兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第110回[2022年7月前半・BUMP OF CHICKEN、THE ALEXXとBuffalo Daughter、フラワーカンパニーズ、くだらない1日と突然少年、演劇『室温〜夜の音楽〜』、ハンブレッダーズ、うつみようこ&YOKOLOCO BAND、の7本を観ました]編

コラム | 2022.07.25 18:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、基本的に生、たまに配信で観た、すべてのライブ(音楽が中心、時々演劇やスポーツ等もあり)のレポを月2回ペースで書く連載の110回目、2022年7月前半編です。今回は7本で、うち6本が音楽で1本が演劇。幕張メッセ以外の6本は、家から徒歩もしくは自転車で行ける範囲だったことが、こうして書いてみてわかりました。だからなんだと言われると困るが。

7月3日(日)18:00 BUMP OF CHICKEN@幕張メッセ国際展示場ホール9~11

 2022年2月10・11日の開催が、コロナの感染拡大状況を受けて延期になり、7月2・3日に行われた幕張メッセ2デイズの2日目。SPICEにレポを書きましたので、そちらをぜひ。
 ≫ SPICE:BUMP OF CHICKEN シンプルな演出と"近さ"で届けた2年8ヵ月ぶりライブ

7月6日(水)19:00 THE ALEXX、Buffalo Daughter@渋谷クラブクアトロ

 国内外で長年活動するDJ、SUGIURUMNこと杉浦英治が、DJになる前=1990年代に活動していたElectric Glass Balloon 以来、久々にバンドを結成し、2019年のフジロックのGAN-BAN SQUAREでの初ライブから活動をスタートしたのが、このTHE ALEXX。
 2022年から、渋谷クラブクアトロでイベント『BUZZER』を始めており、1回目は4月13日(水)にyahyelと行い、この7月6日(水)のBuffalo Daughterとの対バンが2回目。なお、3回目は9月12日(月)、水曜日のカンパネラと共演することが決まっている。
 で、この日。先にTHE ALEXX、後にBuffalo Daughterがライブをやったのだが、どちらも「ああっ、そうそう、この感じ!」と思わせてくれるステージだった。100%肯定的な意味で、自分にとっての「フジロックな音」なのだ。グリーン・ステージじゃなくて、ホワイト・ステージとか、レッド・マーキーの深夜とか、(もうないけど)ORANGE COURTの初日深夜とかの。
 Buffalo Daughterが自分にとってそういう音だ、というのは認識していたが、ライブを観たのが久々だったので鮮烈だった、その感じが。で、初めて観たTHE ALEXXもそうだった。ニュー・ウェイヴ感、ゴス感、テクノ感、インダストリアル感など、過去から現在までの自分が好きな音楽の要素がいっぱいあって。
 シンセ・バックトラック・ギター等の杉浦英治、ギタリストで曲によってはベースも弾く筒井朋哉 (Electric Glass Balloonのメンバーだった)、クリスタルボウルやテルミンも操る女性ボーカリストTontonの3人。これからも楽しみ。
 あと、両者がお互いの曲をカバーして、開催1ヵ月前にbandcampで配信リリース、もちろん当日も披露。という試みをやっているのもおもしろい、このイベント。

7月7日(木)19:30 フラワーカンパニーズ@下北沢シェルター/Streaming+

 おそらくシェルターからのオファーで実現したのであろう『フラカンの七夕ワンマンショウ』。配信もあり。フラカンが上京前から出演していた……そうだ、俺が初めてフラカンを観たのもここだ。今調べたら、1993年9月21日のことでした。
 というシェルターでのワンマンなので、懐かしめな曲・レアな曲が多め。グレートマエカワもMCで「シェルターっぽいセトリ」と言っていた。書いておきます。
 1小さな巨人 2脳内百景 3パンクはうまく踊れない 4フェイクでいこう 5 絶賛公開中 6燃えよフラワーカンパニーズ! 7ロックンロール・スターダスト 8DIE OR JUMP 9ピースフル 10マイ・スウィート・ソウル 11孤高の英雄 12いましか 13JUMP 14行ってきまーす 15NUDE CORE ROCK’N ROLL 16捨鉢野郎のお通りだ 17くるったバナナ 18Mr.LOVE DOG En.1夜空の太陽 En.2最高の夏
 余談。MCのたびに、鈴木圭介&グレートマエカワがいろいろグダグダしゃべった末に、ギター竹安堅一がそれをぶった切るようなひとことを言ってお客さん爆笑、曲に入る、というのを、この日3回くり返したが、アンコールの時だった3回目では、その竹安のひとことに鈴木圭介が逆襲しまくって、さらなる爆笑をとっていた。見直しました、何か。

