これまで、彼らのインタビューを執筆してくださってきたライターの山本弘子さん、武市尚子さんから、彼らとの想い出を綴るメッセージをご寄稿頂きました!
ナイトメア活動休止最後のライヴが間近に迫ってきた。発表されたのは半年以上前のことだけれど、まだうまく実感ができないというのが正直なところだ。解散ではなく、20周年に向かうための一時的な休止なので未来に向かうための決断だが、それが1年後なのか3年後なのか期限が設けられていないこともあり、こうして書いているとナイトメアの不在はやはりポカンと穴があいたような気持ちになる。
一時期はメンバー全員揃っての取材を毎月のようにさせてもらっていたが、彼らとのインタビューはいつも本当に楽しかった。質問したことに対することの答えが活字になると思うと、かまえてしまいそうなものだが、いつ会ってもそんな様子は微塵もなく、まさにライヴと同じく、どんな答えが返ってくるかわからない。
YOMIは「今日は何を聞かれるんだろう」という眼差しでいつも取材に向き合っていたし、寡黙なことで有名なRUKAにしても質問を振ると意外にも愛犬のことまでざっくばらんに話してくれる。話がどこに転がっていくか予想できない展開はインタビューの醍醐味の1つだと思っているのだが、そういった意味でナイトメアの取材はつねに刺激的だったし、何度、爆笑させられたかわからないし、何度、癒されたかわからない。さまざまなタイプのバンドがいる中、全員がある意味、ナチュラルボーンのバンドマンであるナイトメアはヴィジュアルシーンの中でも特殊なのではないだろうか。
その喜怒哀楽が素直に反映されたのが彼らの音楽であり、毒づいている曲もあれば切ない曲は徹底的に切ない。全員が違う趣向性と美意識を持っていて、全員が歪つであることを自覚していて、その5人の形が合わさった時に生まれるものが多くの人たちを魅了してきた。まさにバンドらしいバンドだよなと、つくづく思う。そして、こうして振り返ってみるといい思い出しか浮かばないので、ファンの人たちはナイトメアの曲やライヴや発言にどれだけ励まされ、笑顔をもらい、ときには涙してきたのだろうと思うと、言葉にも詰まってしまう。
残念ながら彼らのライヴはしばらく見納めとなるが、あの5人のことだからいい意味で変わらないまま、またひょっこりと戻ってきてくれるだろう。休止という節目を迎えるに当たって伝えたい言葉はシンプルに「ありがとう」。それぞれがこれから歩いていく道に新しい風が吹き、新しい光が降り注ぐことを願っている。
(ライター・山本弘子)
正直なところ。彼らと最初に出逢ったときのことは、まったく覚えていない。印象が薄かったとか、興味がなかったとか、そういうことでは無く、それくらい昔のこと過ぎて、今からどれくらい遡ったらいいのか分からないほどなのである。
時期的には、まだ、彼らが地元仙台から上京してくる前であったことは確かだが、いつからか、気付けば“当たり前”の存在になっていたことから、すごく極端な話しだが、親がいつ親になったとか、親友といつから親友になったかとか、そんな感覚と似ていると言ってもいい。というか、それと同じくらい、いつからか私にとって、ナイトメアの存在は当たり前になっていたのだ。
最初に彼らをインタビューしたのは、今は亡き音楽雑誌だった気がするが。助手席がベッコベコに凹んだ機材車で、仙台東京間を行き来していた頃の話し。酷く凹んだ助手席の扉から出入りすることが出来ず、助手席に座っていたメンバーは、車の中で後部座席に移動し、後ろの扉から出入りしていたのがとても印象的すぎて、今も脳裏にハッキリと残っている。
彼らとは、いろんな媒体を通して幾度かインタビューをしてきたり、ファンクラブの会報の制作で深く接して来たのだが、いつも思うのは、しっかりと“ナイトメアのことだけが好きなコアファン”を持ったバンドであるということだ。
彼らは、ヴィジュアル系シーンの中で活動するバンドではあるが、“そのシーン好きなファンが、大きな括りの中でナイトメアの音も聴いている”という感覚ではなく、ちゃんと、ナイトメアというバンドの音楽性と、そこに落とし込まれたメッセージ性を深く理解し、“バンドとしてナイトメアを愛している”と感じ取れるのが、とても特徴的でもあると思う。私は、そんな、“バンドとして理想的な在り方”でシーンに名を馳せる彼らを、とても素晴しいバンドであると思っている。
がしかしーーー。
ステージから降りると、自らも公言しているように、本物の“SCUM”であること。
これも書かずにはいられない。
まず。YOMI。YOMIに至っては、本当に心細やかに周囲に気遣いの出来る、人間的に信用のおける奴ではあるのだが、ファンクラブ用に楽屋で写真を撮っていると、いきなりお尻を出すなどの、予測外の行動に出てみたり、柩は、しっかりと決められた仕事はこなすのだが、翌日のことを顧みず、ついつい楽しくなって朝まで深酒をし、近くに行くとほのかにアルコール臭が漂っていたり、咲人は、『ポケモンGO』にハマり、ラプラスを射止めるために、2日間お台場に張り込んでみたり、ライヴ当日の楽屋では、ひたすら寡黙にベースを練習したり筋トレをしたりしているNi~yaだが、プライベートな釣りの時間となると、“釣りバカ”っぷりを発揮し、釣った魚を綺麗に地面に並べて写真を撮ってみたり、RUKAは、ちょっとした待ち時間にも鯛が靴を履き(たいくつ)、その退屈に耐えられず、親しい人に人恋しそうにくっつき、くだらないイタズラを仕掛けたり、お触り攻撃に出たりと小学生レベルの“かまって光線”を放つ。主にその被害者はYOMIとNi~yaと決まっているのだが(笑)。と、とにかく、SCUM全開な5人なのである……。
そんなステージ上とは全く異なる人間味溢れる素顔も、彼らが愛される理由なのだろう。
今回の活動休止という選択は、ファンにとっては少し寂しい期間となるだろうが、きっと彼らなら、ここからの沈黙期間をプラスに変え、唯一無二な存在として、再び“ナイトメアファン”を唸らせるために、さらに成長した姿で戻って来てくれるに違いない。
今はただ、彼らが提示した選択を、更なる高見を目指す為の不可欠な時間であると信じ、再びステージの上に戻って来る日を、ファンと共に待っていたいと思う。
(ライター・武市尚子)