DISK GARAGE presents【CURTAIN CALL】
2022年5月17日(火)CLUB CITTA'
出演: ガガガSP、Muvidat、ぜんぶ君のせいだ。、NEMOPHILA 【O.A】ヴァジリアントマト
DISK GARAGEが主催するライブイベント「DISK GARAGE presents【CURTAIN CALL】」が、2022年5月17日に川崎CLUB CITTA’で行われた。同イベントの開催は昨年9月のduo MUSIC EXCHANGE公演に続き二度目。前回のラインナップに引き続き、ジャンルにとらわれない個性豊かな面々が揃った。
オープニングアクトとして登場したのは、コドモメンタルINC.に所属が決まったばかりのメタリックタフネスコミックバンド・ヴァジリアントマト。コント風味のMCを挟みながらなめらかに曲をつないでいく。ワタル(Vo)は観客から目を離さず歌い続け、楽器隊も持ちうる技量を余すことなく発揮していった。楽曲やパフォーマンスの根幹にあるのは、ただただ観客にしっかり向き合う真摯な姿勢だ。おそらくまだCLUB CITTA’規模の会場の出演は少ないはずだが、それでも初見の観客をあれだけ楽しませることができたのは、これまでライブハウスで着実に活動を積み重ねてきたからに他ならない。ライブ終了後に彼らをあたたかく送り出すフロアの拍手が、それを物語っていた。
本編トップバッターは、UquiとMAH を中心としたニュープロジェクト・Muvidat。サックスを含む6人体制で登場し、SHAKALABBITSの楽曲3曲を含む全8曲を披露した。
楽器隊のインスト演奏のなかUquiが颯爽とステージ中央に現れると、「トーキョーメイズ」でライブをスタートさせる。5人の演奏は華やかで安定感があるだけでなく、何よりも非常に立体的。6人の音と歌でMuvidatという宮殿が出来ていくような感覚すらおぼえた。
ADD(Sax)は担当楽器はもちろんパーカッションやコーラスで細やかな色付けをし、ダンスをしたりステージ上を走り回るなど、視覚聴覚ともにムードメーカーとして立ち振る舞う。「Fog Lights」での女性陣3人のコーラスワークも美しかった。UquiがMCで発した“今は6人組で活動しています”という言葉のとおり、一音一音から6人で音を出せる充実感や喜びが伝わってくる。ラストの「都会の猫たち」まで、ナチュラルな笑顔の溢れるステージ。観客を軽やかに包み込んでいく6人の姿は、非常に頼もしかった。
続いては4月に新体制になったばかりで、対バンツアー真っ最中であるぜんぶ君のせいだ。。バンドセットで登場した6人は1曲目「Cult Scream」から情熱的な空間を作り出す。「WORLD END CRISIS」では観客とアイコンタクトを交わし、クラップを促すなどコミュニケーションを取りつつも、中盤からは狂暴なシャウトでひりひりとした空気を構築した。楽曲の世界観をステージに立ち上らせることに力を注ぎながらも、目の前の観客と向き合うことを忘れない。その隙のないステージに目を見張るばかりだ。バンドメンバー3人も、彼女たちを演奏とパフォーマンスでしっかりとバックアップしていく。
2曲終えて全員で“病みかわいいで世界征服! ぜんぶ君のせいだ。です”と声を合わせて挨拶をすると、ラストまでノンストップで畳みかける。彼女たちのタフなステージに感化された観客たちも、クラップや仕草で思いを伝えていった。「Greedy Survive」や「みすふぃっとらゔぁーず」などキュートかつパワフルなアッパーチューンを経て、キラーチューン「唯君論.」でフィニッシュ。テンションを切らすことなく30分を駆け抜けた。
トリ前は“地獄のゆるふわバンド”を標榜するNEMOPHILA。mayu(Vo)のスクリームが炸裂する「REVIVE」で幕を開けると、ハラグチサン(Ba)のベースソロから「Rollin‘ Rollin’」になだれ込む。アグレッシブなサウンドとボーカルを繰り出す5人だが、伝わってくるのは一貫してポジティブな空気。メンバー全員がお互いの音を楽しんでいる様子は非常に微笑ましい。ダンス経験の生きた身のこなしで魅せたmayuの華のあるパフォーマンスは、このバンドで音楽ができる喜びを全身で表現しているように見えた。
