SADS 1999-2003「SAD ASIAN DEAD STAR」
2024年6月29日(土)Zepp Haneda(TOKYO)
清春(Vo)、坂下丈朋(Gt)、小林勝(Ba)、照井仁(Dr)
6月29日、東京・Zepp Haneda(TOKYO)にてロックレジェンド、清春(Vo)率いるSADSの轟音が鳴り響いた。<SADS 1999-2003>がテーマとして掲げられたこの日、ステージに立ったのは清春、坂下丈朋(Gt)、小林勝(Ba)という初期SADSの強靭な布陣。この顔ぶれが揃うのは実に20年ぶり。現在、清春はラテンやブルーズ的な匂いを漂わせながら、ベースとドラムを使用しないでグルーヴを生み出すサウンドプロダクションに挑戦した新作『ETERNAL』を引っ提げてデビュー30周年を記念したツアー【清春 2024 DEBUT 30TH ANNIVERSARY YEAR TOUR 天使ノ詩『NEVER END EXTRA』】を開催中だが、その中にキャリアを網羅するという意味で組み込まれたのが本公演だ。
二度とないプレミアムなライヴを目撃しようと全国各地から駆けつけたファンの歓声と熱気が充満する中、初期のオープニングSE「S、A、D、S……SADS!」という開幕を告げるカウントダウンから荒々しくも美しいロックンロールナンバー「TRIPPER」が叩きつけられれば、一気に狂乱していくフロア。空間を切り裂く清春の歌声も響き渡り、坂下もフロアへ身を乗り出すように前のめりでプレイし、いきなり事件級の盛り上がりを見せていく。坂下のギターリフで大歓声が上がった「LIAR」もバッチバチに攻めるスリリングな演奏が抜群。フロア前方はこれ以上ないほどの密集度となり、曲終わりにはどうだ、と言わんばかりに大きい背中を見せる清春。その頼もしい姿がたまらない。
絶妙なビート感を誇る「DISCOVER」、芳醇な色気にも酔いしれた「HONEY HONEY」と続いていくが、小林とサポートを務める照井仁(Dr)のリズム隊も鉄壁であり、久しぶりのリユニオンとは到底思えない音塊が放たれていく。牙を剥くように疾走する「CRISIS」、速射性のように歌とビートを突き刺す「Smash It Up」と惜しみなく名曲を投下。清春が「グッとくるコンサートを目指してます」とうそぶいた後、照井、小林、坂下が見事なソロ回しを見せたが、この第一期SADSは約20年ぶりだとしてもそれぞれはキャリアをしっかり積み重ねていたわけで、あの日の追体験で終わらせることはない、新たな衝撃を食らわせてくれるのだ。
清春がギターを抱え、じっくりと踏み込みながらグラマラスなムードで会場を揺らしたのが「ストロベリー」。がなるように歌う場面もあるが、決して粗野ではない。どこか美しく、神聖さすら感じるほどの歌声を響かせ、飄々としながら「やりすぎぐらいがカッコいい」という清春らしい名言を残してから、ライヴは後半戦へ突入していく。
そして、清春がアコギをかき鳴らしてフロアから悲鳴にも似た声が上がったのが「忘却の空」だった。坂下の彩り豊かで存在感のあるフレーズ、小林のうなるようなベースライン、的確で重厚な照井のドラミングが一体となり、そのど真ん中で観客を先導するように歌い上げる清春。とんでもなく大きなシンガロングと相まって、忘れられない名シーンとして焼き付いたはず。
そこから「アジト」、「LATE SHOW」と2nd ALBUMからのド迫力なナンバーを連投していく中で強烈だったのが「Feeling High & Satisfied」。もっともっとイケるだろとフロアへ活を入れるようなソリッドなロックナンバーであり、負けじと我を忘れて叫び続ける観客。会場全体が熱気と蒸気に満たされていき、天井知らずの盛り上がりとなっていったのだ。
終盤戦は観客も力の限り拳を突き上げ、清春のスクリームも轟いた「DARLIN'」をドロップし、汗を拭いながら「SADSって、当時からどこにも入れなかった、入らなかったバンドだったんじゃないかと思います。だけど復活してみると、こんなにたくさんの皆さんが来てくれて」と清春が過去を振り返りつつ、漂う名残惜しさを振り払うように「Liberation」と「STUCK LIFE」を投下。重戦車のように突き進みながら、観客と共にエネルギーを上昇させて本編を締めくくった。
ただ、二度とないプレミアムな夜をまだまだ味わいたい観客から大きなコールが湧き続け、呼び戻された清春は坂下、小林と共にアコースティック編成で「憂鬱という名の夢」、その流れから冒頭を弾き語り、一気にバンドサウンドへなだれ込む展開も秀逸だった「TOKYO」を披露。フロアを最高潮まで引っ張り上げて一旦ステージを去るが、再び呼び戻されて観客へ語りかける清春の言葉もまた印象的だった。
「みんなも好きなことを来年、再来年やればいいやと思ってるかもしれないけど、そうじゃない。必ず120%、人は死にますから」、「僕ら世代ほど美学を貫いてる世代はありません。若いヤツらにわかってたまるか、と自信を持って頑張って生きてください」と口にしていく。そうやって生きていく為に必要な、永遠のモノとしてその手に掴めるこの夜はきっと大きな力になるだろう。
その後は「Mr.『YA』」と「SANDY」を華々しく炸裂させ、まだまだ輝ける未来を約束し合うように「HAPPY」をプレイし、ラストは「CRACKER'S BABY」。清春の「突っ込め!」という号令に観客もすべてを使い果たすように叫び、飛び、感情を解放する。どこまでも美しい光景が広がっていた。
リユニオンにも様々な形があるが、少なくともこの夜は在りし日に想いを馳せるようなモノではなく、現在進行系で歩みを進めるアーティストが再び融合した2024年だからこその<SADS 1999-2003>だったことは間違いない。奇跡的でいつまでも抱きしめ、語り継ぎたくなる最高のパフォーマンスが今も胸を離れないのだ。
SET LIST
01. TRIPPER
02. LIAR
03. DISCOVER
04. HONEY HONEY
05. CRISIS
06. Smash It Up
07. Drum Solo
08. Bass Solo
09. Guitar Solo
10. ストロベリー
11. 忘却の空
12. アジト
13. LATE SHOW
14. Feeling High & Satisfied
15. DARLIN'
16. Liberation
17. STUCK LIFE
ENCORE
18. 憂鬱という名の夢
19. TOKYO
20. Mr.『YA』
21. SANDY
22. HAPPY
23. CRACKER'S BABY