきますのであたたかく見守ってて」と観客にはにかむ。そして「ふたりで歌うのは超ひさびさ」と言い、ふたりが初共演で歌った楽曲「宣戦」でライブを締めくくった。
「宣戦」は2020年に開催された花譜の無観客配信ライブ「不可解(再)」で理芽とふたりの歌唱で披露され、時を経て2023年にV.W.Pの楽曲としてリリースされた。それを2024年にふたりが、ふたりで初の現地ライブでパフォーマンスするというのは、非常に意味深い。ふたりとも初披露の頃と今とでは歌い方も声の出し方も変わり、関係も深まった。それゆえこの日のボーカルは、ふたりの情熱がシンクロしながらまっすぐと突き抜ける、爽やかさと健やかさを纏っていた。

この日のライブから両者のアーティストとしての可能性を感じることはもちろん、「Singularity Live」シリーズで見せられるステージも今後さらに多彩になることを予感させた。ふたりだからこそできることは、一人ひとりが変化を遂げれば、ふたりの仲が深まれば、それまでとは違うものになる。花譜と理芽がこの日作り上げた空間は、このふたりならではの掛け算の魔法がなければ成し得なかった。

SET LIST

理芽
01. おしえてかみさま
02. えろいむ
03. さみしいひと
04. チクタクボーイ
05. 食虫植物
06. ピルグリム

花譜
07. 過去を喰らう
08. 私論理
09. 夜行バスにて
10. イマジナリーフレンド
11. この世界は美しい
12. ゲシュタルト

花譜×理芽
13. 不埒な喝采 (cover)
14. 飛翔するmeme
15. 打上花火 (cover)
16. フォニイ (cover)
17. トウキョウ・シャンディ・ランデヴ (cover)
18. アイドル (cover)
19. 魔法
20. 魔的
21. 飛翔 (cover)
22. キャンディーゲリラ ※新曲
23. 宣戦 (cover)

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