ボーカルに焦点の当たるエモーショナルな「Life」では、身体を振り絞るように歌うmayuの姿と、彼女をしっかりと支える楽器隊の包容力が眩しい。リリースしたばかりの最新曲「A Ray Of Light」では地響きのようなバンドサウンドとスクリームを轟かせ、ラストの「OIRAN」では5人全員でヘドバンをするイントロや、葉月(Gt)とハラグチサンが手遊び“アルプス一万尺”に興じる。メタルバンドとしての強度だけでなく、エンターテインメント性の高いパフォーマンスで観客を高揚させた。
トリを務めるのは今年結成25周年のガガガSP。“NEMOPHILA終わったらみんな帰ると思いましたわ”と笑わせながらも、自分たちのライブを観る選択をした観客への敬意を1曲目「線香花火」に込める。コザック前田(Vo)は軽やかな身のこなしで観客に歌い、観客もシンガロングの代わりに力強く拳を掲げ、前田の歌に思いを重ねていた。
フロアに成人が多いことに触れ、コロナ禍の平日の夜にライブを観に来る一人ひとりの背景に思いを馳せた前田は“よく来てくれた”と強い眼差しを向ける。その後に披露された「これでいいのだ」では、勢い任せではない醸し出される気迫を放っていた。これを洗練というのだろう。音と言葉の一つひとつが、ふと忘れかけてしまっていた大事なものを呼び起こしてくれるようだった。
紆余曲折のある25年間のバンド人生のなかで育まれたガガガSPの青春パンクは、雄大にたたずむ山のように、地に足のついた音楽へと進化していた。前田のMCも“本気で聴いてくれているのが目でわかる。それは(最前の人とタッチをしたり、頭を撫でるなど)触っているのと同じ空間が成り立っているということだと思う”など、観客へのリスペクトを伝えるシーンが多い。ラストの「晩秋」まで、深い想像力から生まれる優しさと、自分の生きる道を見つけた人間の矜持に圧倒された。
そんな熱いステージに、観客もすかさずアンコール。再びステージに戻った4人は「青春時代」を披露する。冒頭で前田が語った“あなたたちが大人の本気を見せてくれている。僕らもそれを返します”という言葉を、見事に体現した歌と演奏だった。
歌い切った前田は、最後に笑顔でピースサインを掲げた。あの姿は、このイベントのシンボルだったように思う。この日集まった5組はまったく違うシーンで活動しているが、それぞれの確固たる音楽やスタイルを持ち、コロナ禍で一つひとつのライブとしっかり向き合い、ライブや音楽の楽しみ方を探求し続けてきたという共通点がある。CURTAIN CALLはそんなアーティストたちのポリシーがクリアに表れた、非常に健全な空間だった。
SET LIST
ヴァジリアントマト
1. 正論DEATH
2. Jobの時にひとり
3. WELCOME TO MY HELL
4. トントン肩トントン
5. マイルドスピード
6. thumb war
Muvidat
1. トーキョーメイズ
2. ダズリングスープ(from SHAKALABBITS)
3. SMILINFWIIIIIIIIIGOTMUZIK
4. Fog Lights
5. WIRE
6. That thing you do! (from SHAKALABBITS)
7. Pivot(from SHAKALABBITS)
8. 都会の猫たち
ぜんぶ君のせいだ。
1. Cult Scream
2. WORLD END CRISIS
3. Greedy Survive
4. みすふぃっとらゔぁーず
5. オルタナティブメランコリー
6. 僕喰賜君ノ全ヲ
7. 唯君論.
NEMOPHILA
1. REVIVE
2. Rollin’Rollin’
3. Change the world
4. Life
5. A Ray Of Light
6. 雷霆 -RAITEI-
7. OIRAN
ガガガSP
1. 線香花火
2. これでいいのだ
3. oiの中の蛙
4. ロックンロール
5. つなひき帝国
6. 晩秋
ENCORE
1. 青春時代