7月8日(金)20:00 くだらない1日、突然少年@下北沢シェルター

 2日続けて下北沢シェルター。この日は、くだらない1日のツアー・ファイナルに、突然少年が呼ばれての2マン。先攻の突然少年、1ヵ月ほど前に名前を初恋から突然少年に戻したあたりから、パワーと勢いで押しまくるだけではなく、ミドル・テンポの曲でもはりつめたものを伝えてくる、「緩急」の「緩」も「急」もしっかり聴かせるバンドになって来ている。この日もそんなステージだったので、このあとのくだらない1日、やりづらいだろうなあ、と思ったが。
 こっちもまた、すごいライブだった。当方おっさんなので「イースタンユース」とか「bloodthirsty butchers」とか言いたくなってしまうが、とにかく、それくらいのすごいインパクト。暴力的な音と文学的な歌詞、突然耳を刺す強いメロディ、素朴にも見えるし危険極まりなくも見えるボーカル高値のキャラクター。それらにいちいち感情を持っていかれた。また観たい。

7月10日(日)13:00 『室温~夜の音楽~』@世田谷パブリックシアター

 ケラリーノ・サンドロヴィッチの2001年の舞台『室温〜夜の音楽〜』の、河原雅彦による「新演出版」。古川雄輝、平野綾、坪倉由幸(我が家)、浜野謙太、長井短、堀部圭亮、伊藤ヨタロウ、ジェントル久保田が出演。そして音楽は在日ファンクで、メンバー全員で、生演奏で芝居に音を当てる。東京の最終日であるこの公演を観た (このあと、兵庫公演=7月22〜24日西宮市・兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホールもあり)。
 初演を観ていなくて、どんな話なのかの詳細は知らないまま観たが、謎だらけな状態で始まり、物語が進んで登場人物それぞれの事情や背景がわかっていくにつれて、どんどん陰惨になり、最後はその陰惨さが頂点に達する、という、「さすがケラさん」というか、「なんてケラさんなんだ」というか、とにかくそんな、絶句するしかない舞台だった。でありながら笑えるのは、脚本もだけど、演出の河原雅彦の手腕も大きいのだろうと思う。
 在日ファンクの生劇伴もとてもよかったし、ジェントル久保田も役者のひとりだったし、あとハマケン! 役者ハマケンにここまで笑わされたの、初めてじゃないかと思う。「すっとんきょうすぎて笑える奴」の役、こんなにうまいとは。

7月10日(日)17:30 ハンブレッダーズ@LINE CUBE SHIBUYA

 6月25日(土)大阪府吹田市文化会館メイシアター大ホール(なぜ吹田なのかというとボーカル&ギタームツムロアキラの地元だから)と、このLINE CUBE SHIBUYAの東阪2本で行われた、初のホールでのワンマン『ハンブレッダーズ ワンマンライブ2022”ホール!ホール!ホール!”』の東京編。
 「BGMになるなよ」で始まり「ギター」で終わる全20曲。アンコールでは新曲「東京」も披露。頭からシッポまでハイライトだらけだったし、いい曲だらけだったし、グッとくる瞬間だらけ。10代と20代前半が中心で、マスク着用と発声禁止は守って、でも目をキラキラさせてステージに見入っているオーディエンスの姿も、とても良かった。
 ハンブレッダーズは、メジャーデビューとコロナ禍の始まりが、かぶってしまったバンドである。ファーストアルバム『ユースレスマシン』のリリースが2020年2月19日、そのリリース・ツアー全10本は3月20日からだったので、すべて延期。以降も、コロナ禍で悪戦苦闘しながら進んできたわけだが、その逆境の中にあって、うまく進めなかったり、進もうとすることをあきらめてしまったりするバンドも多かった中、なぜハンブレッダーズは、こうしてLINE CUBE SHIBUYAが超満員になるほど、支持を拡大してこれたのか。でかいタイアップとか、派手な地上波での露出とかが、あったわけじゃないのに。その理由がよくわかるステージだった。
 あと、ムツムロアキラ、今の世の中に対して、言うべきことは言う、歌うべきことは歌う、というスタンスの人である。というのはコロナ禍前からそうだが、今も、というか今、さらにそうであることを確認できるライブでもあった。信用できる、この人。

7月12日(火)19:30 うつみようこ&YOKOLOCO BAND@晴れたら空に豆まいて/Peatix

 真心ブラザーズのMB’S等のメンバーであり、そのMB’Sのベーシスト上野一郎等とバンドTASTE OF TIMEをやっているサックス・プレイヤー、首藤晃志が、2022年5月から代官山・晴れたら空に豆まいて(以下晴れ豆)の店長になった。なので、頼まれて、6月19日(日)に、晴れ豆でライブをやることになった──と、真心ブラザーズの桜井秀俊が言っていた。6月5日(日)の赤坂草月ホールのMCで。
というわけで、うつみようこ&YOKOLOCO BANDがこの日、晴れ豆でワンマンをやる、と知った時、「あ、首藤案件だ」と納得したのだった。うつみようこと奥野真哉、MB’Sのメンバーがふたりもいるわけだし。配信もあり。
 というわけで、なのかわからないが、ライブの前に首藤店長の前説&呼び込みあり。そして、アンコールではサックスで参加。そのアンコールも本編も、リラックスした空気だけど緩くはならない、終始楽しい時間だった。ようこさんはじめ、メンバーそれぞれが、あれだけ素でやっていて、あれだけ場がもつって、稀有だと思う、よく考えたら。
 あと、竹安堅一のギター・カッティング、ウィルコ・ジョンソン風味もしくはアベフトシ風味が、この日は高かった気がした。というのも、とても良かった。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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