LUNKHEAD ONEMAN TOUR 2016「アリアル」
2016年10月29日(土) CLUB LIZARD YOKOHAMA
TEXT:兵庫慎司
PHOTO:近藤みどり
LUNKHEAD、ニューアルバム『アリアル』のリリース・ツアー、全16本の8本目、折り返し点のライブで、場所は2017年3月31日で閉店することが決まっている横浜CLUB LIZARD。店が入っているビルが老朽化で取り壊しになること、移転も考えたが理想の場所もないため閉店を決めたことがオフィシャルツイッターで発表になり、多くのミュージシャンや関係者がショックを受けたのがこの3週間前。何度もここのステージに立ってきた小高芳太朗(Vo>)も、やはり、中盤のMCでそのことに触れた。以下、その言葉の要約。
LIZARDが来年でなくなってしまう。形あるものがなくなってしまうのはやっぱりさびしい。自分たちはこの場所で何回もすごい景色を見させてもらった。ライブで曲をやっていると、曲が自分たちを飛び超えていくことがある。曲をみんな(オーディエンス)に投げて、みんなが投げ返してくることで、自分たちもびっくりするような曲に育っていくことがある。それはライブを重ねるごとにだんだん育っていくのではなくて、ある日突然そうなるのだということを、経験で知っている。「この曲のここでみんな一斉に腕をふり挙げる」とかそういうことが、ある日を境に起きたりすることがある。そんな景色を、自分たちはここLIZARDで何回も見せてもらってきた。LIZARDでワンマンをやるのは今日が最後だが、形はなくなっても、今日ここで自分たちとみんなでライブを作ったという事実は残る。今日そういうライブをやろうと思ってここにやって来た。みんなで伝説に残る最高のライブを作ろう。すごい夜を作ろう。
本当に、その言葉どおりのライブだった。それが「伝説に残る」までだったかどうかはわからないが、終始「今ここで何かが起きている」空気に満ちている時間だった。
最初はおとなしめだったフロアの温度が、1曲ごとに目に見えて上がっていく。曲間のチューニングタイムになるとみんなシーンとして次の曲が始まるのを待っている。で、曲が始まるとまた熱狂する──ということをくり返すたびに、温度が高まっていく感じというか。パッと見てとれるような、炎がボーボー出ているみたいなわかりやすい熱狂ではない。でもじわああっ、むああっと熱いような、焼石から発される高温のような、遠赤外線のような……書いていて自分で「どんな状態だそれは」と言いたくなったが、でもそんな、一種異様な熱気を発している、フロア全体が。
思った以上に男が多い。それも若い男。僕が彼らのライブをもっとも頻繁に観ていたのはメジャーデビュー前後、下北沢あたりのライブハウスで、だったが、当時はほぼ全員が若い女の子だった。ここ最近はこういう感じなのかな、LUNKHEADのライブは、と思いながら観ていたら、ベースの合田悟のMCによると「今日、男の子多いね。ここまで全国回ってきて、男が増えたところがほとんど」だそうだ。そうなのか。なんでだろう。でもなんとなくわかる気がする、この場にいて、このバンドのエネルギーを浴びていると。
約2/3は『アリアル』収録曲(アルバム全曲プレイされた)、あとの約1/3は過去のアルバムからのライブ・アンセムで組まれたセットリスト。どちらの曲も温度差がない、ライブ全体でひとつの物語を、ひとりの人格を描いていくかのような歌と演奏。アンコールまで含めて全18曲、まさに駆け抜けるようなライブだった。
初めてLUNKHEADを観る人、久々に観る人、このツアーに何回も来てる人──今ここにいる人、ひとりでもかけたら今日はなかった、みんながいるからアルバムを作れてツアーがやれている、俺らだけではなんもできん、「存在し合う」という意味でアルバムに『アリアル』というタイトルを付けた──と、前半のMCでオーディエンスに感謝の意を告げた小高は、後半のMCで「腐りそうになった時、俺らを救ってくれるのはいつもみんなです」と再び感謝の言葉を述べながら、感極まって声を詰まらせていた。
このツアーのファイナルは12月9日(金)、東京・赤坂BLITZ。昨年9月の日比谷野音ワンマンに続くトライアル、と言っていいと思う。「BLITZ来てほしいな。このツアーで、この4人で初めて立つ唯一の場所やし」と小高。中盤の時点でこれほどまでにめったやたらと感動的なことになっているこのツアー、ファイナルで大会場だとどうなるのか。楽しみになった。